第百十一話 任豚
「ただ、それ本来の目的じゃないだろ
何しに来たんだ。」
目的があってお目通りを願い
拒否られて首を持ってこいと要求された。
首持ってこいは解除されたが
元々の目的があったはずだ。
「ほぼほぼ同じっす。副長が・・・。」
あの悪魔召喚失敗の後
クフィールから俺の名が
本名だった事を聞き
失礼な態度を後悔。
更には召喚失敗だけでも大目玉なのに
その始末を部外者につけてもらったという
魔導院・副院長人生最大級の赤恥だそうだ。
ああ
無様だな。
「ゼータさんに言われなくても
自決する勢いです。」
モナが本気で心配して、そう言った。
違う
そんなタマじゃないな。
俺は自信満々で答えてやった。
「その心配は要らん。
そういう思考回路じゃないぞマリーは」
「うーん。でもヒドク思い詰めてるっす」
「それは別の意味でヤバいな
こんな所で油売ってる場合じゃないぞ」
心配するクフィールに俺が助言するが
言葉が足りない、追加説明を
モナは求めて来た。
「別の・・・って具体的には・・・。」
「うーん。とにかく死んで詫びるより
失敗を帳消しにして尚余る功績を
立てたがるタイプだ。
既に失敗しているので、どんなリスクも
恐れない状態になっているので
危ない橋を踊りながら渡るぞ。
具体的には知らんが、魔導院で
悪魔召喚を超える課題はるのか?」
逆転ホームランを狙って
手前の失敗を些細な事にする気だ。
「悪魔召喚が一番デカいっすねー
裏の院長も表の院長も共通した
目的でしたから」
そうか、一番が悪魔召喚じゃ
逆転の目が無いな
それよりも気になる単語が
はぁー聞かないきゃイケないよね。
「表の院長はストレガ、裏は誰だ」
「名前、分からないっす。
本当は極秘なんで他言無用でお願いするっす。
たまーに魔導院にやって来ては
院長と二人きりで会議して
その後、研究課題が追加される事が
しょっちゅうあるんで
研究員達の間で、あれは裏の院長って
噂が広がったっす。」
「顔見ればわかるのか」
俺の質問にはモナが答えた。
「そそれが、ぃいつも奇妙な仮面を
つけているので、常に同じ人なのかも
分からないのです。」
教会関係者だな。
さっきの定例報告会でも
魔導院の設立は教会が決定したが
信徒の手前、堂々と親密な関係を
公表する事は出来ないだろう。
ストレガと交渉出来るとなると
パウルあたりじゃないのかな。
「そうか。それじゃ誰だか
さっぱり分からないな。
謎だな。うーむ」
「「・・・。」」
何か変な表情の二人だ。
やっぱり俺は演技が下手なのか。
「お待たせ」
そこへミカリンがお茶を
運んで来てティータイムだ。
ナイスだ。
変な空気が一瞬でキレイになった。
魔導院の二人はお茶と菓子に
満面の笑みだ。
・・・・。
お前ら魔導院では
俺にお茶も出さなかったよね。
「で、話ってなんだったの」
興味津々でミカリンが聞いて来た。
ちょっと頭来ているので
嫌がらせを言ってやろう。
「ああ、魔導院で俺に失礼があってだな
体で払うから、それで許してくれって事にだな」
ビクッと震える二人
イイ反応ですよ。
おじさんそういうの大好きです。
魔導院から許しを請う・・・・
これは魔導院に俺が関与する
これ以上無いキカッケじゃないか
こんな好条件スタートは無いぞ。
先程、宿題にした件
答えが部屋で待っていた恰好だ。
魔法使い用の杖すら売ってない現状で
付加魔法武具なんて遠い未来かと
思っていたが、魔導院を動員すれば
早いんじゃないか
バング相手に武器の強弱は
あまり関係ない
魔力さえ篭っていれば
それこそ焼き鳥の串でも
容易に刺さるだろう。
ダークエルフ・プルの
へっぴり風魔法ですら
弾き返される事無く
弱いなりにバングを削ったのだ。
屈強の魔族槍兵の武器に
常に魔力がまとわり着いていれば
十分、勝負になるハズだ。
俺は魔導院での資料や研究を思い出す。
即時応用可能な技術が一つあった。
俺は脇腹を小突かれて我に返る。
「痛っってぇ!!」
真っ赤な顔で反論するミカリン。
小突いた張本人だ。
「そんな痛いハズないよ。
それより、いいの?」
何が
ミカリンは正面を指さす。
俺はミカリンの腕から指先を
なぞるように視線を移動させ
正面に向いた。
そこには涙を溢しながら
服を脱いでいるクフィールと
モナちゃんがいた。
モナちゃん。止めな冗談だよ。
クフィールは仕舞えよ。
「何してんの?」
俺のセリフにキッと
俺を睨みつけ答えるクフィール。
「くぅ私達が欲しいって事っすよね」
何言ってんだ。
「お前らじゃない。マリオが欲しい」
しまった
このタイミングで言ったら
「マリオが欲しい・・・。」
顔面蒼白になって復唱するモナ。
「そっち系だったすか・・・。」
なぜか嬉しそうなクフィール。
そっちってドコよ。
「マリオって誰」
ミカリンはなんだか
不機嫌そうだ。
「違う。そうじゃない
欲しいのはマリオ」
あれ
言い直せてなくないコレ
あーなんか俺も焦ってる
意味の分からない事言ったな。
「欲しいのはマリオ・・・。」
「かーっ熱いっすねー」
「そんなに欲しいのマリオ」
いや
常に魔力を含んだ状態で
自在に制御してたでしょマリオの義手って
エンチャントをちゃんとしなくても
アレを武器に応用できれば
あーもう
説明が面倒くさいなぁ
俺は叫んだ。
「マリオー早く来てくれーー!!」




