第百五十話 鏡花水月
質量保存の法則
俺はそれに当てはまらない
デタラメな存在だ。
前回も体の大きさ重さが変化しまくり
今回も悪魔男爵もそうだ。
単純にデタラメだと納得していたのだが
これはこれで理屈がある事に
最近、気が付いた。
高次元の存在が下の次元に
現界する時にその世界の法則は
当てはまらないのだ。
俺はこうして3次元の世界
縦横高さの世界で形作ってはいるが
これは高次元から投影された状態だ。
分かりやすく例えると
2次元の世界があったとする
縦と横の世界で高さ厚みの概念が
存在しない世界だ。
その世界には面積保存の法則がある。
1㎡の面積はどんなに形を変えても
総面積が1㎡であることに変わらない。
ここに3次元の存在が現界しようとするが
形の一面しか現界できない。
魚拓だと思ってくれ
最近の歯磨きチューブなどでも
お馴染みの円柱の端を絞った
あの物体が現界しようとした時
蓋の部分を押印するように現界すれば丸になる
ロゴの部分の広い面を押印すれば四角になる
側面に当たる部分を押印すれば三角だ。
あの歯磨き粉チューブは
丸、四角、三角のシルエットを
併せ持っている物体なのだ。
3次元においては不思議でもなんでもないが
事、2次元に現界すればデタラメな存在だ。
面積も形もまるで別物なのに
同じ物だと名乗る。
同じ物なのに面積保存の法則が
当てはまらないのだ。
俺の外見や体積の変化も
これと同様だ。
チンチクリンの14歳肉体から
マッチョな悪魔まで高次元的には
一つなのだ。
体内に金属を収納しまくっても
体積の変化が無いのもこのせいだ。
なので今俺は
新たなドーマの自宅から
かつてのベレンの自宅まで
地下道を掘りつつ金属粒子は収納
土は圧縮して壁にしながら
掘り進んでいる。
今回は呼吸が必要な仲間もいるので
通気口や照明(鏡の屈折を利用した
外の光を洞窟内に誘導する)も設置した。
チンチクリン状態だと広く感じた
地下道だが悪魔男爵だと結構狭い
ちなみに悪魔男爵だが
レベルが10上がって80になったが
上の爵位は開放されなかった。
もしかしたらシンアモンさん自体が
男爵級で後は強化されて
行くだけかもしれない。
操作出来る金属も大分、種類が増えた。
金も開放されたので
地下道増設ついでに
拝借した分を返しに行こう。
繋がった地下道内を飛行する。
半魔化の状態から翼を生やした
元々の大きさだと狭いので
何かと不便だったのだ。
歩いた時は結構な時間を掛けていたが
飛行だとあっという間だ。
俺は金塊を元の場所に戻し
メモを回収したところで
またボイラーが動いている事に
気が付いた。
完全人化し気配を絶って
例のリビング真下まで移動すると
天井から覗き穴を通過した光が
スポットライトの様になっていた。
脚立はそのままだったので
音を立てない様に慎重に上り
聞き耳を立てる。
「えーではシークレットパーティ
第785回定例報告会を始めます。」
頻繁だな
おい
それじゃ何百回にもなるわ。
司会進行はパウルって決まっているようだ。
「と、大丈夫ですかユー」
いきなりつまづいてるじゃねぇか
「え・・・あぁ大丈夫・・・では無いですね。」
辛そうな声だ。
今日昼間一日一緒だったが
体調が悪いようには見えなかった。
言ってくれれば治療呪文くらい
いつでも掛けるのに
水臭いぞユー。
「回復魔法をかけましょうか。」
この声はハンスだな。
気を利かせてユーにそう申し出た。
「はは、無意味ですね。肉体的には
何ら問題は発生していないのですよ。」
「という事は精神的な・・・。」
そう解釈するハンスに肯定するユークリッド。
「はい。聞いてはいたのですが
実際に目の当たりにすると・・・
これは来ますねぇ。」
何が来るんだ。
パウルが嬉しそうな羨ましそうな声で
ユークリッドに続きを促した。
「ではユー報告していただきましょうか
今日はあのお方と一日一緒だったのですよね」
「内容は私も知っている事なので
その間に私はお茶を入れてきますね。」
ストレガの声だ。
居るのか。
スカートの中を覗くなら
キッチンに移動しないと・・・・。
いや
ここは定例報告会の盗聴の方が
どちらかと言えば優先だろう。
ユークリッドは今日のテストの事を話始めた。
ミガウィン族の領地に入った所で
パウルが項垂れる。
「あーすいません、教えて置くべきでした
あのお方はその辺りに詳しく無いでしょう。」
「でしたね。お供のミカリンと言う方が
そうなので知っているモノだとばかり
思い込んでいたのですが・・・・・・
ああ、そうです!!」
言葉の最後がユークリッドにしては
珍しく大声になった。
「「どうしました」」
「ミカリンと言う方、女性でしたよ。」
「「なっ何だってー!」」
ミカリン連れて来なくて良かった。
つか国の行方を左右する司教ども
何してるんだ・・・。
かく言う俺もリスタート時
どっちだか分からなかったな。
股間を参照して判断したんだっけか
うーん
学園にも入るし
そろそろお年頃なんだから
恰好をもうちょっと女の子らしくさせるか
鎧の時は別としても
普段の恰好がだらしないおっさんみたいな
恰好だからなぁ
初めて穿いたのがスタート時の馬車の幌を
縫い合わせた雑なズボン。
これがいけなかったのかな
当時はまともな服などなく
野良作業があるので
オサレなスカートなんぞ
履かせられなかった。
んーでもドーマでも
買い物してカワイイの買ったハズなんだが
普段着も部屋着もズボンだな
まぁ学園に入れば嫌でもスカートだ。
慌てなくてもいいか。
そして話は大群バングの話に入った。
「あの大群を見た時は、お終いだと
覚悟しましたよ。しかしアモンさんは
まったく動じていなかった。」
「「でしょうね」」
「テストするには数が多すぎる
少し減らすか位な印象をうけました。
そして・・・実際にそうだったのでしょう。」
「「でしょうね」」
「魔族の王を連れ立って
たった二人で・・・いえ
今思えば一人でも可能だったのでしょう。
戦闘後にも余裕がありました。」
「「でしょうね」」
「で、あれは一体なんなのですか
顔の辺りから光の帯が伸びたかと
思うと地形が変わり大勢が決していました。」
「悪魔光線ですね」
「かつて大聖堂の3階が消えました
それでも全力ではありません。」
「あなた達は何で平気なんですか。
あのお方一人に我々バルバリスは
全兵力で当たっても敗北しますよ。」
「そう思います。」
「だから私とハンスはずーっと
言ってきたではないですか
あのお方は絶対だと」
「何なのですか。あの悪魔光線とは」
ユークリッドは悪魔光線に衝撃を
受けている様子だ。
「悪魔が放つ破壊光線です。」
やめろってハンス
見えないけど
お前今笑顔で言ってるだろ。
「・・・ハンス君。あなたは
一番最初にあのお方に会っていますね。」
「はい。人間では恐らく私が
初めての相手でしょう。」
意味が分からないが
何故か自慢気にハンスはそう答えた。
「最初から、あんな感じだったのですか」
「はい。あんな感じですね」
あんな感じとは一体。
「良く平気でいられますねぇ・・・
尊敬しますよ。私は恐ろしいですよ。」
「いい人ですよ。」
「それは同意ですが危険です。
あまりにも短気なトコロが見受けられます。」
「私は結構悩むタイプなので
あの決断の速さは憧れます。」
「決して真似しないで下さいね!」
ユークリッドは強めに釘を刺したが
ハンス君に限ってはその心配は要らんぞ。
前回も決断させるために良く嘘をついて
背中を押したっけなぁ。
「はい。それとアモンさんの事は大丈夫ですよ。」
ハンス君が魅惑の低音ボイスに
切り替えて話した。
「馴れます。」
そんな結論でいいのか。
「それも怖い事なのですよ。」
ユークリッドは誰にと言うワケでも無く
そう言った。




