第百六十一話 濃紺の星空に
帰り道が分からない。
宇宙空間における重力加速は
大気圏内の比では無かった。
飛び立った星は
何万キロ程度離れても見えなくなる程
小さくなりはしないハズだ。
だと言うのに全く見えない。
星空の中にポツンと俺は居るのだ。
「どんだけ加速したんだ。」
無我夢中で全力を出した。
道中をロクに覚えていないのだ。
「シンアモンさんに聞けば良かった。」
ただ
時間的意味合いからも
シンアモンさんは
直ぐに魔界に帰る必要があった。
俺の魔力量の問題だ。
何をしても減らなかった俺のMPゲージは
今底を尽きかけているのだ。
デフォルトサイズは降臨ゲートを
通過出来るサイズで
あれでも全開では無かったのだ。
あの黒い太陽が
フルサイズといっていたが
とんでもない魔力量を持っていかれる。
召喚を直ちに止めなければ
話どころでも
帰るどころでも無かった。
どこかも分からず
MPも残り少ない
途方に暮れる。
まさに今その状態に
俺はなっていた。
「あはは・・・あれは流れ星かな」
遥か遠くで輝いている星々以外
何も見えないこの空間に
ユラユラと揺れる星があった。
「おうちに帰れますように。おうちに・・・。」
俺は早口で三回祈った。
それでもその流れ星は消えずに
ユラユラと揺れていた。
「余裕だな。まだ願いを言えそうだ。」
何をお願いしようか。
普段あれ程欲にまみれていると言うのに
いざ、言えとなると
中々すぐに出てこないものだ
まぁ普段からいつ流れ星が
来てもOKだぜと
準備している奴など居ない
もししている人がいるなら
その努力を他に回した方が
絶対幸せになれると思います。
「そうだ。イケメンだ。
イケメンになれますようにイケメンに・・・。」
その流れ星はまだ揺れていた。
気持ち大きくなっている様だ。
おかしい
発狂から復帰したものの
まだ本調子ではないのか
普段の俺なら
あの流れ星がおかしい事に気が付くはずだ。
流れ星の正体は
大気圏で燃え尽きるデブリだ。
小惑星だったり寿命の来た人工衛星だったり
重力で落ちて来る物体が
空気の摩擦で燃焼する発光現象だ。
ここは地上では無いし
空気も無い
そうなると彗星の可能性が残るのだが
これも違う。
太陽と反対の方向に尻尾が流れないと
行けない。
進行方向の反対では無いのだ。
正体不明の流れ星は
明らかにこちらに向かって来ていた。
尻尾も見えない。
太陽の位置から考えると
左斜め上あたりに尻尾が出るはずなのだ。
「アモーン!!」
しかも、俺をアモンと知って声を
掛けて来たぞ。
て
いい加減に流れ星の発想から
離れろ俺。
完全膝カックン耐性を起動させ
接近する物体との距離を
測ろうと試みるも
遠いのか
全く反応が無い。
しかも真空で声が聞こえるって
おかしいだろ。
「アモーン!」
聞こえた。
これは空気の振動を聞き取った音じゃないな
自動翻訳の一環で脳が認識している音だ。
出来ると思った事が出来る。
前回、学習したこの法則を思い出す。
今回はレベル1からスタートで
すっかり忘れていた感覚だ。
あれは誰だ。
そう思えば答えは直ぐに分かった。
「ミカリン!」
「アモン!良かった無事なんだね」
姿を確認できるまで
近づいて来た。
来たんだよなコレ
空気が無いせいか視覚の距離感が
おかしい
すぐ目の前で巨大化していると
言われればそんな気もするのだ。
「げぇミカリン最終決戦Verじゃないか!」
確認出来る距離になった事で
俺はミカリンの姿を見て驚いた。
12枚の翼に専用の鎧を装備した
ミカリンの天使姿は
前回の最終決戦時の大天使状態だ。
大人になってるし
「なんかさっき頭の中で
これ以上ない派手なファンファーレが聞こえたよ。
何したの・・・って自分だって12将状態じゃないか」
12将・・・教えて無かったっけな。
まぁそのままでいや。
そうなのか
俺はメニューを開いて確認した。
悪魔男爵でレベルが100だ。
ミカリンは大天使で同じくレベル100に
なっていた。
思いあたるのは召喚だ。
やっぱりそれしか無いだろうな。
シンアモンの召喚はそれだけ
どえらい経験だったのだ。
「とにかく無事で・・・良かった。」
光る綺麗な涙を流しながら
ミカリンは俺の胸に飛び込んで来た。
流れのまま俺は優しく抱き止めって
「ぐああああああああああ」
「ぎゃあああああああああ」
互いに纏うオーラは
相手に最も効果的な攻撃手段だ。
「痛ててて離れんかーい」
「呪いのせいで僕はもっと痛いよ」
互いに痛く無い距離まで探りながら離れる。
結構、離れた。
会話は不可能な距離だと思ったが
空気関係無しで話せたので
問題無く話せた。
どうしても大声になってしまい
うるさいと怒られた。
いや、だってこんなに離れたらさ。つい
「で、どうしたんだ。ミカリン」
「こっちのセリフだよ!何があったの?
生命の危機だったんだよ。」
呪いの効果だ。
俺が死ぬほどのダメージは
自動でミカリンが肩代わりする。
すっかり忘れて自殺しょうとしていた。
俺、自殺出来ないんだった。
「スマン。呪いの事すっかり忘れてた。」
俺はバングの親玉=ババァル説に
気が付き自殺しようとした経緯を説明した。
「なんで自殺なのさ?」
「ババァルを酷い目に遭わせた奴には
倍以上のダメージを与えて来た。
俺のルールに則るとだなぁ。」
「馬鹿ぁ!!」
今は俺もそう思う。
「だな、ごめん。」
素直に謝罪する俺。
これは俺が悪い。
「僕も頭、あんまり良く無いから
上手に説明できないけどさ。」
「ああ、そうだな。」
何か言いたげに俺を見るミカリン
この距離でもそれが分かった。
「と、とにかくそのババァルって魔王は
バングとは関係無いと思うよ。
って言うか確かめようよ。」
「ああ、そうする。」
そうだ。
ミカリンはともかく
シンアモンさんが保証してくれたので
間違いないだろうが
確認はしなきゃだな。
「でも、何でそう思うんだ。
推論としては俺の方が理屈に沿ってると思うが
ああ、上手に説明出来ないんだったな。」
聞いておいて
やっぱりいいや
をやってしまった。
コレ自分がやられたら結構ムカつくやつだ。
「その・・・ババァルもアモンのマイナスに
なるような事はしないよ。」
も
が気になったが
あえて無視しよう。
「そうか。取り合えず帰るか」
「うん。」
良い笑顔で頷くミカリン。
大人状態でも笑顔は一緒なんだな。
「ミカリンが来てくれて、正直助かったよ。
実は恥ずかしながら帰り道が分からなくてさ。」
俺の言葉に固まるミカリン。
・・・嘘だろ。




