第百五十一話 地下道から洞窟へ
丁度そこへストレガが
現れて茶を配り始めた。
ユークリッドは長いため息をつくと
落ち着きを取り戻し話始めた。
「すいません。どうも気分が
高ぶっているようですねぇ。」
「いえいえ落ちついている方ですよ。
最初ですからね。私の時はみっともなく逃げ出し
捕まり神に祈り続けていました。」
普段、糸目で眼球見えないハンス君だが
あの時は見開いていたな
悲鳴もぴぎゃーとかだったっけ。
「・・・そういえば、盗聴の
対策は行っているのですか。
前回の報告会の内容、全て
駄々洩れだったみたいでしたが。」
ユークリッドの疑問に
ストレガが答えた。
「行っていません。多分、無駄です。」
いや
あの遮音やられたら
悪魔耳でも聞こえないだろう。
「ですね。あのお方は絶対者ですから
いかなる対策も徒労でしょう。」
持ち上げるパウル。
「コソ泥の様に息を潜め
壁に耳を当てて・・・
なんてハズはありませんよね。」
ユー鋭いじゃない。
「ええ、恐らく音では無く
思考そのものをプロテクトしない限り
如何なる対策も無駄でしょうね。」
なにそれ
ハンス君何か怖い事言ってる。
「そう言えば、その実験はどうなったのですか」
ユークリッドの質問にハンスは
自信満々に答えた。
「成功しました。ただ被験者の
五感も完全に外界と絶たれるので
何にも出来なくなります。」
成功って言うのかソレ
「拷問ぐらいにしか使い道が
思い浮かびませんねぇ。」
呆れた様子のユークリッドに
更に追い打ちを掛けるハンス。
「プロテクト解除の成功が待たれますね。」
え
掛かりっぱなしなの
教会の闇を見た。
流石は秘密結社だ。
その後の話の続きになり
武具の効果の確認と
改良点の洗い出しまで進んだ。
「数が揃う日程ですが
この流れだと魔族の訓練終了の方が
どう考えても遅いでしょうからねぇ。」
そう言えばユークリッドはそれを
気にしていたっけな。
「武具の生産が上回るなら
先にネルドに回したいですね。」
うむ「武」の意見だ。
ハンス君、立派にやっているようだな。
・・・・。
ドワーフ用の戦斧も同様の加工を
追加してもらうか。
同じ様にネルドで見たバリスタ
その矢尻にクリスタルを追加するだけで
貫通力はケタ違いに跳ね上がるだろう。
矢尻
尻って言いながら先端の尖がった部分なんだよね。
そうして話はミガウィン総長の話になった。
「知り合いだったと仰ってました。」
「ストレガも知っている人ですか」
ユークリッドの質問には
首を横に振ったのだろう
声は聞こえず話は続いた。
「ともかく、目の上のタンコブだった
ミガウィン族の嫌がらせや敵対行為が
今後無くなるのは大歓迎ですよ。
救われますね・・・・救世主でしたね」
その後は定時連絡などの
つまらない話題に移ったので
俺は地下道を後にした。
変な動きをする感じでは無かったので安心した。
何か動くようならビルジバイツを
移動なりなんなり対策を講じなければ
ならなくなる。
なのでミガウィン地帯はパスして
一気にドルワルドまで
音速飛行で飛ぶ。
キング・クリスタルを走査して探すと
前と同じ場所の奥に
まだ大量に埋蔵されているのを発見。
出来るだけ大きな状態で
ストレージに次々と放り込んでいく
ボーキサイト、その他の金属も補充だ。
ドルワルドには手つかずの鉱脈がいくつも眠っていた。
歩いて行くには難所である地帯が多い
しかし飛行、滞空出来る悪魔なら余裕だ。
適当なところで切り上げ
より道してネルドに着陸した。
「ほうら、兄貴だ。」
最上階前の屋上の扉が開き
ヨハンが出迎えてくれた。
「警報が鳴っていないな。不用心じゃないか」
「どうせ兄貴だと思って、止めたんだ。」
なんださっきから
ほうらとか
どうせとか
俺は冒険者ゼータに変化してから
中に入った。
ゴンドやアイリにはこっちの方が
分かりやすいだろう。
会議室に案内してもらい
その二人も呼んでもらった。
「そうか。テストは成功か」
意外な程にヨハンは喜んだ。
いや当然か
あの怪我人がこれからは減ってくれるのだ。
「吉報ですね。指令」
ゴンドの機嫌も上々だ。
俺は魔力を充填したクリスタルを
適当数並べるとバリスタ矢尻の案を
説明した。
クリスタルを手に取り観察していた
ゴンドは半信半疑だ。
「強度的にはとてもバングに刺さるとは
思えないのだが・・・そう言う事では
無いのだよね。」
この効果は一度見てみないと
やはり分からないだろう。
俺は頷いて太鼓判を押しておいた。
「で、どうだ。加工は出来そうか。」
ヨハンの問いにゴンドは
あっさり答えた。
「可能です。ただ、バングに刺されば
問題ないですが外れて岩に当たった場合は
クリスタルが破損するでしょうね。」
俺はその場合でも
後で破片を出来るだけ
回収しておくように頼んだ。
アイリには魔力の充填していない
小さめのクリスタルを大量に渡した。
「身に着けているだけで・・・ですか。」
「ああ、それでどの程度、充填できるのか
個人差が出るのかなど調べたい。」
お安い御用だと引き受けてくれた。
太ったおばさんになってしまったが
話てみるとアイリはやはりアイリだった。
当たり前か。
いやだって
どうみても別人なんだもん。
その後はヨハンの部屋に
二人で移動した。
「でさ、この姿になれるようになったじゃん」
「兄貴・・・目が輝いてるぜ
イタズラでも思いついたのか。」
イタズラじゃない
ドッキリだ。
同じか。
「魔導院のストレガの私室の
等身大フィギュアと入れ替わって
ばぁってやってみたいんだ。
鍵の開け方知らないか。」