第百四十八話 ミガウィン総長
残り数体だったバングは
アルコとミカリンが余裕で倒しきった。
戦闘の様子を眺め
安心した俺は急ぐことなく
歩いて戻って行った。
「アルコ感触はどうだ」
兜の面を上げるとアルコは
薄っすらかいた汗に前髪が
濡れて額に張り付いていた。
呼吸は荒いが
息が上がっている状態では無い
まだ戦闘継続可能に見受けられた。
「はい、嘘みたいに簡単に刺さります。」
戦闘を見ていた感じ
盾も鎧もイイ感じだ。
鞭腕が命中しても
衝撃が乗る前に分解が始まっているようで
ダメージらしいダメージは入っていない。
魔力が続く限りは無双が出来そうだ。
そう問題は魔力だ。
俺はマリオとギガも来るように声を掛けた。
それからアルコに言って
装備したクリスタルを外してもらう
魔力の残量を調べると
結構減っていた。
戦闘自体は余裕で
もっとバングを残せば良かったかと
思っていたが魔力的には丁度良い残数だった。
当然の事ながら部位ごとに
残量の差がある。
接触の多い箇所から減っていくのだ。
これだと肝心な場所から魔力切れを起こして
他のクリスタルに余力があっても
撤退しなくてはならなくなる。
「うーん、もしかしたらデカい
クリスタル一個で全体に行き渡る方が
無駄がないかもだな。」
電池をアチコチにセットするのではなく
大き目のバッテリーからタコ足で
供給する形だ。
「出来るか?」
俺の質問に即答するマリオ。
「技術的には問題無いよ。
ただ大きいクリスタルの在庫数が・・・。」
俺はマリオにそれは、また
俺が収穫してくると言った。
「武器の方にも供給式には出来るだろうが
投擲をする局面を考えると
今のまま残しておいた方がイイぜぇ」
ギガはそう言った。
その通りだ。
俺は武器と盾にはクリスタルを残し
供給路を追加する事にし
鎧はアルコに渡したアクセサリー形式の
大型クリスタルからの
供給式に変更するように決定した。
アルコのクリスタルと違い時間ではなく
一定の魔力残量を切ったら鳴る様にしよう。
それが撤退の合図になってくれるだろう。
俺はアルコとミカリンに上出来だと褒めた。
お世辞でなく、少数のバング相手なら
俺抜きでも、この二人なら大丈夫だ。
「槍の武術習得も武器も防具も
みんなマスターが準備してくれました。
私は言う事聞いただけです。」
謙遜するアルコ。
「誰もが実行出来る簡単なコトじゃない
アルコは想定以上の働きを見せてくれた。」
謙虚なアルコとは対照的なミカリン。
「ねーねーレベルどの位上がったー?」
気になるよなやっぱ
ファンファーレ鳴りまくりだったもんな。
メニューを開こうとするが
ストレガが注意をして来た。
「お兄様・・・様子が変です。」
全員がストレガの指さした方角を見た。
土煙りを上げ
何かがこちらに向かって来ている様だ。
おいおい
バングお替りとか言わないよな。
脳内センサーが反応している。
それなりの危機って事だ。
「ふふっふふふはははは!!」
突然笑い出すブレンボ
釣られて大勢のモヒカンが笑いながら
俺達を取り囲んだ。
「これで手前ぇらもお終いだぁ
総長様が来てくれたぜぇー!!」
先程まで恐怖に震えてたクセに
ブレンボは打って変わって鷹揚な態度に出た。
「総長?」
俺の疑問にブレンボは
自慢気に答えてくれた。
「ああ13の部落に分かれたミガウィン族
それぞれの長を一括総じて治めるお方よ」
「ヒャッハー!!」
「流石は総長。俺らを助けに来てくれた」
「やっちまえーやっちまえー」
すっかり元通りに元気を取り戻すモヒカン達。
「おい、お終いって俺らは
お前らを助けたんだぞ。恩人だろ」
俺の言葉に嫌らしい笑顔を
浮かべてブレンボは
完全に人をバカにした口調で答えた。
「はい。助けて頂きありがとうよ!!
お陰でお前らを皆殺しに出来るだー!!」
あれー・・・。
「やっぱり関わりたくない連中ですねぇ」
分かってましたとばかりに
ユークリッドは冷静に呆れた声で言った。
俺は少々慌てた声で言った。
「普通は恩を受ければ敵対しないモンだけど」
俺の作戦は失敗?
「話合いの通じる民族なら
私やパウルが、なんとか出来ますよ。」
話合いが通じない相手。
嘘つき
嘘を平気でつく相手には
いかなる約束も話し合いも無意味だ。
あちゃー
振り出しかよ。
イヤ
振り出しより状況は悪い
こちらは消耗し
モヒカン達には強力な増援だ。
「そう言えば、狼煙っていうの
色の着いた煙を焚いていたよ。」
ミカリンがそう言った。
バングに襲われた時点で
救援要請をしていたのだ。
良く気が付いたな
俺はバングしか見ていなかった。
「みんなゴメン。作戦は完全に失敗だった」
俺は振り返って謝罪した。
皆、怒りよりも同情の気持ちのようだ。
誰も責めてこなかった。
こりゃしょうがねぇよ。
そんな声が聞こえてきそうだ。
「罰として一人で、ちょっくら片づけて来る」
踵を返して行こうとする
俺の後ろから声が上がる。
「アモン。僕はまだイケるよ」
「マスター私もです。」
「我も問題無い」
「お兄様。私まだ何もしていません」
泣けるねぇ
有難いや
でも、消耗しているのは事実だ。
そうだなここは
「じゃあストレガ。頼めるか
みんなは非戦闘員の護衛していてくれ」
「はい。」
嬉しそうにピョンピョンと
俺の横に並ぶストレガ。
「ふふ息切れしていない者が必要ですね。」
「本当に良く出来た妹だ。」
俺達の後ろにユークリッドが
声を掛けて来た。
「アモンさん。気にせず
やってしまって結構ですよ。
何を隠そう私も強硬派なんですよ。」
俺は手を挙げて返事の替わりにした。
「ま魔法鬼神か・・・」
「大丈夫だ。総長の部下ですら
あんなに強いんだ。絶対負けるハズはねぇ」
歩み出て来た俺達を一定の距離を
保って包囲するモヒカン達は
そんな話をしていた。
総長だけじゃないのか。
土煙の原因が現れた。
正体は強奪したと思われる商業馬車を
ドクロや角でドレスアップした
マッド全開な馬車だ。
俺達の強さをモヒカンはもう知っている。
なので仕掛けて来る様子は無い。
いつでも逃げられる様に遠巻きだ。
その総長とやらに頼り切るつもりなのだろう
俺達を逃がさず。
馬車を招き入れる様に
モヒカンの包囲網は上手に移動する。
お前ら良く訓練されているな。
馬車が止まり
モヒカンが馬車側面にぶら下がっている
輪っか状の紐を連続で引っ張ると
ブラインドが上がって行った。
モヒカン達が総長コールを始めた。
その総長とやらが出て来る。
脳内センサーは鳴りっぱなしだ。
これがミガウィン族の言う言葉が
ハッタリでは無い事を証明していた。
ストレガの緊張も極限だった。
「今のお兄様と同じかそれ以上の存在を感じます。」
的確だな。
俺と同じ判断だ。
「はっはっはっは」
ブラインドの奥からゆくりと出て来る人影
笑い声は幼い声だ。
直ぐにシルエット見えた。
肩にフクロウを乗せた少女のシルエット。
隣には細見の成人女性の剣士のシルエット。
って・・・。
「あふうん」
俺の緊張が急速にしぼんでいく
それに気が付いたストレガは
素っ頓狂な声を出した。
「おおおおおお兄様???」
そんな俺達に構わず
周りのモヒカンは全員で総長コールだ。
少女の肩に乗ったフクロウが声を張り上げた。
「控え控え控ええええええいい頭が」
俺は瞬間湯沸かし器になった。
「うるせええええ!!」
その叫びと同時にうっかり悪魔光線が漏れた。
なんとかギリギリ俺の僅かな理性が間に合い
悪魔光線の照準がフクロウから上に外れてくれた。
「高っ・・・・。」
直撃せずとも衝撃波だけで十分だった。
オーベルはビルジバイツの肩から
吹き飛ばされ、気絶し
回転しながら後ろに落ちた。
「上等だ!!皆殺しだ!!!!」
温厚で滅多に怒らない俺を
怒らせるとどうなるのか
思い知らせてやる。




