第百七十三話 バイス登場
「メタめた」に戻ると
司教軍団が来ていた。
「なんだ、定例報告会の開催場所が
うちに変更されたんじゃないだろうな。」
しかしこれは丁度良い。
魔導院にクリシアのスパイが
潜り込んでいた。
国としての対応方針を聞いておくことが出来る。
グレアは緊張しまくりだったようで
俺を見てホッとしていた。
迎えに出て来たグレアから
一通りの説明を受け
リビングに一緒に向かう。
「なんでしょうね。打合せの
予定は無いハズでしたが・・・。」
ストレガは不審に思っているようだが
出発が明後日だそろそろ打合せした方が
良いだろう。
リビングには4名の司教が待っていた。
ユークリッド、ハンス、パウルと
もう一人若い男子だ。
「お待たせ。なんだ団体さんだな」
ブリッペはキッチンのようだ。
すでに幾つもの皿が空になっていた。
ミカリンその他がもてなしをしていて
くれたようだ。
司教共の顔がすっかり砕けている。
みんな美形だしな
ホステスの才能があるかもしれない。
このカタブツ達がこの有様だ。
金もうけを最優先させるなら
金物屋より、ぼったくりバーだ。
絶対、儲かる確信した。
野性的な魅力とギャップの幼さの残る顔のアルコ
神秘的な雰囲気を醸しだす暗黒の顔面ミカリン
先生やめて、とまらないよブリッペ
魔族の女を知ってしまったらもう戻れないわよグレア
やべー
生きて帰れる気がしねー
ミイラになるまで絞られそうだ。
でも、そんな最後もありかと思わせる禁断の楽園だ。
「すいません。突然押しかけちゃって」
話しかけられて妄想から正気に戻った。
見ればハンスとパウルは
既に酔っている。
しらふのユークリッドがまっさきに
挨拶をしてきた。
「ユーさんは飲まないのか」
「はい。嗜みませんねぇ」
そう言えば魔族の宴の時も
飲んでいなかったな。
「そこの若者は?」
人状態、こんなチンチクリンが
どうみても年上の相手に若者呼ばわり
しかし、若者は不機嫌になるどころか
緊張が走った様子だ。
俺がどういう存在なのか
織り込み済みなのだろう。
「紹介しましょう。彼が・。」
「あ、あユー私から!」
赤ら顔でソファから立ち上がるパウル。
ヨロヨロとよろけるパウルを
素早く若者が支えた。
「危ないよ父さん。珍しく飲むから」
父さんだと
パウルが上機嫌で若者を紹介した。
バイス・ヒルテン 司教 22歳
彼が今回の調査に同行する教会の人員に選ばれた。
なんとパウルの実の息子だそうだ。
「あのお方にお仕え出来るなど
もう嬉しいやら羨ましいやら
私だって同行した事ないのに」
そういえばパウルと組んだ事ないな。
喜びと嫉妬が酒のペースを加速させ
既にパウルはベロンベロンだ。
「「不束者ですが、どうかよろしくお願いいたします」」
親子で揃ってそう言った。
息もピッタリだ。
知的な雰囲気を漂わせる辺りは
親父譲りだがパウルより
大分柔和な顔つきのイケメンだ。
母親の方に似たのかな。
挨拶を終えると各自席に着き
俺の方から口火を切った。
「丁度良い、行く手間が省けた。」
俺は魔導院に潜り込んでいたスパイ
アリアの顛末を話した。
司教軍団は特に驚いた様子は見られない。
ベロンベロンパウルが機嫌良く答えた。
「アモンさん。毎回銀貨は多すぎですよー」
「ああ、父さんそれは言っちゃいけない」
成程、あの乳製品会社の馬車だけ
荷物検査の無い理由が
酔ったパウルのお陰で今分かった。
「驚いていないトコロを見ると
泳がせていたのか。」
「いえいえ、驚いていますよぉ」
ユークリッドは全然余裕でそう言った。
ストレガの方がビックリしている。
これはストレガに内緒でスパイを
監視していたな。
下手をすると建設時から
誘導していたかもしれない。
キタネーこいつら
ストレガが教会を裏切らないか
他国のスパイを利用していたな。
俺はそう納得した。
ユークリッドのすました笑顔は
白を切り通しますよぉという
強い意志を感じた。
まぁいいか
問題は別だ。
「バルバリスとして対応はどうする。
こっちはそれに合わせるぞ。」
「確実にクリシアと繋がっている
証拠は出てきませんからねぇ
言っても下っ端マフィアを
差し出して来るぐらいでしょう。」
この言い方だと複数のスパイの
命令系統まで把握してそうだな
これは・・・
ヤバイ情報を掴んだスパイは
個別に消されているな。
暗殺者
ソフィを思い出す。
彼女の方がアリアより数段上だ。
今回、どこに配置されているのか知らないが
教会の情報操作に14年間暗躍し続けている。
そんな想像をした。
アリアは洩らずべくして洩らされた情報を掴んだのか
それとも俺が夜間飛行したせいで
その先で待っていた暗殺者がポカーンってなったのか
これは聞いておこう。
「もしかしてアリアを暗殺する予定だったか。」
「アモンさん、知らないスパイの
暗殺計画なんて立てられませんよ。」
笑顔のままのユークリッド。
うーん
これどっちだ。
逃がして不味ったのか
正解だったのか
俺の疑問には、またしても
ベロンベロンパウルが答えてくれた。
「あのお方の判断こそ最終決定なのれす」
「父さん。もう帰ろうか」
俺が一緒だったせいで生存ルート確定か
アリアは自ら強運を引き込んだ事になるな。
普通なら、あそこで実験体を救出なんて
スパイ失格だ。
人としては大合格だけどな。
でも、それが幸運に繋がったのなら
良かったと思う。
良い人は良い目に遭って欲しい。
「お願い出来ますかねぇバイス」
お
ユークリッドの口の端がヒクヒク動いてる。
おこなの
もしかして、オコなの
送ってまたすぐ戻るとバイス告げ
バイスはパウルに肩を貸しながら
退出していった。
程なくして、外で馬車が動く音がした。
これから教会の情報が欲しい時は
パウルをベロンベロンにしよう。
俺はそう決めた。
「じゃ取り合えずクリシア側には
特に脅しも探りもいれなくていいか。」
「それでお願いします。」
うん。
これで懸念は一つ晴れたな。
ここでハンスが無口なのが気に掛かった。
こいつの酒癖が一番最悪だったからな。
大人しく飲んでいるという事は
まだこちらの世界の住人なのかな
パウルの後を追わない内に
渡しておくかな。
「そうだ。ハンス君」
「・・・はい。」
「ホレ、ミスリルだ。スクロールの生産よろしく」
俺はストレージから粉末状にした
ミスリルを詰めた大袋を取り出し
ハンスの横にドサッと置いた。
「・・・。」
袋を開け、中身を確認するハンス。
後の材料は入手出来るハズだ。
何か言えよと思っていたが
俺に振り返ったハンスは
大泣きだった。
「ぶあああああああああ
すいませんすいませんいつも
いっつもアモンさんにばっかり
頼ってしまってあああああ」
バイスー戻ってコイツも回収してくれ。




