第百二十一話 いちにのさん
司教軍団は何故だか勝手に納得して
流石流石と何やら話していた。
しかし、そのサラブレッドとやらが
俺と同級生って事に何か意味でもあるのか
・・・・。
同窓会で会える。
違うな。
司教軍団が喜ぶ事じゃない。
「別に正々堂々と試験受ければイイじゃない
偉い人達の後ろ盾なんて要らないでしょ。」
ミカリンがそう言ってきた。
その通りなんだが
もし落ちたら恥ずかしいじゃないか
ただ、これは死んでも言えんな。
適当に何か言って置こう。
「ベレンのあの店にだって俺達は正々堂々と
入ったさ。でも水騒ぎになっちまった。」
「僕は平気だよ。」
「俺が嫌なんだよ。」
「・・・。」
お茶を一口飲んでから続けた。
「ああいう手合いは権力には従順でな
その副作用でああいったイジメも
してしまうワケだが、とにかく
強大な後ろ盾は有った方が
何かと事がスムーズに運ぶんだ。
これからなにかと忙しそうだしな。」
魔導院で魔法具の生産体制を
確率するまでは、普通の学生生活は
させてもらえそうになさそうだ。
「分かった。アモンの言う通りにするね」
ミカリンはそう言うと満足そうに
お茶を飲み始めた。
「私も制服を準備しなきゃですね」
ストレガが何か不気味な事を言っているが
ここは聞こえない振りだ。
「お前が行けるワケ無ぇだろ。
ネルドどうすんだ。」
ヨハンが冗談じゃ無いと言いたげに
そう答えた。
ストレガに抜けられると負担が
ヨハンに全部来るのか。
「ネルドなんてどうでもいいです。」
ストレガはあっさりとそう言った。
説得には苦労しそうだ。
俺はストレガを意識の外に出すと
司教軍団に改めて問うた。
「そうだ、教えて欲しい事もあるぞ。」
パウルが瞬間移動並みの速さで
俺の元に跪いた。
「何なりと」
「お・・・おう。
お前らの知っているバングの情報も共有しておきたい」
ハンスが一冊の分厚い本を持ってきた。
元の世界でいうバインダー形式で
ページの追加や削除が物理的に
出来る仕組みの本だった。
「ここに、全て。ちなみに国家機密です。」
素敵な笑顔で国家機密を
まるで読み終えたジャンプを友達に
回すかのようにさり気無く
俺に渡して来た。
「おぅ済まないな」
そこにはこの十数年間の全ての
バングの目撃や戦闘なのどの記録と
考察が記されていた。
が
これでは日記だ。
結局バングの正体については
推論すら成り立っていなかった。
「うーん。何も分かっていないのか・・・。」
残念そうに言う俺に
ハンスは自信満々で言い返して来た。
「いいえ。」
笑顔だ。
おお、書物にすれば、どうしても
流出という可能性が発生してしまう。
本当の秘密はマテリアルにしない方がイイのだ。
極一部だけが頭の中でその事実を持っている。
そのシークレットパーティとやらは
正に、その名に恥じない秘密結社なのか
「ゴクリ。」
俺は固唾を飲んで続くハンスの言葉を待った。
パウルもユーも止める様子は見られない。
俺の後ろの面々も聞き耳を立てている。
そしてハンスは笑顔で答えた。
「何も分からない。という事を分かっているのです。」
「マスター。こいつぶった斬っていいですか」
後ろで複数名のずっこける音の中から
ナリ君が背中の宝剣に手をまわして
飛び出して来た。
ああ
ナリ君はハンスにまだ慣れてないか。
彼はイノセントに、こういう事をする人だ。
その内慣れるから
「ナリ君。ハンスは我々を
からかっているのではない。
信じにくいかも知れないが
真面目に言っているんだ。」
俺は手でナリ君を制した。
「マスター。何でしたら我が彼を
哲学の世界に永久に封印しますよ。」
哲学も嫌がると思う。
「落ち着いてください。」
笑顔で言うハンス。
やめろ
煽ってるようにしか見えないから
「そう言えば2型とか4型とか言っていたな」
俺の質問にはパウルが答えてくれた。
番号の意味は発見された順番で
2型がハンプティ
4型がコタツだった。
「1と3は、俺も遭遇していないが」
その質問にもパウルが
該当するページを開きながら解説してくれた。
情報に関する記憶は超人並みだが
まさか、この分厚いファイル全部
覚えているか。
3型は逆関節の二脚
いわゆる鳥足だ。
それに一本の象の鼻のような腕を持つ
高速で歩行するタイプで
いずれも騎乗中か馬車が襲われたそうだ。
足を伸ばして直立した状態で測定していないので
正確な全長は分からないが
少し関節を曲げて立っている静止状態で
3m程度だそうだ。
「1型は?」
順番で数字が割り当てられたというのなら
一番最初に表れたバングということになる。
「これは、最初の報告しか遭遇例がないのですが」
パウルはそう前置きしてから語り出した。
大きさも形も完全に人型。
黒い身体にバングの仮面
他のバングと異なるのは
仮面に赤い模様がある事と
魔法と思しき術を行使した
との事だった。
「その後に遭遇していないので
それが本当にバングだったのか
人のイタズラだったのか判別の
しようが無いのです」
そう語るパウルに俺は断言した。
「イタズラじゃない。バングだ」
パウルの説明で俺は思い出した。
確かにマイザー言っていた。
「ベアーマンが同型と遭遇、戦闘を
経験している。赤い模様と魔法と
確かにそう言っていた。」
赤い模様の奴は特に強かったとも