第十二話 バングの噂
湖に面した場所に群生している
麦っぽい植物は
まぁまぁ小麦粉の代用になった。
昼飯はそれを材料にした
固目のパンもどきと
白身魚のフライ
それと例の果実だ。
ミカリンの機嫌もすっかり直った。
良かった良かった
・・・・
何か違う様な気がするが
まぁいいか
軽く昼寝をすると
また庭に出た。
「さぁさぁ午後も頑張っちゃうよー」
そう言ってミカリンはレプリバーンを
器用に回転させる。
まるで手首が何回転もするロボットの
関節で出来ているかの様だ。
何ソレ
かっこいい
「今の回し方教えて」
俺は思わずミカリンに教えを請うた。
ミカリンは嬉しそうになって
俺に親切丁寧に動かし方を
教えてくれた。
ハッキリ言って
これを覚えても強くはならないのだが
何と言うかハッタリの効果はでかい
カッコイイのだ。
足運びはダメだが
剣の取り扱い自体は
流石のミカリンだった。
試しに足を止めての打ち合いは
3手で俺が詰んだ。
まぁ吊り橋の上でも無い限り
足を止めた打ち合いなど
実戦では考えにくいが
練習として、出来る事から始めるのは
有りだ。
ミカリンは調子が出て来た様だ。
気分による実力の変動。
勢いに乗ると
手が付けられなくなるタイプだ。
「よーし、足も使っちゃおう」
どうやってその気にさせるか
考えていた事だ。
自分からその気になってくれた。
これは楽だ。
しかし
足捌きは
気分ではどうにもならなかった。
「痛っーーーい」
また派手に転んだな。
「よしよし見せて見ろ」
こんな調子で
俺は僧侶のレベルが先に上がってしまった。
基本LV>クラスLV>ジョブLV
どうやらこんな仕組みになっている。
色々やっていくと
常に基本LVは上がるので
頭打ちになる事はなさそうだ。
スキルは武器に依存するもの以外は
無職でも発動するがジョブの恩恵が
受けられずに効果は落ちる。
武器を装備してジョブを固定すると
スキルの効果は上がるが
逆に使用出来なくなるスキルも多い。
もしかしたら最終的にはカンスト無職が
最強になるかも知れないが
勝手に切り替わるので意識しなくても
良さそうだ。
何日かは
訓練の日々が続いた。
「だから跳ぶんじゃねーつーの」
足捌きを覚え始めると
そこからは手の付けられない進化を
ミカリンは見せた。
三次元的な天使の剣術を
平面の二次元的な剣術に
あっという間に変換し
更にジャンプを織り交ぜての
疑似的三次元の剣術を再現してきた。
今も目の前で消えたかと思ったら
後頭部を打たれた。
ネコかお前は
「へへん」
得意気だ。
回復呪文は最近は自分用が主になっていた。
「精が出ますね」
そう声を掛けて庭に入って来る獣人がいた。
いつぞやのベアーマンリーダーだ。
助かった。
訓練中止の正当な理由だ。
「今日はここまでにしよう」
「うん、あっ飲み物とか持って来るね」
ミカリンはそう言って
丸太小屋の中に戻って行く
最近は余裕が出来たせいか
俺のどっちが奴隷発言を気にしているのか
良く気が付く様になった。
「よく来てくれたな。」
俺に促されて
前回置いた岩に座るベアーマンリーダー
背中には前回とは違う袋を背負っていた。
「役に立つのではと思いまして
よろしければお納めください。」
ベアーマンリーダーはその袋を
テーブルの上に置いた。
俺は中身を確認した。
思わずデカい声を出してしまう。
「鉄じゃないか!」
袋の中身は剣や鎧など
ベレンの冒険者協会でも
良く見かけたスタンダードなタイプだ。
デザインは共通だが素材で値段が変わる。
これは鉄製で冒険者でもHクラスぐらいに
ならないと装備していない。
製鉄技術が普及していないこの世界では
鉄は圧倒的強力な武器になるのだ。
「いいのか、こんな高いモノ」
俺の反応を見たベアーマンリーダーは
嬉しそうに言った。
「お気になさらず、どうせ我々には
使えないサイズです。」
そこへ、お盆に飲み物つまみなどを
山盛りにしたミカリンがやって来た。
頂いた装備を見せると「大した装備じゃないね」
などと言いかけたので慌てて口を塞いだ。
天界の基準で話すんじゃあない。
その後は雑談になった。
貴重な情報収集だ。
「なんと。旅立たれるか」
「すぐってワケじゃないがね」
俺はエルフの里経由でバロード
そしてベレンに向かう構想を話した。
この辺りの魔物が余裕で倒せる様に
レベルアップしてからなので
時期はそのうちとだけ言って置いた。
ベアーマンリーダーは
顎に手を当て考えていた。
やがて重要な情報を教えてくれた。
岩山から南側に沿って
ベレン近くまでの辺りは
今は新種の魔物でかなり危険だそうだ。
湖、エルフの里辺りはパトロール範囲なので
一応は安全との事だが
「森にも一度、はぐれが出ましてね・・・」
新種の魔物の詳細を話してくれたが
これがなんだか分からない。
仮面の様な顔を持つ黒い体のモノ
モノと言ったのは人型に限らないそうだ。
仮面も同一でなく色々な形があり
白く骨っぽく見えたそうだ。
仮面に赤い模様が書いてある奴は
取り分け強かったそうだ。
「生き物なのか?」
「切断面からは黒い煙が出ました。
私には生き物とは思えません」
その後も話を聞き
纏めるとこんな感じだ。
言語:不明
食事:不明
大きさ:まちまち
行動:知性のあるモノを襲撃してくる。
仮面を破壊されると崩れて消える。
魔法攻撃を行うモノも確認されたそうだ。
「人族が付けた呼称では【バング】と言うそうです。」




