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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第百二十六話 魔界近況

パウルの奴が酒であんなんなるなんて

初めて見たぜ。」


宴会明け早朝

俺とヨハンは南に向けアモン2000を

走らせていた。


「ハンスは相変わらず凄かったな。」


二人共、号泣しながら俺を

左右から羽交い締めで絡んで来た。

正直、嫌だった。

最後は悪鬼羅刹と化したストレガに

電撃で吹っ飛ばされていた。


「あーこの辺から道荒れるぜ。」


「はい。マイケル」


ヨハンのアドバイスは完璧だった。

俺は言われるままアモン2000の

速度を落とすと、程なくして車体は

激しくバウンドし始める。


ヨハンの為に運転席後部に

急拵えの椅子付きキャリアを設置したが

突貫やっつけ付けなので

強度が適当だ。

荷物ともどもヨハンが飛んでいかないか

俺は内心冷や冷やだった。


宴会は明け方まで続き

例によって広場は死屍累々だ。


ヨハンもかなり酔っていたのだが

今は普通に見える。

本人曰く「毒が効きにくい」との事だ。

改造の際、あらゆる部分を強化したが

俺自身も初めての経験だったので

今一キチンと把握出来ていない。

寿命に関しても「ゴメン。全然分からない」

と、謝るしかなかったがヨハンは

「そんなこったろうと思った」

と笑って許してくれた。


「魔導院連中のストレガを

見る目がおかしく無かったか」


「今までの努力が無になっちまったな」


俺の言葉にそう答え爆笑するヨハン。


なんでも俺の言った世界初の魔法使い

このイメージ作りの為に

ストレガは冷酷で怪しい演技を

ずっと続けていたそうで

素のストレガを見た事の有る者は

例のシークレットパーティの面々ぐらいだそうだ。


馬車で1日の距離にある集落まで

昼前に到着出来た。

ここで小休止だ。

俺の予想ではもっと距離が稼げる予定だったのだが

これでは今日中にネルドに着けるか怪しい。

そうヨハンに言うと

ヨハンは軽く答えた。


「ああ、ここからは上りが続くからな」


人と荷物を搭載した馬車の歩みは

平地と比べ著しく劣る。

距離的にはもう半分以上来てるそうだ。


「ヨハンはアモン2000平気か

魔族の王は乗り物酔いが酷かったぞ」


「ああ、それも酒と一緒でな」


余程キツくない限り回復力が

上回るそうだ。


後で知ったのだが

この時、俺の影の中で

ダークは生れてはじめての乗り物酔いで

のたうち回っていたそうだ。

それでも気配を消している辺りは流石だ。


旅人用の店で昼飯を掻っ込むとヨハンは

急ぎ席を立った。


「ここの長に会議の結果知らせておくわ

兄貴は適当に遊んでてくれ。」


当然、魔族の兵団がここを利用する事に

なるのだろうから、予め言って置いた方が良い。

会議後にここに訪れた最速の俺達だ。

ヨハンが言って置くべきだろう。

なんだかんだ言ってやっぱり

ヨハンは真面目さんだ。


さて、遊ぶって言っても

何も無い集落だ。

何するか・・・。

忘れていた。

ダークとの積る話を

後回しにしたままだったな。


俺はアモン2000まで戻ると

影の中に向かって話しかけた。


「待たせて済まないな。今なら話が

少しできそうだ。」


と言うか俺の方でダークに聞きたい事が

山ほどあるのだ。


まずはモナと言う悪魔を知らないか聞いて見た。


「申し訳ないでござる。主だった戦闘員や要人の

情報は持っているでござるが、いち一般市民までは

把握していないでござるよ。」


まぁそうだろうな。

モナの話だと向こうの悪魔モナは

普通に暮らしている平民だ。

ただこちらの人モナ同様

悪魔モナも夢で人間ですなどと

言い出して、向こうでも悪い意味での

有名人の可能性がある。

諜報活動の際に耳に入るかもしれない

そんな希薄な可能性だった。


「そうか。いや、そのモナの話ではな」


モナの夢の説明と

最後の言葉「黒に染まる」そこまで説明した。


「変わった話でござるな。

そのような夢の噂も聞いたこと無いでござるが

黒に染まる・・・それはもしかしたら」


普通の調子でダークは説明してくれたが

内容は驚愕だった。


過去から今現在でも魔界は

節々から崩壊しているそうで

その崩壊に巻き込まれたのでは

無いかとのダークの推論だ。


「光すら失い消滅してしまうでござる。

故にそう表現するのは妥当でござるよ。」


言って見ればこの崩壊を食い止め

更には領域を拡大するための戦いが

降臨に代表される神との戦いだそうで。

悪魔の契約による人の魂の獲得も

結局はここに帰結するそうだ。


看板事業じゃないか


「巻き込まれた者は、やっぱり死ぬのか」


「二度と会えないと言う意味では

そうでござる。が、巻き込まれた者同士が

どこかで隔離されていると論じている学者も

いるでござるが、結局、巻き込まれてみないと

分からない。やっぱり死と替わり御座らん。」


モナは悪魔の夢を見ていない

消滅してしまったと考えるのが妥当だ。

こちら側の人生のお陰で生き残っている状態だ。


「魔界の状況は悪いのか?」


言ってから

治安とか景気とか

何がが抜けている事に気づいた。

これでは返事のしようが無い。


慌てて補足しようと思ったが

ダークはそれでも答えてくれた。


「かつてない程、悪いでござる。

崩壊も最悪の規模で進んでいる状況、

此度の降臨、これは勝利必須の

戦いだったでござる。」


悪魔側はゲートを大きく開け

最高位の魔王を出したのに対し

神側は下から二番目だ。


強いカードを出して勝ち星を稼ぐつもりが

変なトラップカードで落とされた格好だ。


ゲートの仕組みもダークは解説してくれた

今回のゲート開放に多大な消費を行い

収益がマイナスだ。

次回のゲートはかなりしょぼくなるそうだ。

対して神側は高位の神が出て来る余裕があるそうだ。


「しかし、神側は一体何のトラブルが

あったのか分からぬでござるが、

勝利を放棄した様子。

こちらが思っている程

神側も余裕があるわけではないのかも

知れないでござる。」


今度、ラハに聞いて見るか。

その時はダークには離れていてもらった方が

良いだろう。


「次のゲート開放はいつの予定なんだ。」


これはいずれかが開けると

同時に敵側も開いてしまうそうで

今現在、悪魔側に開ける気はないというか

開く余力が無いそうだ。


「ただ準備はしておかなければならないのが

厄介でござる。せめて神側の前情報が

分かれば良いのでござるが」


ここでピーンと来た。

魔界の情報が欲しい。

神側にしてみれば

これは当たり前の事だと思って

深く考えなかったが


そう言う事だ。


敵のゲート開放に対抗する為に神側も

敵の伏せてあるカードが知りたくて仕方が無いのだ。


特に今回は人間界における

悪魔の動きが不気味な程静かで

神側は想定外の展開に焦っているのだ。

ラハやウルまで地上に派遣してでも

手掛かりが欲しいのだ。


俺に頼むぐらいだ。

相当焦っている。


「あー準備しばらくしなくていいぞ。

今、神側は内部分裂で降臨どころじゃないから」


「喧嘩する程、余裕があるとは

羨ましい限りでござる。こちらの船は

底に大穴が開いて、沈まないように

皆ずぶ濡れでバケツリレーで水を出してる状態。

デッキの見晴らしの良い席の奪い合いなど

してる場合では無い火急の時にござる。」


いやー

その神側の船もマストが折れかかってんだよね。

ウルのうんざりした表情が思い出された。



「そうだ。あのさ」


「なんでござるか。改まって」


俺の様子が変わった事を察するダーク。

分かりやすいんだな俺は

これから聞こうとしている事は

これはそう言う公の事では無く

個人的な興味だ。


ただ、これはどうしても知りたい。


「ババァルは元気にしてるのか。」


「・・・。」


おいおい

止めてよ。

何、その間

からかってるだけだよね。


「今回の召喚、全力でアモン殿に

お仕えする所存でござるが

出来れば個人的に遂行したい

魔界での任務の続きがござる。

勿論、アモン殿の許可が頂ければの

話でござる。まだ何の手柄も上げていないが故

黙っていたでござるが」


「ババァルの話してんだけど」


ダークは真面目だが

話が回りくどい事が多い。


「姫の話にござるよ。魔界で拙者が

遂行していた任務は姫の捜索でござる。」


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