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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第百四十四話 空は愛で落ちるか

「ヒャッハーーッ!!!!」

「奪っちまえ!奪っちまえ!!」


二階建て一軒家程度の幾つもの丘に

囲まれた場所を走行していた俺達を

完全に包囲した軍団は

口々にそう叫んで馬で駆け下りて来た。


浅黒い肌に金髪のモヒカン。

素肌にベスト状の革を着て

ボウガンを片手に盛り上がっていた。


皆、ボディはもちろん顔にも

SEXとか死とか台所とか

刺青なのか

ペイントなのか

落書きだらけだ。

中でも一番笑ったのが「今を生きる」だ。


もう、まんまアレですわ。

革ジャン着たヨハンにあたたたで片づけて欲しい

しかし、残念ながらここにヨハンは居ない。


「な・・・なんて数だ。」


ユークリッドが衝撃を受けていた。

・・・・・・。


まさに

ユーはショック

だ。


もしかして、キング・クリスタルの命名効果が

コレとか言うんじゃないだろうな。


俺は笑いを堪えて声を張り上げた。


「ストレガ!戻れ」


迷わず戻って来るストレガ。

すごいな迷わないか

仮に先行しても悪魔ボディの

ストレガならあんな矢では

ダメージが入らないだろう。


俺は車を停止させると

装備を魔法使いにした。

その間に全方位から

矢が飛んで来るのが見えた。


あの程度の矢なら土壁で十分だろう

余裕で間に合う。


俺は連続で土壁を発生させて

車を囲った。


「おおぉ!」


ユークリッドを始め

何名かの驚きの声が聞こえた。

初めて見る人もいるよな。


出来上がった土壁を見て

俺も驚いた。


土壁自体も久々だった。

確かに本体のレベルも

呪文のレベルも上昇していたのは

知っていたが・・・。


「この壁・・・高過ぎじゃない」


キャリアの運転席でミカリンが言った。

連結アモンカーは数十メートルはあろうかという

壁に囲まれ、日が完全に遮られ暗くなった。


「壁?!落ちたんじゃないんですね」


ユークリッドの両手はがっちりと

バーを掴んでいた。

衝撃に耐えるつもりだったのか


落下したと錯覚するのも仕方が無い

相対的にはそうも見えるのだ。


矢が壁に当たる音が沢山聞こえた。

なんか雨でも降っているかのようだ。

貫通する様子は無い

土とはいえ、かなりの厚さだ。

ここまで来ると銃弾でも力が分散されて

貫通は難しいだろう。

石壁より頼りになるかも知れない

元の世界でも土嚢は弾避けに使用されているのだ。


「飛んでいる敵には効果が無いと

諦めていたが、そうでも無さそうだな」


ストレガが何か呪文を唱えると

余裕綽錫の先端のクリスタルが

白く輝き出した。

この世界では馴染みの薄い

白色LEDの色に近い光だ。

お陰で皆の顔が見えた。

相変わらず気が利く妹だ。


「この後はどうしますか。お兄様」


「全滅させて良い敵なのか

それなら無差別にスパイクを

突き立て捲るぞ。」


なんか部族がどうたら言っていた。


「それは・・・。」


ユークリッドが気まずそうだ。


「緊急会議開催ーはいはい

みんなキャリアに移動。」


方針を決めないと始まらないな。


「え?大丈夫なんですか

壁は消えないのですか」


ユークリッドが心配してそう言った。


「そうですね。念のため

効果時間を延長した壁で

もう一周囲っておきますか。」


高速圧縮言語の壁だと

そんなに長くは保持出来ない。

俺は詠唱版で効果時間を延長した壁で

更にもう一回り囲っておいた。

それも石壁でだ。

余程の怪力無双か

爆発物でもない限りは

これでしばらく大丈夫だろう。


俺はユークリッド、ミカリン、ストレガと共に

キャリア内に入った。


「マスター何事ですか」


ナリ君は背中の宝剣に手を掛けてそう言った。

アルコも完全武装だ。

ギガは窓を開け呆然と壁を眺めていた。

マリオは青い顔で窓を閉めてくれと

訴えていた。


「ユーさん。襲撃者の説明を」


「はい。この辺りは・・・。」


ミガウィン族と呼ばれる

褐色の肌が特徴の部族の縄張りで

国と呼べる程、規模は大きく無く

幾つかの部落に分かれて荒野で暮らしている。

バルバリスの布教をガンとして跳ね除け

布教は一切出来ていないが

聖騎士を送り込んで強制的に服従させるほど

実りのある土地でもない事から

バルバリスも攻め入る事はしていないそうだ。

交通の不便さと布教の見込みが少ない事から

スルーされているエルフの里などと

同じ扱いだ。


「ベレンで見かけた奴隷って・・・。」


俺はユークリッドにそう聞いた

差別対象になっている人々の肌の色は

ミカリンと同じだ。

だから、あの学生達も絡んで来たのだ。


話によると

強制連行では無いそうだ。


「野蛮・・・んんっ勇猛果敢な

部族のようでしてねぇ」


武勇を重んじ

部族同士でしょっちゅう戦を

繰り広げては強者を称えているそうだ。

掟を破ったり、決闘で敗北した者が

流れ者になりベレンに入り込み

奴隷となるしか生きる術が無い状況が

続いているそうだ。


「大人しく奴隷でいてくれれば良いのですが」


一部の悪党が徒党を組み

暴力事件はもちろん

強盗、麻薬、強姦、売春など

かつてはベレンの一大裏社会を

形成してしまった時期が有り

当時の最高指導者フィエソロの令で

ベレン市内で大掛かりな武力制圧を

行った過去があるらしい。


「善良に労働してくれる方々も

もちろんいらっしゃるんですがね。」


ベレン市民にしてみれば

黒い侵略者。

このイメージが定着してしまっている。

教会は表向きには奴隷を禁止してはいるのだが

雇用労働者、実質奴隷がまかり通っている。


この事は部族にも伝わり

バルバリス許すまじ

けど攻め入っても勝ち目は無い。


で現在に至るそうだ。


「頭痛の種ですよ。出来ればずっと

無関係が良いんですけどねぇ」


だな

自分達で同胞を追い出しておいて

何を逆恨みしてるんだか


仲良くする気は無いが

恨みも買いたくない

こんなところか


知らなかったとはいえ失敗した。

知っていればこんな面倒くさい地域に

バングを誘導なんてさせなかったのだが

今となっては後の祭りだ。


ストレガは当然知っていた様で

ユークリッドの解説の間

奥のキッチンでみんなにお茶を

入れてくれた。


丁度、そのタイミングで壁の外で

もの凄い音がした。


「ちょっと見てきます。」


そう言ってストレガは窓から飛び出すと

爆音を響かせ上昇していった。


直ぐ戻って来た。


「1000人ぐらいいますよ」


なんとミガウィン族は諦めずに

大岩を括りつけた大八車みたいなので

石壁を壊しにかかっているそうだ。


土壁は解説の間に時間切れで消えていた。

石壁も攻城兵器相手には持たないな。


「やれやれ。」


俺はそう言ってメニューを開き

レベル70で開放された壁の上位呪文を

広さ、厚さ、高さ、効果時間、数、場所を設定した。


設定が終わると同時に石壁が崩れ去った。


「ヒィィィイイイ!ゼゼゼゼータ君」


パニックに陥るマリオ。


「ヒャッハーーッ!!!!」

「奪っちまえ!奪っちまえ!!」


大歓声を上げるモヒカン達。

その軍団の中でも一際体格の大きいモヒカンが

薄ら笑いを浮かべて近づいて来る。

こいつがミガウィンの長なのだろうか。


「かくれんぼはお終いだぁあ」


舌なめずりをしてそう言った。

俺は笑顔で返した。


「ゴメン。もうちょっと待ってて」


フリック操作で新呪文の壁を発動させる。


ドドドドドッドッドド


「「うおぉおおおおおおおおおお!!」」


巨大な黒い壁が地鳴りと共に

地面からせり上がっていった。

自分で使ったクセに

俺もつい大声を出してしまった。


だって凄い迫力だったんだもん。


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