第百十話 侵入者
会議が終了し皆席を立つそのタイミングで
俺はルークスを捕まえ迎賓館から
人間街への引っ越しを願い出た。
予想外に狼狽えるルークス。
「昨日は特別ですぞ。今後は
キチンと食事を準備させまする」
言葉も若干おかしくなって笑える。
会議でもその醜態が見たかった。
「いやメシが無かった事が原因じゃないんだ」
俺はミカリンが敬謙な信者で
感知能力に長けているが故
魔族の中心部では負荷が大きい事と
嘘をついた。
天使そのものとは
さすがに言えない。
「左様でございますか。こちらとしては
いつまでもココに居て欲しいのですが」
「人間街が一番ココに近くて
ミカリンに負荷が少ない場所なんだ」
既に妥協案という事を
暗にほのめかしておく
「相応しい邸宅を今から建造すると
なりますと完成はおそらく」
「いや、普通でイイ」
「そうは参りません。メイドや
衛兵なども滞在させますので」
これは仕方が無いか
監視の意味もあるのだろう。
俺はそれまでの仮宿で構わないからと
適当に頼んで
その場から逃げた。
「ゴメンね。僕のせいで」
殊勝なミカリンだ。
珍しい、良く観察しておこう。
「いや迎賓館に居座り続けるのは変だよ」
殊勝ミカリンがあまりにカワイイので
俺はミカリンの頭をなでなでしてやる。
嫌がる様子は無かった。
部屋の前でそのほっこり感が消えた。
ミカリンが緊張したのだ。
「部屋の中・・・誰か居るよ」
何!?
俺は半魔化して室内を走査した。
部屋の中央、床に二名座っている。
アルコとブリッペでは無い。
メイドなら床に座って
じっとしているのはおかしい。
かと言って闇討ちとかでもない
ドアを開ければ直ぐ目につく
折角、忍び込んだのだ
部屋の中でも隠れるはずだ。
「なんだ・・・思い当たらんぞ
だが危険は無いようだ。
入って見てみよう」
脳内アラームが鳴らないのだ。
ミカリンは止めようとしたが
俺は扉を開けてしまう。
灯りが点いていないので暗がりだ。
走査した通り、二名並んで床に座っている。
扉が開いた事に反応し
二人とも肩がビクっと揺れた。
「どちらさんですかー。」
俺は扉横のスイッチを入れた。
これを操作する事で
壁に塗られた光苔を塞ぐ
シャッターの開閉ができるのだ。
部屋はたちまち明るくなり
問題の人物が照らし出された。
「なんだ。モナちゃんと・・・・
F21-Aじゃないか」
「誰っすか。クフィールっすよ」
同じなんだが、元の世界の
空軍機ネタが通じるハズもないか。
「良く入れたな」
「それが・・・許可されなかったんで
忍び込んだんすよ。」
だから
良く忍び込めたな、と言う意味だったんだが
まぁいいか
「はは話を聞いて・・・ください。」
緊張感バリバリのモナちゃんだ。
追い出されやしないかと
怯えている様だ。
「いいよ。床じゃなくて椅子に座りな」
「いえ、ここでいいっす!」
強い眼光で訴えるクフィール。
うーんさっきから噛み合わんな。
「お前じゃないモナちゃんに言ったんだ」
「えっ自分だけ床っすか」
「床ですらないわ。お前は出ていけ」
「なんでモナだけ特別なんすか」
言わせる気か
いってやろうじゃあないか
「えこひいきだ」
「うわー自信満々に言い切るっすねー
普通、隠そうとするモンっすよ」
「俺は隠すのは苦手なんだ」
ウダウダ言ってると
股間の宝具も露見するぞ。
しかとみよって
「アモン。じゃお茶は三つ?」
顔見知りと知って緊張感の消え失せた
ミカリンがそう尋ねて来た。
「いや、四つにしようか」
流石に可愛そうだよね。
「自分だけ二杯飲むってオチっすね」
そうしてやろうか
ホントに噛み合わねぇな
「・・・バラクも椅子に座んな」
「誰っすか?クフィールっすよ」
だから同じなんだが
あー進まねぇ
「お忍びじゃメイドに見られるの
良く無いね。僕が行ってくるよ。」
「おぅ済まないな。」
よく分からないが
なんだか機嫌の良いミカリンだ。
俺は素直にお願いした。
魔導院の二人は
まだ床から動こうとしないので
俺に歯向うと、どうなるかまだ分ってないのか
と脅して、やっと椅子に座ってもらった。
「お願いっすマリーさんを許して下さいっす」
「私には恩人なんです。どうか謝罪のチャンスを」
俺が椅子に座るや否や二人はテーブルに
両手を着いて頭を下げた。
あーこれがしたいから床が良かったのね。
ジャパーニーズドゲザは椅子に座って
テーブルだと何段階か必死さが薄れる。
ゲアに泣きついた魔導院の人って
こいつらか
確か・・・
俺が追い返せと会議前にそう言った。
それでも帰るワケにもいかず
俺がそう言った以上、魔族側も
入れるワケにもいかず
忍び込んで直談判って運びになったのか。
なぁんだ。
「許すって・・・何をだ」
「首持ってこいって聞いたっす」
「あの人、極端なので本当に自決してしまいます」
あー言ったな。
「じゃ許す」
「いいんすか!?」
御願いして叶って
何が不満なんだこいつは
「嫌なのか?」
「いややや願ったり叶ったりっす
つか、なんでさっきは首持ってこいって
激怒してた割に今はあっさりなんすか」
そんな事も分からんのか
「さっきは機嫌が悪く、今はイイからだ。」
「ヤバいっす副長と同じっす」
「極端ですよ・・・ね」
おい二人とも
ヒソヒソ話は
相手に聞こえない様に言え。




