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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第百十九話 ドーマ会議

まともな会議を始める事が出来たのは

開始から小一時間程経過してからだ。


何故かと言うと

教会側入場の際に俺を発見したパウルが

護衛の制止を振り切って

俺の足元に跪き、大声で泣き出した。

何か言ってるのだが

泣きの度合いが酷すぎて

内容が全く聞き取れない。


入場の際、俺の左隣を陣取っていた

ストレガはその様子に囁いた。


「無様ですね」


いや

お前の時よりは、まだ言葉に近い分

パウルのがマシなんだが

これは言うまい。


とにかく会場は呆気に取られる者

驚いて悲鳴を上げる者

一時騒然となってしまった。


ハンスともう一人に羽交い締めにされ

撤収されてしまい。

その後、ハンスの魔法なのか

なんらかの薬物なのか

分からないが冷静さを取り戻してから

改めてスタートになった。


「前もって言っておいたのにコレだもんな」


ヨハンは腹を抱えて笑っていた。

おい、秘術通信は内緒じゃないのか


縦に長い大きなテーブル

その片側にそれぞれ

魔族側と教会側に分かれて

会議開始だ。


パウルのせいで

すっかり冷めたスープから配膳されてきた。


俺はオブザーバーなので

魔族側の列には加わらず

ちょっと離れた別の小さいテーブルだ。

丁度四人掛けだったので

ストレガ、ヨハン、ミカリンも一緒に座った。


ミカリンは興味津々でストレガを

何度もチラ見して観察していた。


ストレガも警戒と言う意味で

興味津々なようで

ミカリンをそれとなく注視していた。


「こっちじゃないんですか。」


教会側、ナリ君正面の司教。

先程ハンスと一緒にパウルを撤収した司教だ。

その男がヨハンに向かってそう言った。


この声は間違いない

この男がユークリッドだ。


クセッ毛で長目の

頭髪には白い物が目立ち始めた中年だが

瞳の力は子供のようだ。


「ああ、俺はゼータサイドだ。

なんなら司教は解任でいいぜ」


即答するヨハン。

冗談で無い所が怖い。


ところがユーは驚く様子も無く答えた。


「分かりました。あ、解任は死ぬまでダメです」


そのやり取りの中

ナリ君がお尻に椅子を当てたまま

落ちない様に手で押さえ

俺達のテーブルに移動してきた。


「マスター。仲間外れはヒドいです。」


仲間

つうか民を捨てるんじゃない。


俺が突っ込む前にルークス以下数名に

強制的に連れ戻された。


会議は教会側主導で進んだ。


まず王の帰還をお祝いする祝辞

それに続いて定期報告の後で

支援物資などの増加などが説明された。


「ドーマ側から何か希望はございますか」


そう振られたのだが

ルークスはゆっくりと答えた。


「特にはございませんな。要望があるのは

そちら側ではございませんかな。」


この言葉にユークリッドの眉毛が

少し動く、そのタイミングで

ハンスが席から立ち上がって

なんと俺に向かって大声で

話しかけて来た。


「もしかして、もう全部ご存じですか。」


俺が回りくどい事を好まないのを

ハンスは良く知っている。

相変わらずの良い笑顔だ。

顔の皺が時間の経過を感じさせた。


「俺んちで話しなんかしてるからだ。

まぁお陰で悪鬼羅刹の如く

襲い掛かって来たストレガに

対応出来たわけだが、助かったぞ。」


パウルはニヤりして頷く

ユーは微妙な表情だ。


「おおおお襲い掛かってなんていません」


顔を真っ赤にしてストレガが抗議してきた。

そんな生体反応まで取得しているとは

完璧だな。


「タックルも攻撃だぜ」


ヨハンが食いながら呟く。


「腰から下じゃないと効果薄いのにな」


俺も食事を再開しながら答えた。


「もう」


ストレガも食事を再開した。

セリフと表情は相違があり

嬉しそうに見えた。


ハンスは俺の返事を聞くと

ルークスにキッパリ言い切った。


「バルバリスの為に出兵してください」


「分かりました。ただ幾つか条件がございます」


ルークスも回りくどいのは苦手って言ってたっけな

あっさり承諾すると、俺と打ち合わせた条件を

淡々と並べて行った。


兵は手前の訓練場で雪上戦の修練

これから開発に着手する兵器の完成


この二つの条件クリア後だ。


「ドーマ防衛の最低限度の兵を残し

残りは全て出兵いたします。」


不敵に言い切ったルークスに

ユークリッドが質問してきた。


「開発・・・する兵器とは」


固まるルークスはギギギと

音がしそうな動作で俺を見た。


「ンぐ、し・・・使用者の魔力を

エッジに付加する武器や防具だ。」


「ですぞ」


「完成までの日程は」


ユークリッドの質問に俺を見るルークス。


「設計図は魔導院にもうある。数を揃えるのに

掛かる日数は別に製作担当に

後で試算してもらう。あ、ゲアがいいな

後、彼が希望する鍛冶職人も優先して

ドーマに配属して欲しい。」


「魔導院はゼータ・アモンの完全指揮下に入ります」


俺の言葉にさらっと

とんでもない事を追加したストレガ。


「ですぞ」


「ベレンにも供給、或いは生産の許可は

頂けますか。そしてその技術は二国間での

機密を希望したいのですが」


ユークリッドの質問に俺を見るルークス。


「こっちの希望はバングを討滅だけだ

それ以外は教会の好きにしていいが

いずれ拡散するぞ」


「ですぞ」


「拡散の仕方が問題なのです。

それを把握しておきたい

そして出来ればコントロール下に置きたいのです。」


簡単に反政府勢力に流れては困るわな。

ここでハンスが突っ込んで来た。


「バルバリスの兵は魔法を使えない者ばかりですが

そういった者でも使用は可能なのですか」


ハンスの質問に俺を見るルークス。


「兄貴。もうテーブル向こうに持ってこうぜ」

「私はお兄様の大声、好きですよ」

「最初に懸念したままの流れになってるね」


「あ、うるさかった?ゴメンね。

そうしようか」


俺達はテーブルを引っ越し業者の様に

持つとカニ歩きで移動し始めた。


慌てた執事やメイド達が

椅子を持って後を追って来た。


「マスター。こちらにどうぞ」


ナリ君が長テーブルの

お誕生日席の位置を促した。


促されるまま、そこにテーブルを持っていく

なんか人生ゲームの駒に刺す

水色かピンクの棒みたいな図だ。


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