表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぞくデビ  作者: Tetra1031
124/524

第百二十三話 電気羊ってどんなん

日は傾きかけ

もうすぐ夕暮れ時だ。

御逢魔が時


垣根の垣根の


トワイライトな領域


その頃に俺は魔導院に

こっそりと忍び込んだ。

前に訪れた時に

二階の鍵のかかっていない窓を

覚えていたのだ。

半魔化の身体能力を駆使すれば

容易く侵入する事が出来た。


魔導院は、も抜けの空で

誰にも会う事無く目的の最上階まで

行く事が出来た。


しかし、ここで寄りによって

最後で人の気配を察知した。


扉を少しでも開ければ気づかれるだろう

俺はデビルアイで走査して

中を確認した。


室内には一人だけだ。

この身長と外観

そしてこの最上階の召喚の間


モナちゃんじゃないかな。


だとすれば当初の目的とは

また別の目的が達成できそうだ。


俺は堂々と扉を開けた。


扉を開く音に、こちらに振り返るモナ。

なんと魔族会議でのメイドの恰好のままだった。

似合いますよ。


「誰?」


室内の方が暗いので

逆光になるのだろう

モナからは俺はシルエットでしか

見えない様だ。


「ゼータだ。一人か」


「あ、はい」


何か元気が無い。

つか、俺が入り込んでも不審に

思わないのね。

ストレガの完全指揮下宣言は

もう徹底されたのか。


「宴会には行かないのか。

みんなもう移動しているようだが」


「片づけを・・・」


モナの話では

悪魔召喚の研究は中止になるとの事だ。

失敗による中止という訳ではでは無く

もう必要が無くなったような感じだったらしい。


この話を聞いて俺は思った。

恐らくパウルとストレガ辺りが

魔界から俺を呼べないかと

そこから始まった計画なのだろう。

純粋な悪魔で無いので呼べるハズは無いのだが

それでももしかしたら魔界に俺が

行ってしまったのでは無いか

その可能性を鑑みての事だろう。

こうして俺が戻った以上

もう続ける意味が無くなったのか。


お払い箱


自分がそうなると感じているのだろう

モナは動作が遅く覇気も全く感じられなかった。


間に合って良かった。


俺は強い口調で言った。


「片づけるな。命令だ」


「・・・え、でも」


「俺にそう言われたと言え」


「は・・・はい」


「メイド服なんだな」


「あ、はい。着替える時間が無くて」


「中々似合ってるぞ。襲いたいぐらいだ」


「え・・・でも私、女の子ですよ

それでもいいんですか」


まだ

誤解が解けて無いのか

俺は男色じゃない

ノーマルだ。

でもなんか必死に否定するのも

逆効果な気がするし

必死になる時点で何かな。

いいや、どうでも


「俺は何でも食うんだ」


「・・・そうなんですか」


「お前に用があった

二人きりの方が良かったので丁度いい

あのな・・・・って何してる?」


モナは涙ぐみながら

メイド服を脱ごうとしていた。


「服を脱いでいます。」


「脱ぐな。」


「・・・着たままの方が良いのですか」


「うん。いやや違う違う

脱がなくてイイ。」


「・・・どっちなんですか?」


「どっちとかじゃなくエッチな要件じゃないんだ。

だから脱ぐ必要は無い。」


「は・・・はい」


何か残念そうだな。

もしかしてチャンスを逃したのか

やっぱりって言って

お願いし直してみるか。


「あの、ではどの様なご用件でしょうか」


あー

なんかもうタイミングを逸した気がする。

畜生め

俺は大人しく、もう一つの目的について

話をする事にした。


俺は部屋の床中央に描かれた

召喚陣まで歩みを進めて

地面を指さして言った。


「この文字はどこで覚えた。」


この魔法陣に使用されている文字。

これが、こちらの世界の文字ではないのだ。

当然、俺の元の世界の文字でもない。

ただ、俺はこの文字を見た事があるのだ。

何か無理やり漢字だと思って読めそうな文字。

そう

ベネットが持っていた元祖「創業祭」

ナナイが持っていた「冠婚葬祭」

あれに使われていた文字と同じ文化圏だ。


バゼル騒ぎの時から気になっていたのだ。

製作者がモナと分かった今

この事は聞こうと思っていたのだ。

これが、この部屋のもう一つの目的だ。


回りくどいのはキライなのでズバリ言った。


「これは悪魔が使用する文字だ。」


「!?」


モナが驚く。

しかし、それはヤバいとか

しまったとかマイナス方向の驚きでは無く

プラス方向

サプライズな喜び系の驚き方だった。


モナは頬を紅潮させモジモジしながら

話し出した。


「お話しいたしますが、どうか

笑ったり呆れたりしないで欲しいのです。

信じがたい話ですが私は嘘だと思っていないんです」


俺はキッパリと言った。


「ああ、約束しよう。話せ」


モナは決意を固め言った。


「私、悪魔なんです。」


「うはははは。嘘だな!呆れたぞ。」


俺は最短約束破りの自己新記録を更新してしまった。

あからさまに泣きそうになるモナ。


「ゴメンゴメン。でも君の肉体は

正真正銘の人間だよ。」


俺は慌てて謝り、なだめた。

バゼル騒ぎの時に走査して分かっているのだ

モナは何ら特別不審なトコロの無い

人間の肉体なのだ。


「この体は人間なんですけど・・・。」


ここで気が付いた。

変身能力

既に三半機関は全員、獲得済みの能力だ。


俺達だけが特別


そう考える方が不自然ではないだろうか

他にも変身能力を持つ者が居ても

不思議でも何でも無いじゃないか。


モナも俺と同じ悪魔人間デビルマンなのか

・・・・女子だからレディーって言った方がいいのか。


しかし、それはそれで逆に疑問が出て来る。

既に自分という悪魔がいるのに、

何で召喚を研究してるの?


「そうか、変身能力か

どれ見せて見ろ」


同じタイミングで俺も悪魔騎士デモナイトになって

脅かすつもりが驚かされた状態にしてやる。

プークスクス。


「そんな事出来ません。」


ガッカリ。


「じゃどうして悪魔なの」


「はい。実は・・・」


そこからはポエムに近い話になった。

なんとモナは寝ている間に見る夢が

魔界で生活する悪魔で

向こうで悪魔モナが睡眠し

見る夢がこちらの現実世界だというのだ。


「物心つく頃から、こうだったので」


それが、当たり前でみんなも同じだと

思っていたそうだ。


「両親に話したら、エクソシスト呼ばれちゃって・・・。」


そら

呼ぶわな。


俺も悪魔文字と言う証拠が無ければ

このお年頃の女子だ。

不思議ちゃん系なのねと

生温かい目で見たかもしれない。


「それ、疲れないのか

人生一切休み無しじゃねぇか」


一度の人生タイムで

二人分をこなしている感じだ。


「・・・これが私には普通だったので」


なるほど。


「時間はどうなっているんだ?

12時間ずつ寝ているワケじゃないよな。」


普通の人は、三分の二起きて

三分の一寝ている。


そのからくりは

加速時間とでも言おうか

夢特有の時間間隔の無さといおうか

どちらの世界でも寝ている三分の一の間に

向こう側の起きている時間が

凝縮されているそうだ。


それで

私は悪魔と言ったワケだ。

寝ている間モナは悪魔なのだ。


「魔界の状況を教えてくれないか」


俺はそう頼んでみたが

その辺はさすが夢で

詳しくは思い出せないそうだ。

向こうも向こうで、

悪魔として起きている間は

こちらの世界はうろ覚えだそうだ。

起きた瞬間は覚えていても

活動している内に思い出せなくなっていく

あの夢の感覚だそうだ。


そんなうろ覚えを繋ぎとめる様に

起きざまに書き留めた知識が

両方の世界にあるそうで

この召喚陣も

その努力の積み重ねで出来たそうだ。


「こんなですからね。

すっかり周囲からは疎まれちゃって」


そこを助けてくれたのがマリーだそうだ。

そう言えば恩人って言っていたな。


まぁマリーにしてみれば

自分に出来ない事は出来る部下を

見つけてやらせ、それで自分の株を上げる作戦

その一環だったのだろうが

モナにとって救いになったのは事実だ。


「学園、そして魔導院に入れてからは

やっと人生を歩めている感じがするんです」


疎外感

人生の全てがそれに塗りつぶされたら

人はどうなってしまうのだろうか。


モナにとってガルド学園と魔導院が

初めての自分の居場所だったのだ。


「でも、それももうお終いです。

研究は中断に」


「だから、それは俺がさせないって」


「本当ですか。いいんですか」


すがるようにモナが言うが

ここは突き放す様に言う。


「俺が必要と感じている。

研究者は別にお前じゃなくてもイイんだぞ。

まぁ出来ればモナに続けて欲しいが」


情けとかじゃないんだよ。


「ややややります。やらせて下さい」


「任せた。しっかり頼むぞ」


「はいっ」


嬉しそうな笑顔だ。

やっぱり女子は笑顔がいいなぁ


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ