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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第百七十話 暗闇に潜む鬼

アリアはクリシアに戻ると言っていた

丁度良い、どうせ行く予定だ。

前情報を取れるだけ取っておこう。

俺は話題を変えた。


「クリシアってバルバリスと同盟国じゃ・・・。」


「同盟じゃないわ。友好国よ」


すいません。

大事ですよねソコ。


「友好って友達って事じゃ」


「喧嘩して絶対に勝てない相手がいる。

私はあなたの敵だーって言うより

友達になりましょうって言って

勝てる様になるまで力を貯めるのよ。」


賢いな。

ついでに弱みとかも調べとけって

ああ、それ今やってるんですよね。


俺の沈黙を勘違いしたのか

アリサは視線を外し話を続けた。


「軽蔑する?でもこれが現実なの

矛盾だよね。平和を願うのに

武力を集めるなんて・・・。

武器なんてなければ戦争だって」


俺はアリアの話を遮って言った。


「あ、起きますよ。」


これは黙っておけん

金属に罪は無い。


「刃物に意志はありません。

刃物が殺すのでは無く

殺す意志を持った者が刃物を取るのです。」


「でも、始めから無ければ」


まだ分からんのか


「起きますよ。殺す奴は刃物が無ければ

その辺の大き目の石でも使って殺しに来ます。

人を殺すのは人です。手に入る道具で行います。」


俺の様子が変わった事に戸惑っている感じだ。

まぁいいか

ついでに言ってしまえ


「それに平和の為に武力を持つのは

一見、矛盾しているように思えますが

実際は逆です。

一方的な強者は相手の意志を汲みませんし

一方的な弱者は本音を言えません。

相手を怒らせない事に尽力し

自分を殺して相手のご機嫌を窺う様になります。

そうなると強者の方も信頼を無くすんです。

こいつ俺に本音を言わないって、

何か隠してやがる。一体何を企んでいやがるんだって」


俺もユーさんの本音

聞いて見たいな。


「相手が脅威となり得る力を持った時

初めて強者は剣を下ろして話合おうって言うんです。

武力が一方的な状況で誤解無く分かり合えるのは

理想ではありますが、現実、今の人類には無理です。」


なんかアリアが驚愕の表情になっていた。

やべ

ドン引きか


「なんて、世の中を知らないガキが

すいません。祖父の受け売りです。」


俺は頭を下げ

すぐに茶に口を付けた。


「なんか、胸の奥のつっかえたモノが

取れた様な気がするわ。その

おじい様にありがとう。」


俺にありがとうは無いのね。


「ただ魔導院・・・ここだけは

絶対に信頼してはダメ。」


「はい。教会と繋がっているのは分かりました。」


「・・・それだけじゃないの。」


あらら

何した魔導院。


アリアは恐怖に耐える様に言った。


「とんでもない事実を掴んでしまったの」


言えないけどねってパターンですよね。

思わせぶりなだけの前フリだ。


「驚かないで聞いて・・・。」


言うんかーい

ええのんか

国家機密じゃないの


「魔導院、院長ストレガ。彼女は人間じゃないわ」


ほう

どうやってその事実に辿り着いたのかな


「え・・・あんなにキレイな人が」


「キレイだからよ」


えー差別だ。


「おかしいと思わない?就任から

10年以上経過しているのに

もう中年に差し掛かっているハズなのに

今だに小娘の姿。」


あー

そろそろそうなるか

それは怪しむよね。

更に10年経ったら

もっと騒ぎになるな。


「魔道に身を置く者の年齢は見た目通りでは無いと

聞いたことがありますが・・・。」


俺は一応、最初に用意しておいた

言い訳を試して見た。


「ええ、その噂は私も知ってる。

でも真実は全く別の事実だったの・・・」


まさかアンデッドの正体を・・・

もし、そうなら

どうしようかな。


悩む俺の様子を

単純にこれから打ち明ける真実への

恐怖と受け止めたのか

アリアはゆっくりと続けた。


「魔導院にマリオという人形使いがいるのは知っている?」


「?・・・はい。」


なんでマリオなの


アリアは意を決して語った。

辿り着いた

恐るべき事実を


「ストレガの正体はマリオが作った人形。

私・・・見つけちゃったの・・・

マリオの研究室にストレガのスペアのボディが」


俺は盛大に茶を噴いた。


マリオーどうするー

本当の事言ってもいいかー

死んでもダメだよね。

武士の情けだ。

真実は言えない。

何て誤魔化そう

駄目だ

笑ってしまって

考えに集中出来ない。

助けてマリオー。

バズーカ持って助けに来てー。


「ごめんなさい。突拍子も無い話だったわよね」


アリアは慌ててふきんを取り

拭いてくれようとしたが

俺は手でそれを制すると

背中に手を回し短杖を隠し持っていたかのように

ストレージから取り出して装備すると

呪文を唱えた。


杖の先端に飛び散った茶の水分が

不規則な回転をしながら集まっていった。


「・・・スゴイ」


アリアは目を丸くして

目の前の現象に目を奪われていた。


俺は渋い表情だ。

ブリッペの様に無詠唱ともいかず

回転もブリッペの方が一定で

真球だった。

力技ならレベル差、魔力差で埋められるが

力関係ない繊細なコントロールは

まだまだ鍛える余地がある。


金属なら自在だが

分子が勝手に動き回る液体のコントロールは

どうも性に合わないっぽいな。


俺は集め終わった茶をカップに戻した。

って

ああ

やっちゃった。

でもコレ自分だと平気だ。

茶以外の不純物は集められないので

埃やゴミが混入しないというか

出来ないのだ。


ただ傍目で見ている者の感想は


「えっ・・・飲めるのそれ」


精神衛生上よろしくない

かつての俺がそこに居た。


「はい。埃とか混ざらないですよ」


俺はさも当然かの様に

開き直って堂々と飲んだ。


「しかし、人形って魔導院は

何でそんな面倒くさいカモフラージュを・・・。」


もう面倒くさいので

アリア説を真実にしまーす。

ストレガドールはありまぁーす。


「それは、メリットだらけよ。

これで暗殺は事実上不可能だし

何かの責任を被せて処刑だって

し放題・・・これは一回こっきりね。」


言われて納得。

どの道、適当な所で隠居せにゃだしな。

何が真実でも問題は無い。

うん

いいじゃないかアリア説。


ストレガにはそう言う理由で俺がマリオに作成をさせた。

お前とゆっくり隠居したいからだと説得すれば

真実を話すより、マリオ、ストレガ両名ともよっぽど傷が浅いハズだ。


どうだヨハン。

俺、すごくね。


「そして文字通り操り人形に責任を被せ

魔導院は非人道的な実験と

強力な攻撃魔法の開発

更には異界から魔物を召喚なんて

まぁこれは無理でしょうけど」


最後のセリフは鼻で笑ったアリア。

ああ

今ここでダーク出したい。


「とにかく魔導院は危険。

魔法の研究を看板に

バルバリスの武力増強を一手に

担っているの。

そして裏でそれを指示しているのが教会よ

バルバリスが圧倒的な武力を手にしてしまったら

クリシアは今度こそお終い」


そら必死にもなるわな

てか

あれ

もしかして知らないのか


「なんでバルバリスが武力増強に

尽力していると思いますか。」


「支配よ。それしかないでしょう」


仇になったな。

バングの脅威を未然に防いで

不要なパニックを避けたかった為の

情報操作が疑心暗鬼を

最悪の方向に持って行ってしまった。


どうせ調査に行くんだ。

前フリ替わりにアリアには

広報車になってもらおうか


「アリアさん。バングと呼ばれる

魔物ってご存知ですか」


真顔もいいけど

キョトンとした顔のアリアさんもキュートだった。



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