表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぞくデビ  作者: Tetra1031
141/524

第百四十話 櫛職人の敗北

まだ前回には及ばないものの

悪魔男爵バロンの金属操作は遂に

鉄を開放した。


俺は小躍りして喜び

早速、自宅を鉄骨入りに改造

横の空き地も買い取り

ガレージを作りアモン・カー2台を

収納、余ったスペースで

様々な雑貨作りを始めた。


ベレンは裕福な都市でガラスの流通量も

多めだが、やはり高価な部類に入り

一般へはまだまだだった。


ここに目を付けた。

材料は基本砂利などに含まれる透明な粒だ。

ただみたいなモンだ。

一般ではガラスに生成するに

当たって高温を維持しなければならないので

その設備と費用が難易度を上げている。

しかし、悪魔男爵バロンなら容易だ。


「金属と鏡かぁ」


金属は武器防具には使えないモノを

これで片づけてしまおう。

前回と違って雷系の操作が

優れているのでボーキサイトから

アルミの精製を行う。


アルミと鏡を使い

クシを内蔵した折り畳みのコンパクト

開くと鏡だ。

流石アルミ、軽い


俺は大きさや形を変えて

複数作成し女子軍団に

どれを採用すべきかテストしてもらった。


「金属の櫛?」

「重そう・・・。」

「すぐに錆てしまうのでは」


と皆、始めは難色を示したが

アルミの特性である軽さと

錆ない(厳密には錆びるのだが鉄の様な赤い粉末にはならない)

これを理解してからは大絶賛になった。


ここまで他に

もっと色々苦労してきたのだが

一番褒められた

なんか納得がいかない。


持ち運びしやすい手の平サイズ細長めが

採用され、これが「メタめた」の最初の商品になった。

そして女子軍団からの強い要望で

姿見と三面鏡(引き出し付き)と、それ用の椅子

丸くて座面を開くと物が入る奴。

これらを各々用に作らされた。


なんかハーレムから遠ざかっている気がするが

みんな嬉しそうだったから良いか。


これも絶対に売れるとの事で

商品ラインナップに入れられそうになったが

布、革、木材などは悪魔男爵バロンの能力外なので

普通に時間が掛かってしまうのだ。

勘弁してもらった。


昼は製作、夜は悪魔男爵バロンの性能テストと

何日か経過した。


ガレージで作業中、天井付近にジェット音が

聞こえた。ストレガが来たようだ。


ガレージの屋根は平らな発着場にした。

ストレガの為だけにだ。


そこから二階の俺の部屋にダイレクトで来れる作りだ。

後、いつの間にか

なんか勝手に俺の部屋のナリ君側でない隣の部屋は

いつの間にかストレガの部屋になっていた。


大き目の天窓からタラップが下りていて

ストレガがカンカンと音を立てて降りて来る。


「お兄様ーっ」


俺は作業を中断した。


「おう、どうした。」


金属精製の作業に集中し過ぎると

視覚聴覚が戻るのに若干時間が掛かる。

ぼんやりとストレガが見えたが

すぐにピントは回復した。


「武器の試作品が出来ました。」


「おう、早速見に行くか」


予想より速かった。

ゲアの選んだ武器職人がネルドから

ドーマに到着したのは昨日だったハズだ。


俺は完成した商品を箱に詰めて

ガレージから母屋に向かい

裏の勝手口から入ると

キッチンでグレアはくつろいでいた。


一瞬さぼっているのかと思ったが

昨日、商品の在庫が危ういと

言われていたのを思い出す。


「えーと、もしかして」


「はい、売り切れで店を開けられません」


予想外の人気になったようだ。

かなり量を作ったはずなのに

生産が負けた。

今まで何回か敗北は経験しているが

今回の敗北は結構来た。

ちょっと悔しい。

材料のボーキサイトをまた夜採りにいかないとな


このせいで人間街に今まで

足が遠かった魔族の女子が集まり始め

女子が集まると若い男子も釣られて集まる。

魔族と人の交流の助けになれば良いのだが。


「あの、お兄様。こんなズルは

申し上げ難いのですが・・・。」


後ろからついて来たストレガが

会話に割り込んで来た。


どうも魔導院のマリーを始め

女子連中に入手を頼まれているらしい。


「えっと、いくつですか。

それによっては行列をそこで切らないと・・・。」


箱から出しながら数を数えていたグレアが

そう言った。


行列とか、そんな事になっているのか。


行った先で現地生産するか・・・。


「魔導院女子の分は別個で渡すよ。」


大変そうなグレアを見て

やっぱりと恐縮するストレガを見て

俺はそう言った。


どうせなら限定品にしてしまえ。

俺は蓋に魔導院の紋章、櫛に名前を掘る事にした。

試しにストレガ用に作り渡した。


「ホレ限定品だぞー。」


名前の所はちょっとカッコつけて

最愛の妹、ストレガへ

などと掘ってみた。


「・・・!!」


受け取り、確認するストレガは

息を飲む様に驚き固まってしまった。


ハズしたか・・・。


一瞬そう思った俺だが

ストレガは予想外のリアクションになった。

胸の前に両手で大事そうに抱え込むと

嬉し泣きし始めた。


なんか焦る。

不意に嫌な予感に襲われ

周囲を見ると

グレアが

階段から顔だけ出して

ミカリンがアルコがブッリペまでもが

強い意志の篭った視線で見ている。


「・・・ちょ・・ちょうどいい

みんなの分も今渡そう。」


咄嗟にそう言った。

皆、笑顔で寄って来る。


欲しかったのか、言えよ。


そうは思ったのだが

皆、商品の人気に遠慮していたらしい


蓋の部分は魔導院の紋章じゃダメだな。

三半機関と元の世界の文字で別バージョンにして

それぞれ配った。


「わ・・・私にも頂けるんですか」


グレアは予想外だったようで

本気で驚いていた。


いや、流石に一人だけあげないワケにはいかない。

名前の所を暗殺者にしようかと

思ったが絶対ダメだ。

普通に「グレアへ」とした。


驚く程皆は喜んだ。

どうも俺は女子の喜ぶポイントを

良く理解出来ていないようだ。

もっと早くやれば良かった。


笑顔で見送られ、俺とストレガは

魔導院に向けアモン2000を走らせた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ