第百五十四話 ブリッペふぁい
櫛セットとは比較にならない
複雑な作りと部品の多さに
超合金バング作りは10体で
朝になってしまった。
皆に説明するのも面倒だし
ミカリンやブリッペは天使だ。
魔神の常駐を快く思うハズも無い
いずれ話すにせよ
しばらくは影に潜んでもらって
様子見する事にした。
「やっだぁー何でええ!!」
朝食の後
新商品「超合金バング」の説明ついでに
対戦を実践させてみたが
女子軍団は異様な程盛り上がった。
「実際に戦ったらミカリンやアルコには
絶対に敵わないじゃないですか。でも
コレなら互角以上に戦える。
何か嬉しいです。」
これはグレアの弁。
「これは・・・いくら体を鍛えていても
全く関係ないですね。」
これはアルコだ。
操作優先のため人化して
戦いに挑んだが
何と一番弱かった。
「これは燃えるねー。」
ミカリンだ。
一番喜んでいる。
そして強かった。
「ブリッペ用に一個頂戴
頂戴頂戴頂戴ーーー!!」
性奴隷は頂戴を連呼している。
昭和のデパートのおもちゃ売り場は
休日の度にこんなだったんだろうか。
一体一でも盛り上がるが
俺も参加してのバトルロワイヤルは
大騒ぎになった。
性格が出る。
俺とミカリンはまず逃げ回り
不利な奴を見つけると猛然と参戦。
アルコは正々堂々と突っ込んで来る。
グレアは射程ギリギリをキープしながら
後退して迎え討つスタイル。
ブリッペは操作ミスでテーブルから
しょっちゅう落ちていたが
予想外のクリティカルも多く
勝ち星は悪く無かった。
結局、開店時間ギリギリまで
対戦しまくった。
俺はブリッペを連れて家を出た。
残りのメンツに店を任せる。
「えー戦うの?!」
戦闘用の装備をさせ
最初は新しい衣装にルンルンだったが
経験値稼ぎに行くと分かると
途端にブリッペはぐずった。
俺は強引に連れ出す。
こいつには俺の替わりを
してもらわにゃならんのだ。
地下道に連れて行くと
そこでも騒いだ。
「何で地下道があるの?!」
「俺が作ったに決まっているだろう」
「いつ?いつ作ったの」
「最近だ。」
ブリッペを、ふと見れば
真っ赤になって涙目で
スカートを押さえる仕草だ。
僧侶用の装備はスカートじゃないだろうに
って
ああ
「覗き穴は無い。自分で確認しろ」
俺の言葉を信じていないのか
地下道の天井を
やたら調べるブリッペ。
構わず俺は悪魔男爵になる。
「行くぞ。乗れ」
「ま・・・魔神だ。」
「知ってるだろ」
「そうだけど・・・やっだー」
意味分からん
俺は強引にブリッペを抱えると
地下道を飛行した。
もうギャーギャーうるさい。
お前、天使の時は飛んでただろうに
何言っているのか分からない
と言うか、どうせ大したことは言っていないだろう
無視して郊外の岩山発着口から
飛び出すと高度を上げた。
肉眼ではそうそう発見出来ない高さまで
上昇すると水平飛行に移る。
流石に疲れたのかその頃には
ブリッペは大人しくなった。
適当な魔物を発見すると降下する。
着地してブリッペを降ろすと
俺は指示した。
「俺が適当に痛めつけるから
トドメだけ刺せ。」
トドメの一撃が一番経験値が入るのだ。
「・・・。」
「どうした返事ぐらいし」
「ゲロゲロゲロゲロゲロ」
酔ったみたいだ。
「ああもう世話の焼ける。」
俺は人化して治療呪文を掛けてやった。
「あーナニコレ爽やかな気分ーっ」
湖のほとりで
腸内細菌の揃っていない時のミカリンも
しょっちゅう嘔吐していた。
その時に開発した呪文だ。
三半規管の状態を戻し
更に爽快感で連続する吐き気も絶つ
特別製だ。
さっぱりした表情でブリッペは言った。
「さぁ帰ろう。」
「戦うんだよ。」
嫌がるブリッペの首根っこを掴んで
発見したモンスターの所まで移動する。
俺達に気が付いたモンスター
なんかネズミがでっかくなったのを
スパイクで死なない程度に
痛めつけ更に動けない様にした。
これなら反撃できまい
安心して掛かれるハズだ。
「よし行けブリッペ」
「わーい。これならイケるよ」
持たせた槍は本体は軽いながら頑丈な木製で
先端は贅沢な真鉄だ。
刃は付けておらず技要らず
もう突く専門にした。
急所っぽい所を突きまくれ
「おおりゃああああ。」
嘘だろ・・・・。
のろい
へっぴり腰だ
俺より下手だ。
ああ
そんな傾斜した額を狙ったら
刺さらないで逸れるって
案の定、ブリッペの槍はモンスターの
額をかすり
勢い余ったブリッペは
動けないモンスターの牙に
自ら身を投げ出す恰好になった。
ヂュクシッ
そんな音を立てて牙の餌食になってしまうブリッペ。
「死ぬううううう」
「お釈迦様か、お前は」
引っこ抜いて回復呪文を掛ける。
「お前さぁ槍が専門武器じゃなかったっけか」
もしかして俺が勘違いしているのかと思った。
そのぐらい素人すぎる動きだ。
「神槍メイセラティ。一度、敵を認識すれば
光の速さで急所を貫く。
炎と鍛冶の神ハルバイスト様の
作品の中でも珠玉の逸品よ。」
「勝手に槍が飛んでいくのか」
「イエースうふふ」
とりあえずゲンコツを落とす。
「槍術を身に着けて無いのかよ」
「えー勝手に刺さるんだもん
必要無いじゃーん」
ゲンコツを落とされた箇所を
撫でながら歯向かうブリッペ。
ハルバイストっつったら
勇者シリーズやヴィータのじょうろとか
前回の俺でも解析出来ない
武具の至高だぞ。
なんでこんな奴に
・・・・
こんな奴だからなのか
自動で敵を倒す武器が必要だったのか
そこまでして武器持たせる
意味は
必要性は
後の三人が剣、盾、弓だから
絵的に槍だからなのか
何
バカは槍持つって決まりでもあるのか
「槍術、覚えろ」
言ってみて無理だと感じた。
基礎的な体作りから
始めないと術うんぬんじゃないレベルだ。
「やだー無理ー
メイセラティみたいな槍作ってよー」
今更ながらラハを恨んだ。
何てモノ押し付けるんだ。
こいつ凄いな。
駄目だ。
魔法攻撃に変えよう。
「ブリッペ。じゃ魔法だ。」
「ウォーターシュー」
家庭用の水道全開ぐらいの勢いだ。
せめてコイン洗車場位の圧があれば
怪我の可能性が出て来るんだが
これじゃ・・・。
「うふふふ苦しそうだよ。」
モンスターの顔面に水を
浴びせ続けているブリッペ。
コレいじめだよ。
「それ攻撃力無いから他の」
パタン
突然、倒れるブリッペ。
メニューを見てみるとMPが0だ。
「・・・・えー。」
えー
ウォータシュート数秒でMP切れですか。
しょうがないので
取り合えず魔力譲渡して起こす。
「悪い子はいねぇがあああああ」
えー
一回でもダメなの。
こいつに戦闘させるのは諦めよう。
効率は悪いが俺が倒して
オマケで入る経験値で上げる方が速いわ。