第百三十七話 引っ越し下見
マリオを説得し終えた俺は
その足で最上階に向かう
モナに会う為だ。
「ストレガ。悪魔召喚の研究は継続だ。」
「はい、お兄様。優先度はどう致しますか」
優先順位で言えば
まず魔法バッテリーだが
これは先程のクリスタルでいいだろう
後は配るだけだが
これもネルドと行き来する便に任せよう。
そうなると武器、防具だが
今しがたマリオを説得出来た。
先のバッテリーと合わせて
義手の技術をそのまま応用させた
試作品からだ。
マリオとゲアの報告待ちだ。
それまでは人だけ送り込んでも邪魔になるだけだ。
でも、これは悪魔召喚でも同じか。
「モナはそのまま召喚の研究に
要請のあった品々は最優先を阻害しない限り
優先的に頼む。」
「分かりました。お兄様」
ここでストレガが話題を変えた。
「そういえばお兄様。」
「なんだ。」
「昨日、ハンスさんが少しだけお見えに
なって仰っていたのですけれど」
「うん。」
「ヨハンお兄様から秘術通信によると
バングの数が激減しているので
慌てて戻らなくて大丈夫だと」
「そうか。良かったじゃないか」
「・・・・何かしましたか。」
「クリスタル探しの邪魔だったんでな。
まぁちょっとな」
怒られる事じゃないはずだが
何だか誤魔化してる様な感じになってしまった。
見てみるとストレガはニッコリと笑っていた。
「ありがとうございます。お兄様
正直、連戦で精神的にも肉体的にも
消耗がキツかったので本当に助かります。
ハンスさんもそうお礼を言っておいてくれと
言付かっています。」
良かった。
褒められた。
てかハンスは、もう俺が原因だと
決めつけているじゃないか。
何故だかストレガの機嫌を損ねたくない。
ホッとする俺。
それを見計らってストレガの追撃が始まった。
「お礼を言付かっているのは
ハンスさんだけじゃないんですよ。」
なんだヨハンか
今更特別礼なんぞ
「ネルネルドでも大活躍でしたそうで
ガガガを始め駐在しているシスター達が
もうこぞって、あのお方は一体何者なのと」
そっちか。
「ああ、負傷兵だらけで見るに見かねてな」
「治療だけですよね。」
「・・・・だったと思う。
他には特に何もしてないな。」
何だ何だ
ストレガは何を探っているんだ。
大丈夫
今回は何もしてないぞ。
プルやグレアみたいに
やましい事は何も無いハズだ。
ビルジバイツの事は知っているハズが無いしな。
なんかモヤモヤしたまま
召喚の間に着いた。
ストレガにモナを呼んでもらい
召喚の研究続行の連絡を正式に通達した。
深々と頭を下げて拝命するモナ。
・・・・。
ん
何か用なかったっけ俺。
おあ思い出した。
「そうだ。モナ」
「はい。ゼータ様」
「今日はメイド服じゃないのか」
「あああれは副院長の指示で
パーティに潜入する為の変装で」
慌てるモナ。
なんでかこの子は慌てると
手足がバタバタ動く
・・・違う。
こんな要件じゃない。
改めて思い出した俺は
ストレガに背を向ける感じで
モナに耳打ちして聞いた。
「呼び出した悪魔ってどうやって戻すの
時間切れとかで自動で戻ったりするの」
俺の質問に
人差し指を自分の顎に当て
天井の方を見て考え込むモナ。
やがて俺を見てにっこり笑って言った。
「まずは召喚を成功させましょう。
それから考えましょう。」
知らないのね。
魔導院での用事を済ませた。
ストレガは残って指揮に当たるそうだ。
俺は俺で別件の用があるので
1人、アモン2000で市内を移動した。
目的地、教会前の雑貨屋。
元かな
元雑貨屋に到着した。
皆、もう表で待っていた。
「アモーンこっちー」
ミカリンが笑顔で手を振っている。
アルコとブリッペもミカリンの声で
俺の方を向いた。
アモン2000をゆっくりと
店先に着け下りる。
「なんかキレイになってないか」
前回、教会に来た時に見かけただけだが
もっと苔むして年季を感じさせた
建物だったのだが
今、見る元雑貨屋は塀のレンガも
新品かと思える程、綺麗になっていた。
「うん。引っ越しに教会とドーマ政府が
手を貸してくれてね。」
ミカリンの話によると
すんごい人手の多さで
俺がいや俺が状態だったそうだ。
引っ越しの荷物を手にできなかった者が
ハウスクリーニングを徹底的に
やってくれたそうだ。
「はは、そいつは助かったな」
取り合えず中を確認しようとした時
道を歩いている人物に気が付いた。
誰だか分かった俺は大袈裟に驚く。
「うわぁー暗殺されるー助けてー!!」
道を歩いていたのはグレアだ。
下を向いてトボトボと歩いていたので
俺達に気が付いていなかったようだ。
俺の大声で顔を上げ
そして
泣き出してしゃがみ込んでしまった。
え?!
「最低だよ!主様」
ミカリンがそう吐き捨て
グレアの元に駆け寄って慰め始めた。
「今のは酷いと思います。」
アルコもそう言ってグレアの元に駆け寄る。
アルコが言うんじゃ
よっぽどだ。
「なんで暗殺なの?!」
ブリッペはポカーンだ。
この事件は知らないもんな。
とにかく
いくら人通りの少な目な教会前とは言え往来だ。
こんな所で女子を泣かせている図は
何かとよろしくない。
俺は平謝りしながら
全員で元雑貨屋の店内へと
半ば強引に非難した。