第十一話 脱レベル1への道
一通り話をしてベアーマン達は
パトロールに戻って行った。
笑顔で手を振り見送りながら
俺は横で手をブンブン振っている
ミカリンに聞いた。
「お前知ってたか?」
「何を?」
「時間跳躍」
ベアーマン達からの聞き込みで
今いるこの世界は
恐らく最終決戦の日から
10数年が経過しているのだ。
思えばキャスタリアが盾を拾って
来た時に気が付けたハズだ
あれだけ苔むしていたのだ。
何年か経っているのだ。
「ううん、僕だって初めてなんだから」
思えばミカリンは
天界から出張してきて
暴れただけで
現地人に知り合いなど
殆ど居ないであろう。
時間の経過は
気にする様な事では無いのかも知れない。
だが俺は違う
色々すったもんだして
知り合いなども結構居るのだ。
「何か問題?」
俺の質問の意図をミカリンなりに
考えたのかミカリンは俺に
そう聞いて来た。
「うーん、いや先に知っていたかっただけだ」
思えば今の俺は
こんなチンチクリンだ。
13将・序列1位の魔神でも
女神の懐刀でも
G級を倒す程の実力冒険者でも無い
中身の人格がそうだと言っても
今の俺には証明する手段も無い
仮に証明出来たとしても
この最底辺のチンチクリンの実力しか
今の俺には無いのだ。
何の役にも立たない
つか
もう役は無いだろ。
降臨は終了したのだ。
むしろ今回の目的
ハーレム作りに、かつての現地人どもが
協力してくれるとも思えないし
・・・・
頼んでもスゲェがっかりさせるだけだ。
旧交を温めるのは
太郎と小梅だけでイイな。
生まれ変わった
子供ゼータ・アモンとして
新規開拓だ。
どうせLV1だしな。
「ミカリン。明日からはLV上げをするぞ」
「LV上げ・・・・って何?」
起きてから説明すると言い
その日は就寝した。
そして翌朝。
超ガッカリする事態になった。
「痛ーい。また皮膚がめくれたー」
「見してみろ」
俺は何度目かの回復呪文を
ミカリンに掛けてやる。
四大天使で専用武器が剣
LV1で人間状態だとしても
剣のスキルは保有しているハズだ。
ミカリンは最強の剣士になれるハズ。
現にこの俺も
LV1の力の範囲内で
再現可能な魔王流剣術は
再現出来たのだ。
木を削り出し
重心なども細かく調整し
互いの得意な得物のレプリカ
練習用の木刀を作った。
名前も掘った。
俺のは感謝祭のレプリカ「祈年祭」
ミカリンのはレイバーンのレプリカ「Repliburn」だ。
「痛いよー」
「泣くな。呪文が効いてもう治まっただろ」
で、この有様だ。
打ち合う以前の問題が発生してしまった。
ミカリンの剣術には足捌きが無かったのだ。
思えば地上の移動でも
こいつは浮遊して移動していた。
剣術も360度方向からの
飛行を前提にした技ばかりで
二足歩行の移動自体
ロクにしたことが無いのだった。
稽古以前の問題だ。
ミカリンは何もない所でも転ぶ
いたよね
こんな女子
「おい奴隷」
「はい主様」
「リスタートから今までで」
「はい」
「お前、何か役に立ったか」
俺が服を縫い、木を伐り出し
家や家具を作り、採取して
メシ作って、風呂も準備して
何もかもやった。
それはミカリンもやったが
あくまで手伝いの範囲だ。
天使のミカリンは上記の経験が
一切無いのでやり方を知らないのだ。
んで
つい最近までは
何か新しいもの食っちゃあゲーゲーブリブリ
しょちゅう熱出して寝込んでいた。
俺は上記をすんごい早口で言って
最後に言った。
「これじゃ、どっちが奴隷だか分かんないだろ」
期待していた戦力でも
この有様だ。
流石の俺も我慢の限界だぞ
この役立たず
ふと見ると
ミカリンは正座で震えていた。
・・・・また泣かしてしまった。
俺は慌ててなだめ
これからがんばろうと励まし
昼飯はミカリンのお気に入りの果実を
採って来てやると言い。
ようやく機嫌を取り戻す事に成功する。
ふー
さて果実を採りにいくか。




