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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第百六十四話 出発前に

「ミカリンさん。ちょっとお話しよろしいでしょうかね。」


三日後に出発と決まり

それで皆が部屋を出た。

ユークリッドは退出の様子を眺め

ミカリンに続いて部屋を出たのだ。

そこでミカリンを呼び止めた。


ユークリッッドの様子が気になった俺は

半魔化して盗聴だ。


「何?話なら部屋に戻ろうよ。」


そう提案するミカリンに

ユークリッドは堂々と答えた。


「アモンさんには内緒の話なのですよ。」


部屋のすぐ外だ。

盗聴で無くても聞こえそうだぞ。

迂闊すぎやしないか

その疑問はすぐ解消した。


「そうなんだ。でも僕は全部話すよ。」


「はい。あなたから話して頂ける分には

何の問題もございません。」


「意味不明だよ。」


「教会側もアモンさんに隠し事は出来ないと

判断しております。

アモンさんとの関係を考えると

マイナスのイメージは避けたい。

たばかるなど危険が大きすぎます。

しかし、なんでも話せるワケではありません。

こちらが知られたくないと思っている。

この事が伝われば良いのです。」


「分かった。じゃ僕の部屋で

立ったままだとアレだし

ここは人が良く通るからね。」


二人はそのまま3階の

女子ゾーンに移動したようだ。


俺は3階のミカリンの部屋を盗聴すべく

延長した指を差し替えようとした

その時


『このまま流すよ』


「おわっ」


ミカリンのボイスが脳内に響いた。

聖刻でも使っていた通信機能か

思えばこれを頼りに

ミカリンは宇宙空間で真っ直ぐ俺に

向かって来れたし話も出来たのだ。

前回のヴィータ同様

使い方を良く知ってるな。


「頼む。」


俺はつい声を出してしまう。

声に出さず脳内で語り掛ける様にすれば

伝わるのだが、一々注意して実行するより

声に出してしまった方が楽だ。

丁度、部屋には俺一人だし

変に思う人はいない。


俺は指を戻し人化した。

ぶったおれて思い知ったが

今回は人がメインなので

出来る限り人状態でいる方が

負担が少ないのだ。


「今回、アモンさんはダメージを

受けておられるようで、本人曰く

死にかけたと言っていましたねぇ。」


「・・・まぁ、死なないけどね。」


そんな事は無い

ミカリンを生贄にした後でなら死亡出来る。


「その方法が知りたいのです。

魔神アモンを屠る手立てを」


「・・・。」


『なんだとーぶっ殺すぞー』


声に出さないのは偉いが

俺の方に心の声が駄々洩れだ。


ミカリンの返事を待たずにユークリッドは

慌てて付け加えた。


「我々の方にアモンさんと敵対する意志は

ありません。これまでの功労

まさに救世主メシアと言って良いレベルです。」


「じゃあ、なんでそんな手段が欲しいのさ」


「魔神アモンが救世主メシア。この事を

知る者は極一部なのです。」


そう言えば秘密結社シークレットパーティだったけな


「そして、それを広く知らしめる事は出来ません。

神を称える教会が魔神を救世主メシアとしたなど。」


まぁ言えんわな。


「ハンスやパウルなど直接に彼を知る者は

問題無いのですが、そうで無い者には

魔神など恐怖対象です。私も含め

その他の者達には教会の結界は

絶対に安全だと言い聞かせてきましたが・・・。」


が?


「結界さえあれば入って来れない

来たとしても力を行使出来ない。」


下級じゃ一発で灰だ。


「しかし先日の・・・あの悪魔光線ですか

あれには結界など役に立たない。

結界の外からアレを撃たれれば

ベレンはそれだけで終わりです。」


うん、俺もそう思う。


「人は弱いモノです。抗う手段が無い。

それだけで卑屈になり相手のご機嫌を

伺い、正しく接する事は困難になっていきます。

ふとした一言で怒らせようものなら・・・

特にアモンさんって短気じゃないですか。」


そんな事は無いぞユー


「そこは同意だねー。」


おーい。


しかしユークリッドの言っている事は問題だ。

いくらハンスやパウルのお偉いが大丈夫と

言っても、いやお偉いだけが言う程

下の者達との隔絶は広がるばかりだろう。

今は問題では無いレベルだが

ダムに空いた蟻の穴

巨大になってから慌てても手遅れだ。

先見の明があるユークリッドが

危惧しているだけの事はあるだろう。

放置すれば教会自体が分裂するに違いない。


『どうするー?何か魔神を一発で倒す

嘘の呪文でも教えて置く?』


ユークリッドが

いや

ユークリッドが代表している教会の不安の種。

それを解消しておきたいとは

ミカリンも考えているようだ。


「それでもいいが・・・・そうだな

ミカリン天使化して私が見張っているから

安心しろと言っとけ」


『えーいいの?』


「ああ。ミカリンが天使化出来るのは

ゲッペの教会で周知しているからな

なんで一緒なのか?その疑問も

監視という名目で一発解消させとけ」


『はーい。じゃ一旦切るよ天使だと

ダメージ入って痛いからさ』


「はいーよろー」


その後すぐに

上の階で椅子が倒れる音と

「ぅおおおわ!」と叫ぶ

ユークリッドの声が聞こえた。


失敗した見に行けば良かった。

ユークリッドの驚く顔は見たかったな。


夜にはガレージで内職だ。

流石に店の商品が尽きていた。

この三日で一か月分位作っておかなければ

って

ダークはどこに行ったんだ?

あれ

どうしたんだっけ


発狂して飛び出した時に

ガレージに一緒にいたが

帰って来た時は居なかったな。

まぁ

メニューで見れば良いか。


俺がガレージの扉を開けて中に入ると

ダークが畏まっていた。


飛行出来ないダークは

俺を追いかける事が出来ず

続けて母屋が騒がしくなったので

影に潜んで様子を見たという。

ブリッペとは面識があるが

残りの3人からは隠れた方が良いと

判断したそうだ。

ミカリンの話はざっくりだったので

あまり気に留めていなかったが

ダークの話では家は大変な事になっていた。

酷く苦しみ出したアルコとミカリンに

普段とは別人の仕切りっぷりでブリッペが

オロオロとするばかりのグレアに指示を出し

急場を凌いだそうだ。


「生命の危機だって言ってたっけな」


ざっくりだが大変な状態だったんだな。

名付の逆効果が出てしまったのだろう

俺の発狂と存在の力の弱体が

二人に急激な負荷となって襲い掛かったのだ。


これはマイザーとキャスタリアの様子も

見に行かなきゃだ。

ナリ君はどうなったんだ

最悪死ぬ

いつも最悪が訪れるから死んだんじゃないか


ブリッペの処置で難を逃れた後

ミカリンが説明もそこそこに

文字通り飛び出して行ったそうだ。


ブリッペのレベル上げが

早速、功を奏した。


「心配をかけたな。」


改めて申し訳ない気持ちになった。


「そんな事より、大丈夫なのでござるか」


俺は作業用のデスクに腰掛け

バング親玉=ババァル説を

ダークに話した。


「な・・・なんと・・・では

ではではでは拙者のしたことは

拙者のしたことはああああああ!」


突然ダークの様子が豹変した。

はー

俺もこんなだったのね

情けな。


「落ち着け。この説は間違っているそうだ」


「う・・・嘘偽り無しでござるか!」


「誓ってもいい。今俺が落ち着いているのが

その事が分かったからだ。」


ダークは胸に手を当て

苦しそうに椅子に座り込んだ。


「はぁ脅かさないで欲しいでござる。」


「スマン。でも当時の俺の状況は

分かってくれたか。」


「あのただ事ではない様子

これが理由なら納得でござる。」


肩で息をするように項垂れるダーク。

呼吸して無いクセに

こいつも人の模写が板に付き過ぎだ。

人間界に長く関わると

自然にそうなるモノなのかもしれない。


「して、その説が間違いである理由は

拙者には間違いには思えぬ程

筋が通っているでござる。

合点でいってやつでござるよ。」


俺はシンアモン召喚と

その会話を話て聞かせた。


「あのアモンをフルサイズで召喚

馬鹿な・・・いや地上のアモン殿なら

あるいはでござるか。」


「俺も自分でも信じられないよ。」


その位、巨大で強大だった。


「フーム、理屈の裏付けが欲しいで

ござるなぁ。」


寝っ転がっている暇な間に

新商品用の型は色々出来ていた。


特に指示は出さなかったのだが

ダークは俺が置いた見本と

立て続けに排出し始めたパーツ軍団を

見て組み立て作業に入ってくれた。

手の掛からない子だ。


「俺もだ。明日オーベルを

とっちめに行くが・・・来るか?」


「是非にでござるよ。落ち着かないでござる」


「分かった。」


高速影絵チェンジに比べれば

単純なのだろう素早い作業で

バンバン組み上げていくダーク。


鋼鈑をバネ替わりにした物なので

組み立ての順番が一部決まっているのだが

見本を少し見ただけでダークは理解し

正解の順番で組んでいく

まぁ玩具バングの腕パーツですら

説明が要らなかった位だ。

それよりは単純な作りだからな。


「時にアモン殿。

これはナニに使うのでござるか」


仕組みや動きを理解出来ていても

何に使用するかまで発想がいかなかったようだ。

まぁ魔神には無用の物だ。

それも仕方無しだ。


俺は返事の代わりに

人化すると実際に使って見せた。

元の世界の日本ではお馴染みの

どこの家庭にもある道具だ。


「爪を切る専用具でござるか?」


こっちの人々はニッパーみたいなので

済ませているのだが

うっかりすると肉までいく

子供では握力が足りなかったり

ヤスリを別に用意しなければならなかったのだ。


テコの板を裏返し

ヤスリ部の使用も見せ

その後、内部に収納される切りカスを

ゴミ箱にパラパラと捨てる。


「これは・・・ヤットコで済むのでは

わざわざ別で購入するとは」


ダークには不評だったが

心配いらん

爪に特化した究極の切断具だ。

一度使えばもう戻れないのを

俺は知っていた。




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