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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第百四十一話 超合金バング

「何だぁこのガキは」


魔導院に到着した。

マリオの研究室に案内されるのかと

思っていたが違った。


マリオの部屋は本と人形で埋め尽くされている。

武器を試し振り出来るはずがない。


バングの仮面が吊るしてあった

一階の広い部屋に案内された。

ちなみに仮面はまだ吊るされたままだ。


その部屋に入ると

見慣れないドワーフが俺見て

開口一番にそう言ったのだ。


隣に立っていたゲアは慌てて

新顔ドワーフを諫める。


「おおおい。この人が救世主なんだよ。

ギガ、失礼はまずいぜぇ」


ゲアもガウも丸っこい目で人懐っこい印象だが

ギガと呼ばれたドワーフは

ドワーフにしては切れ長と言ううべきか

寡黙で厳格な戦士を連想させた。


「ハン。救世主だぁ?権力なんぞに

飼いならされおってドワーフの誇りを忘れたか」


うん。

俺が気に食わないらしい。

一発、雷撃ボルトでもぶち込んでやろうかと

思ったが、ギガは誇りと言った。

暴力、権力には反骨するタイプだ。

逆効果になるな。


あまり考える時間は無い。

ストレガが悪鬼羅刹と化して

ギガに襲い掛かる前に何とかしよう。


・・・ドワーフだもんな。


俺はストレージから最近作ったたばかりの

鉄製パーツを取り出してギガに渡した。


「誇り高いドワーフから見て

これはどんな感じだい」


ギガは渡されるまま受け取り

つまらなさそうに一瞥して

一瞬で目つきが変化した。


「なっ?!」


ギガはポケットのやたら付いてるズボンから

ルーペを取り出すと

パーツを色々な角度から観察し始める。


「どうやって作ったんじゃ・・・。」


回りはポカーンだ。

只の手の平サイズの四角い金属塊にしか

見えていないのだろう。

しかし、これは武器職人からみれば

奇々怪々な一品なのだ。


そのパーツには様々な孔が開けられているのだ。

鋳造でも鍛造でも形成不可能だ。


削り出しで穴を開けようにも

孔は一直線で無く

内部でカーブし側面に繋がっていたりする。


更に真鉄。

内包している酸素原子はほぼ0%だ。

絶対に錆びない。


悪魔男爵バロンの性能テストで

試しに作成したが使い道が無い

普通なら材料に戻すのだが

折角上手に出来たので勿体なかった。

取って置いて良かった。


「おいガ・・・ゼータど殿。

これを教えちゃあくれんか」


こんなところで役に立つとは。


「その前にゲアに謝罪してくれ

大事な友人を侮辱されて

俺は怒っている。

権力に飼いならされているんじゃあない

大勢の人の役に立つ仕事を

立派にこなした人物だ。」


ゲアは驚き恐縮する。


「いいよ。気にしてねぇって」


ギガは迷いなくゲアに正対すると

素早く頭を下げた。


「さっきの言葉は間違いだった

俺が悪かった許してくれ。」


分かりやすい。

ギガ風に言うなら

ギガ本人は技術に飼いならされているのだ。


ガウは規則を無視してミスリルを欲しがった。

ゲアは周囲の制止を無視して車を分解した。

鍛冶師でないドワーフでもこれだ。

ギガはこれに輪を掛けるに違いない。


「じゃ試作品見せてもらおうか」


ギガは尚もパーツの製作者を問いただしてきたが

俺はそれあげるから製法を解析してみろと言って

話を切った。


防具、鎧や盾の説明を聞いて

俺は目から鱗だった。

クリスタルを特殊な樹脂で囲んだものを

従来の防具にくっつけるだけだったのだ。

速いハズだ。


「僕の義手が全体に魔力を帯びているのは」


極微弱ではあるがマリオの義手は

魔力で囲まれている。

その理由は触感の為だ。

どの場所にどの位圧力が掛かっているのか

これが分からないと握手で相手の手を

握り潰しかねない。

魔力伝達率の高い樹脂を塗布し

そこから圧を読み取っているそうだ。


これなら新たな防具を一から生産しなくてよい

現在使用中の物にちょっと加工するだけだ。

クリスタルは普段はアクセサリーとして

身に着け蓄積させ

戦闘時にハメ込んで消費、

切れたら撤退に移る。

この戦い方ならマインドダウンを防止できるだろう。


・・・・ギガ呼ばなくて良かったんじゃないか。


すごい事なのにマリオは

終始自信無さげに解説した。


「帯魔するのは本当にごく僅かで

とても防御と呼べる強度は出ないよ。」


十分だ。

強さでなく有るか無いかが大事なのだ。

俺はそこを補足するが

バングと戦闘してみないと実感は難しいだろう。


続けて武器の槍の解説に入ったが

こちらはギガを呼び寄せた意味があった。

防具と違い、同じ場所を接触させ続ける

武器だと塗布が摩擦ですぐ駄目になってしまう


「その伝導率とやらを維持しながら

武器として使える強度のある合金

こいつに時間が掛かったぁ」


武器の解説はギガに交代だ。

時間かかったって

いや、速いから。


常に魔力を帯びている必要は無いので

トリガーを装着してあり

突くときに発動させる仕組みだ。

これでクリスタルの消耗を遅らせる事が出来る。


「こっちも・・・試して見たが

何も変わらないぜぇ」


そりゃそうだろうな。

ただバング相手にはこれで十分なのだ。


浮かない顔の開発陣に対して

俺は声を出して笑った。


俺要らないじゃん。

これで十分だよ。


「これで勝つる!!」


ただ一回、実戦テストをしてみよう。

量産しました。

あれ効かないよ。

これは怖い。

俺は実戦テストを提案した。


明日、出発だ。

メンバーは

テスターにアルコ

万が一の時の討伐隊に俺とミカリン

開発陣からギガとマリオ

バング発見の為にストレガ。

以上6名だ。


その場はそれで解散

メンバーそのまま魔導院内の食堂で

昼食を摂った。


「僕が行く意味あるのかな。」


マリオは乗り気ではない。

戦闘に関しては全くの素人だ。

不安になるのは当然だ。

安全な所に居たいだろうが

そうはさせられないのだ。

俺はキッパリと言う。


「ある。バングの動きを

覚えてもらわにゃならん。」


「動き?何の意味があるんだい。それ」


俺は模擬戦の構想を話した。

ほとんどの者がバングを見た事も無い。

いざ戦うとなっても動きが人間や魔物とは

異なるのだ。


「2型の鞭腕や3型の砲撃ですね

確かにアレを初見で回避するのは至難の業です」


戦闘経験のあるストレガの補足だ。

これは説得力が増す。


「4型のボディプレスは俺らも危なかった。」


相手の技を事前に知っている。

間合いを分かっている。


これだけでも被害は各段に違うだろう。


「模擬戦の重要性は分かるよ。

それに僕がどう関係してくるのか・・・。」


俺はニンマリと笑いながらストレージから

昨夜、作ったばかりの超合金バング2型を

テーブルの上に置いた。


関節はガス給湯器の蛇口でも

お馴染みのフレキシブルホース構造を

採用しウネウネする動きを可能にし

更に腕には一部の腕時計のバンドに

使用されているバネとプレートを連結させた

構造で鞭腕を再現可能にした。


超合金バングを見たマリオは

目の色が変わった。


「これがバングなのかい。本物を知らないけど

これ・・・良く出来ているなぁ。」


流石、人形となると食いつかずには居られない様だ。


「手に取って見ていいかい」


もっと良く観察したいようだが

俺は制した。


「これを見てからにしてくれ・・・行くぞ」


俺は続けて手袋を左手に装着して

魔力を込める。

以前、ハンス改変に行った技術の

応用版だ。


「動いた?!」

「キャー」

「なんじゃこりゃ!!」


一番驚いているゲアのデザートまで

えっちらおっちら歩く超合金バング。


「食らえ鞭腕ー!!」


ビョーンと伸びる腕が見事デザートを粉砕した。


「何をするんじゃー!」


伸縮し戻ってくる腕の反動で

超合金バングは後ろに転んでしまった。

うーん、オリジナルの重量配分が

分からないからなぁ

この辺は要改良だ。


「こいつはテスト用のミニチュアだが

オリジナルと同サイズの物を作ってだなぁ」


「それを僕が動かせって事?!」


「構造を熟知している者、義手などで

魔力による操作制御に長けた者。

両方の条件にピッタリだ。

なので、マリオにはどうしても

バングの動きを覚えてもらいたい。

模擬戦の出来が戦場での成果に

大きく影響する。大事な仕事だぞ。」


「ぼ僕には動かす程の魔力量は」


マリオの言葉を遮る様に

俺は超合金バングの背中のフタを

開けてみせた。

きらめくキングクリスタルが動力源だ。

本人の魔力は操作の命令分だけ

極微量で済むのだ。


「あ・・・あふん」


逃げ道が無くなり頭を抱え

変な声を出すマリオ。


俺はマリオにそっと耳打ちした。


「この技術を応用すれば、お前の

人形だって自由自在に動かせる様に

なるんだぜ。」


マリオの中で

何かの撃鉄が落ちる。


「全力を尽くすよ。約束する」


「頼んだぞ。」


俺とマリオはガッチリと握手をした。

その様子をポカーンと見ているストレガとギガ。

ゲアは駄目になってしまったデザートの

お替りをもらいに席を立っていった。


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