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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第百十四話 アモン会議

副院長を始め

魔導院の面々と話す前に

俺達三人だけで打ち合わせがしたかった。


俺のこの意見には二人とも賛成で

むしろ魔導院なんかどうでもいいと

まで言っていたが

むしろお前ら二人は役職上話せにゃ

ならんのじゃないのか。


「打って付けの部屋があります。」


明るくハキハキした

弾む様な声

それでいて上品な響きがある

ストレガの声

同じ萌え声でも

色々あるもんだ。

蜂蜜の中で、なめくじが溺れ

のたうち回っているような

ブリッペとは明らかに格が違う。


ただ、そんなルンルンなストレガは

珍しいのか研究員達は

皆、寝起きのように目をコスっていた。


後で彼等から普段のストレガの

態度をリサーチしておこう。


「そうだな。あそこなら完璧だぜ」


ヨハンもストレガの提案に同意だ。

これは恐らくクフィールの言っていた

裏院長との秘密の会議に使用されている

部屋なのだろう。

ヨハンも仮面を付けて来た事があるに違いない。


お茶が運ばれてくるのを

部屋の前で待っていると

ドタバタが発生したようだ。


「副長!!マリオが逃げたっす!!」


「捕えなさい!彼の尻の穴を

何としても確保するのよ」


するな

そんなもん


面白そうなので放置だ。

頑張れよマリオ。

茸を食ったりしてパワーアップして

なんとか逃げろ。


「マリオがどうかしたの?」


何にも知らないストレガは

キョトンとした調子で聞く

お茶を運んできたマリーは

「何でもありません」と笑い

俺に笑顔でウィンクした。


その顔は中々チャーミングだった。

カワイイじゃないか

27歳にしては


初見もそうだったら

俺のマリーに対する扱いは

全然違ったのに

残念だったな。


お茶と菓子の乗ったワゴンを

マリーから受け取ると

ストレガは何やら呪文を唱える。

その呪文に合わせ開錠する音が聞こえた。

魔法による施錠だ。

これは物理のみの盗賊には

手出しが出来ない代物だ。


思えばストレガは戦闘系以外の

魔法ばかり習得していた気がする。


招かれて部屋に入ると

再びストレガは別の呪文で施錠した。


「これで音も光も完全に遮断されましたわ」


俺はストレガのセリフを聞いていなかった。

部屋の様相に思考を奪われ

完全に硬直してしまったのだ。


一言で言うと

その部屋は

冒険者ゼータ・アモン博物館だ。


ナリ君が監修したかのような

カッコイイポーズの等身大俺フィギュア


壁には写実派の巨匠の手による油絵な俺


柱とカーテンのある豪華なベッドにも

二等身パロディ俺のぬいぐるみ


ガラスで密閉された容器の中に

使用感のある男性下着


などなど


絶句している俺にストレガは

照れた様に言って来た。


「あんまりジロジロ見ては

恥ずかしいです。お兄様」


「まぁ女子の部屋は男には珍しいんだよ」


ストレガの問いかけに

固まったまま答えられない俺に替わって

ヨハンが気を利かせてそう返事した。


いや

コレ性別関係ないだろ

何コレ

魔導院内のストレガの私室って事か

あんな厳重な施錠が

守ってる秘密がコレなの?

つか

こんな部屋でお前ら

魔導院やバルバリスの運命を

左右するような会議をしてんのか


「ちょっと環境に適応する時間をくれ」


俺はそう言って

何とか落ち着こうと頑張った。


中央のテーブルに

それぞれ腰掛ける。

その位置関係はベレンの自宅

そのリビングでもお馴染みの配列に

自然となった。


「申し訳ありません。お兄様」


さぁ話そうか

と言うタイミング。

その初撃はストレガの全力謝罪だった。

内容は魔法の普及がお粗末な状態な事だ。


「兄貴。怒る前に俺の話も聞いてくれ

ストレガは悪く無ぇんだ。教会側がな

まぁその魔法の普及に制限を掛けるような

制度をだな。」


「・・・ヨハンお兄様。」


「最高指導者っつても独裁とは

いかなくてな。まぁその

とある司教が魔法を危険視しててな」


俺はお茶を飲みながら

二人を制して言った。


「二人とも勘違いしているようだな。

ストレガの成果は120点だ。

何の不満もないぞ。」


キョトンとするヨハン。

ストレガは食い下がって来た。


「いいえ。お兄様は魔法の普及を

お望みでした。現状お世辞にも

普及したとは」


「言える。もう魔法使いを

100%詐欺師と言う奴はいない。」


俺はストレガの方をしっかりと見つめて

ゆっくりと話した。


「そりゃもっと普及しているに

越した事ないが、現状でも合格点だ。

ああ言ったのは合格点をゴールにすると

届かなくなる時がある。もっと上を

目指しての失敗は合格点に着地出来る

場合が多いんだ。」


2位が駄目なのでは無い。

2位とは1位を目指し

争った結果の最後の敗者だ。

最初から2位でいいやなどと

思っている者はベスト16にだって

残れやしない。

外国のスパイ議員には

その辺が分からないかも知れんが


「で・・・でもバングが

お兄様の言う通り出来ていれば」


泣くのを必死に堪えているストレガ。


「最悪、俺が戻るまで持てばイイ

と思っていた。そして俺は戻った。

みんな無事だ。上出来だよ。」


さっきあんなに泣いたのに

また涙を溢し始めるストレガ

ただ先程の涙とは

色が違うようだ。


「ストレガ。よくやったな

流石は自慢の妹だ。」


本当はバングなんて

予期していなかった。

魔法の普及も

ゲーム的に絶対あった方がイイと

そう思っていただけだ。

しかし、なんかみんな

イイ感じに勘違いをしているようなので

ここは、何食わぬ顔で

それに乗っておこう。


俺のセリフを聞いたストレガは

椅子から転げ落ちそうになった。


慌てて俺とヨハンで

ストレガを受け止めた。


「・・・寝てるぜ」


スケルトンは寝ない。

しかし、ストレガはもう

ただのスケルトンでは無く

他に類をみない新個体と

判断した方が正しいだろう。

涙もそうだ。

人の世界に存在する為に

人の擬態で始めた生体模写だが

きっかけはともかく

真似では無く

本当に人のそれを獲得

いや

取り戻したと言うべきだろう。


「ああ、そこの素敵なベッドに

少し寝かしてやろう。」


ヨハンと二人でストレガを

ベッドにそっと横にしてやる。

涙もキレイに拭いておいた。


「ただ、教会の横やりが

普及を妨げたのは本当なんだ」


席に戻るとヨハンは

話の続きを始めた。


「その件なんだがユークリッドは

すんげぇ後悔しているぞ」


「!?兄貴、ユー知ってるのか」


ヨハンは前回、俺がユークリッドに

遭遇出来ていない事情を知っている。


「知っているつーか盗み聞きだな

家に帰ってみればナニあれ

司教軍団が俺んちで何してんの」


ヨハンは視線を俺から外し

きょどりながら答えた。


「いやホラ教会関係者にも

内緒の話とかあるしその

決して出歩くのが面倒とかじゃなくて

その、みんなもストレガの料理が

食べたいって言ってたしホラ

なんかいつの間にか家でやるのが

定番化していってその」


そう言う事か。


ストレガとヨハンが不在でも

そこでやるのが定番化している実態だ。


俺は盗み聞きの内容をヨハンに話した。


「じゃ昼には戻らねぇといけねぇのか」


「ん?ヨハンは参加しないのか」


最高指導者なのにって

ああ

不在って話だったな

・・・・

なんで居るんだ。


「ああ俺はネルドで戦闘中だからな」


「なんでココに来たんだ」


「討ち漏らした4型が3体いて

そいつを追って来たんだが

見失っちまってな」


弟の不始末が王の偉業になった格好か


「そいつら、もう倒したぞ」


「はっ!流石兄貴だハハハ」


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