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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第百四十二話 音速男爵

その日の夜

俺は悪魔男爵バロンでネルドに向け飛んだ。


「やり方を教えろ・・・ですか」


俺は超合金バング騒動の後

ストレガの部屋で二人きりでくつろいだ。

ジェット噴射で華麗に飛び回るストレガ。

俺も是非やりたかったのだ。


「教えるも何も、あれはお兄様が

天使相手にやっていたのを私なりに

真似ただけですよ。」


俺は腕を組んで考えた。

あれか

ウルを大気圏外にまで連れて行った

体内黒色火薬点火か。


「え?あれだとお前溶けるぞ。」


当時の俺ですらヤバかった。

同じボディとはいえ

数段劣るストレガで耐えられるハズは無い。


細かく話を聞いて見ると

溶ける危険性はストレガも承知していて

溶けない対策が施されていた。

威力は落ちるが温度の低い火薬を層で分けて

複数回に分けて点火していた。

更に膝小僧の下にスリット、空気取り入れ口を

設け飛行の際に空気を通過させ

効率よく冷却していたのだ。


一番強い火薬に一気に火を付け

根性で耐えた俺とはもはや

別の技術と呼んで差し支えない。


つか、それを見て

ここまで昇華させたストレガには脱帽だ。

元から勤勉でマメな奴だったが

想像を超えた所にいた。


イギリス人はこんな気持ちになったのだろうか

遅れた文明の黄色い猿に機関車売ってやったぜ

そして百年後

欲しいです。新幹線売ってクダサーイ


俺と違って元の世界の知識が無いハズなのに

俺が先に開発して無きゃいけない技術だ。


うーん

あれだ。

藍は藍より出でてなんたらだ。

ええい今は飛ぶ

ありがとうストレガ。


悪魔男爵バロンの翼での最大重力操作をした。

大気は横綱の様に俺を押しつづけ

体表の温度はどんどん上昇していった。

加速が終了し最高速になったところで

ストレガ式多段火薬点火同時気流ええい面倒だ。

ストレガ・バーナー点火!!


目前、本当に顔面の前で

空気が裂けた。

雷に似た音を出し

三角錐状に瞬間的に水蒸気が形成される。

音が俺を追いかけるの止めた。


音速突破だ。


爆発も裂ける大気の音も

耳より後ろだ聞こえてこない。

体を伝わる振動音だけ

超高速なのに静かな世界だ。


今俺はマッハバ・・・音速男爵だ。

蹂躙されて黙っていないぞ。


流石、超音速あっという間にネルドに

を通り過ぎたーっ


やだもう減速地点決めないと

見えてからじゃ間に合わないコレ

重力操作オンリーと違って

自由度が低いぞ。

何も無い高空だからイイが

ストレガ街中でも使ってる

良くコレで衝突しないな。


俺の場合は亜音速域までは

重力操作で可能だ。

ストレガ・バーナーは超音速時のみに

限定しよう。

危ない。


ネルドに滑空して飛び込む

その際には半魔化して外見を人間にする。

悪魔が飛び込んで来たんじゃ大騒ぎだからな。


ストレージから防寒着を出して着た。

また負傷者でもいれば人化しなくてはならない。


着地したのはネルドの最上階前の

屋上になっている場所だ。

どうやって中に入るか考えていると

避雷針の生えた円錐状の屋根を持った

最上階の扉が開き人が飛び出して来た。


ヨハンだ。


「おぅ。探す手間が省けた。」


がっくり肩を落としてヨハンはボヤいた。


「何だぁ兄貴か。脅かすな」


塔の構造になっている柱に

見張りが在中していて

その見張りから高速で飛行する

新型バングと思しき物体が侵入したと

連絡を受け慌てて飛び出したらしい。


道理で素早いお迎えだと思った。

しかし、見張りに気が付かなかった。

良い作りの砦だな。


「ちょっと連絡っていうか話があるんだ」


「ネルド紹介ついでに俺の部屋にいくか」


ヨハンに案内されてネルド内部に入った。


「アレか武器の試作品が完成したとか」


秘術通信か。


「なんだ、もう知ってんのか」


「ああ。夕方頃パウルから連絡があってな」


最上階から下りると指令室めいた場所だ。

大型飛行生物の襲来にも対処できるように

大型固定武器を先程の屋上っぽい場所に

リフトアップ出来る仕掛けもあった。


「最初から屋上に設置・・・ああ凍るか」


「吹雪の日はあっという間に雪だるまだぜ」


ヨハンのセリフにアモン2000を思い出す。

あの短時間で埋もれたからなぁ。


そこへ寝間着の上に軍用コートを羽織った

初老の男が慌てて飛び込んで来た。


「!指令・・・敵襲では」


「すまん兄貴だった」


初老の男に指令呼ばわりされたヨハン。

この初老の人物

良く見れば見た事がある気がする。


「兄貴・・・ゼータ・アモンなのかねその少年が」


思い出した。

ベレンの冒険者協会の所長、ゴンドじゃないか

うわ老けたな。


「あ、ゴンドさんだ。老けたな」


その指揮能力を買われ

と言うかヨハンの巻き添えを食う形で

冒険者協会から半ば強制的にネルド防衛に

参加させられているそうだ。


「以前と違って外見は地味なのだな。」


冒険者ゼータはストレガの兄設定のため

髪や目の色をストレガに酷似させた中二キャラだった。

今の俺は宮本たけし中学二年状態の日本人だ。

そらかなり地味に見えるだろうな。


悪魔男爵バロンはかなり前回に近づいた。

半魔化なら出来るんじゃないか。

俺は前回を思い出しながら外見を変更した。


「おぉそれも魔法なのかね」

「・・・ストレガの奴が泣いて喜ぶぜ」


出来た。

俺は窓ガラスに映る自分の姿を確認した。

うん。

冒険者ゼータだ。


そこへ大勢の職員がワラワラと飛び込んで来た。

それを見たゴンドは声を張り上げる。


「敵襲は誤報だった。警戒態勢を解除だ」


皆、口々に安堵してトボトボと

戻って行くが、その波に逆らい

留まっている太ったおばさんがいた。


「ゼータ・アモン!!」


誰だ。


「誰だ?」


ゴンドとヨハンが揃って渋い表情になって

そっと教えてくれた。


「アイリだよ。」


ガーン


時の流れの残酷さを味わった。

何?

アイリってイタリア人の血でも入ってんのか

結構いいスタイルだったのに

何でこんな太ったおばさんに・・・。


パスタをお食べ


何処からかそんな声が聞こえてきそうだ。


そんなんで

ゴンドとアイリも混ざり

昔話に花を咲かせながら

四人でネルド内を見て回った。


流石は最前線、戦争の為の設備が

充実していた。

ただ一日の仕事の半分が雪かきというのは

仕方が無いのだが、なんか笑った。

ネルネルドと違って男子が多い

ドワーフの比率もどこよりも高かった。


ざっと案内を終えると

ヨハンの私室だ。


入ると、壁一面に色々な武器が

ズラリとディスプレイされていた。


「またか、使いもしないクセに」


俺はバリエアの隠れ家を思い出した。


「いいだろう。好きなんだよ」


前回は9大司教の「武」だったために

様々な武器の見本が集まったと言っていたが

今回はその理由は適用されないぞ。

きっかけであって

ヨハンは元々、こういう武具フェチなのだろう

その癖に本人は格闘家で徒手空拳だ。


徒手空拳

手ぶら、何も持っていないという意味

字面から感じるイメージとは異なり

何かの拳法ではなく

決して会得したり放ったりするモノではない。


武器を見て本来の目的を思い出した。

パウルからどの程度聞いているかは知らないが

試作品の出来具合をヨハンに説明した。


「ははっバング以外には意味無ぇか

ユーも拍子抜けしたろうな。」


対バング用武具、その製法は

ドーマとバルバリスの二国間のみの

極秘事項に指定してあるのだ。

強力な武器の拡散は好ましくない。


「そうでもないぞ。」


俺はヨハンにナリ君との手合わせが

どんな状況だったか説明した。

雷を纏う剣、鍔迫り合いはもちろん

受け流すだけでも感電し動きを阻害した。


「今は拍子抜けかも知れないが」


人の作る物は必ず発展・進歩する。

いずれその微弱な魔力を強化し

雷や炎を纏う魔剣を作り上げるかも知れない。

存在しない物に進歩は無いが

存在してしまった以上

必ず進歩してしまうのだ。


「ユーの生きている内は大丈夫だと思うがな」


俺の説明を聞いたヨハンがそう言った。

俺は頷き答えた。


「ああ、自分の存在しない先の未来まで

あの人は心を配っているんだ。

一見、自分の興味だけで行動している様に

見えるけど本当はそうじゃない人なんだと思う」


尊敬する。

その責任感。


「はは、そこは兄貴も同じだぜ」


いや似て非なる物です。

俺は自分の興味でしか動かない。

意図しない結果で

そう誤解しているようだが

都合がいいから、勘違いさせたままにしておこう


その後

明日のテスト、模擬戦用バング作成まで

話し終えた俺はマリオの秘密をヨハンに話した。

ヨハンはドン引きだった。


「決して誰にも言ってはいけない秘密だ。」


俺は笑いながらそう言った。


「もう俺に言ってんじゃねぇか。

聞きたくなかったぜ。」


「スマンな独りで抱え込むには

面白過ぎてな。」


俺は笑いが治まらない。


「もー研究に熱が入るだろうな」


更に笑う俺にヨハンが言ってくる。


「しかし、人形とは言え、ストレガが

そんな風に扱われるのは・・・。」


「好きな娘を妄想して自分を慰める位

男子なら普通だろ。禁止したらかわいそうだ」


妄想そのものは禁止しようが無いな。


「ストレガには絶対言っちゃダメだぜ

あいつこういうの凄く傷付きそうだ。」


おお

やっぱりヨハンは優しいな。


「駄目か。いざと言うトコロで

ストレガと一緒に乗り込んで

何・・・してるの、とか言わせたかったんだが

マリオがどんな顔するか見たくね」


流石のヨハンも噴き出した。

そうだ

薄っぺらな善人の意識なんて捨てて

悪の快楽に身を委ねるんだ。


「あんたぁ・・・悪魔だ。」


「そうだ。」


「そうだった。」


しかし、流石は9大司教

真面目に釘を刺しに来た。


「本当にストレガには知られないように

してやってくれよ。」


うーん本気だな。

ここは素直に従うか

俺もストレガを傷付けるのは嫌だ。

了解した。

それは止めよう

そうなると


「そうか・・・じゃあプラン2で」


「・・・まだ何かあんのか」


俺は魔力操作の仕組みを簡単に説明した。

設定されたチャンネルさえあっていれば

魔力の強い方の命令が有効になるのだ。


「それを踏まえてだな。」


「・・・踏まえた。」


「いざと言う所で俺が操作を奪い

ストレガドールがマリオに襲い掛かって来る」


「怖ェェェェェェエェ!!!」


「さっきまで愛おしく舐めてくれたのに

豹変して食いちぎる!!」


ヨハンは自分の一物をガードするかのように

両手で押さえ足を閉じた。


「そこまですんのかよ!既に男子として

役に立たなくなりそうなトラウマなのに

物理的にも駄目にしちまう気かよ!!」


「その時のマリオの顔見たくね」


「悪魔め!」


「悪魔だよ。」


「そうだった。」


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