第百五話 定例報告会
誰か居る。
留守、無人であればボイラーは
止めてあるはずなのだ。
俺は皆にその事を告げ
大声を出さないようくぎを刺すと
慎重にリビングの床に開けた
穴の場所まで進んだ。
「なんでリビングに穴が開いてるの」
ヒソヒソ声でミカリンが聞いて来る。
俺もヒソヒソ声で答えた。
「ストレガのスカートの中が
覗けるかなって思って」
間髪入れずブリッペが批判する。
「最低ーっ」
「わざわざ覗かなくても言えば
見せてくれるんじゃないの」
ストレガの人物像を俺の話から
想像したミカリンはそう言った。
確かにそうかも知れない。
が、ダメだ。
「俺はどんなに汚れても構わないが
ストレガにそんな、はしたない事は
させられない」
カッコ良くキメ顔で言った。
三人とも不思議な表情だ。
女子には分かりにくい男のロマンだ。
「見えてはいけないモノが
見えてしまった。これがイイんだ。
自分からおっぴろげるなんて
興覚めまさこだ。」
「「「分からない」」」
「フッ分かってもらえなくても
構わないさ。なぁナリ君」
俺は遠い目で
ここにいないナリ君に語り掛けた。
君ならきっと分かってくれるはずさーぁー
「で、見えた?」
ミカリンが更に続ける。
「それがだな」
床が厚すぎてミリ単位の穴だと
視野が五度も無い
仮にストライクでその上を
秘密の花園が通過しても
一瞬過ぎて何が何だか分からない。
かといって視野を広げるのに
デカイ穴なんて言語道断
魚眼レンズ接地も反射で光って
目立ちすぎてしまうのだ。
「仕方が無いから狭い視野のまま
心の視野は大きく、がんばったんだが
一度ヨハンの奴がお茶溢しやがって
眼球に熱湯が直撃してさぁ」
大声を出さない様に
ヒーヒー言いながら
息を吸い込む系の爆笑という
技術点の高い笑いを行使する三人娘。
「熱かったね」
パンパンを俺を叩くブリッペ
バレー部などに良く居る
ボディタッチを気軽にしてくる奴だ。
結構痛い。
これでこっちが触ると
途端にセクハラ扱いだ。
解せぬ。
とにかく男子諸君は勘違いしない様に
真に解せぬが
こちらからしてはいけない。
笑いが収まるまで待ってから
例の覗き穴を見つけ出し
覗きでも使用した脚立も
そのままだったので
俺は今度は目で無く耳を当てた
物音が聞こえる。
誰か居るのだ。
「遅くなりました!!」
扉の開く音と同時に
突然ハンスみたいな声だ。
ビクッってなってしまって
危うく転落しそうになった。
「いえ、私も今しがた到着
したばかりですよぉ」
知らない声だ。
「では早速ですが始めましょう
シークレットパーティ第784回
定例報告会を」
この鼻で喋る様な声はパウルだな。
つか784回って、いつから始まったのか
知らないが定例報告会綿密すぎるだろ。
俺はここでパーティチャットで
指示を飛ばした
【司教だ。全員人間状態で潜伏】
ミカリンの天使としてのオーラを
感じ取る可能性が高い。
ミカリンは素早く人化し
後光照明は停止した。
辺りは天井のアチコチに
開けられた穴から差し込む
スポットライトの様な光に変わった。
「うぇ1か所じゃないんだ」
ヒソヒソ声でブリッペが嫌そうな声出した。
今は構っている場合では無い。
俺は盗聴に集中した。
「ネルドの方は抜けて大丈夫なのですか」
知らない声がハンスらしき人物に問うた。
「長くは無理ですが、学園の用事も
貯まってしまっていますので
急ぎを片付けたら、また戻ります。」
「私もパウルも魔法が使えれば
良かったのですがね。ハンスにばかり
負担が掛かってしまっていますねぇ
心苦しく感じていますよ」
「ユーと同じだ」
知らない声に続いてパウルが
そう言った。
知らない声の主はユーと言うらしい
ハンス、パウルは確定だな。
14年も経っているが
声は左程変わらない
人で最も老いにくいモノかも知れない。
「いえいえ、その替わり戦闘以外の
事は逆に頼りっぱなしです。
お互い様ですよ」
ニッコリ笑うハンスの顔が
思い浮かぶ。
「さて、あのお方ゼータ・アモンの名を
騙る偽物の件ですが・・・。」
パウルがそう切り出すと
ユーが遮った。
「また?これで何人目ですか」
「105人目になりますね」
即答するパウル。
情報に関するずば抜けた記憶力は
健在のようだな。
「春は特に増えますよね」
おいハンス
人をアッパラパーと同列に置くな。
「・・・季節はともかく
今回もいつも通りの処置で」
「今回は特例になります」
今度はパウルがユーを遮った。
「まさか本物とか言わないですよね」
「で、あればどれほど喜ばしいか」
ユーの返しに珍しく
感情的、それも残念そうに
返事をしたパウル。
おお
パウルー
お前は俺の事を好いていてくれたのか
よし
この世界を滅ぼす事になっても
貴様は助けてしんぜよう。
「まず、最初の報告はブンドンにて
冒険者のクロード、ボーシス、
そしてギルバートからです。」
ギルバート
ブンドンの支部長兼村長していた人だ。
「土系統の、それもかなり強力な
魔法の使い手です。
ハグレの2型と4型を
それぞれ別の機会に
土の魔法で葬っているのを
ボージスが確認しています。」
2型、4型
ハンプティとコタツの
どっちかづつ
とにかくバングの事だろう。
「ハンス。土に攻撃魔法なんて
ありましたか?」
ここでユーが疑問を放つ。
「学園及び魔導院でも確認されていません。
元々使い手も少なく、魔法も整地に特化した
魔法が多いので皆、バリエアに
出払っている状態です。」
バリエア再建のブルドーザーになっているのか
「もし、その土系攻撃魔法を
習得出来るならこちらの戦力は?」
続くユーの質問に残念そうに答えるハンス。
「習得が可能だったとしても
土系卒業生のなかで戦闘に対応出来る
者は少ないと思います。」
「ふむ、そもそも土ってそんなに
強いんですか?なんかイメージが
湧きませんね」
おいユーとやら
貴様のケツの穴に
スパイクぶち込んでやろうか
「最大で10mを超える
石の棘で串刺しにしたそうですよ」
パウルが淡々と報告を読んだ。
声の調子と
紙をめくる音でそう感じた。
その調子で続ける。
「クロードなどは殺されかけたと」
ゴメン、クロード
あの頃の俺は自分でも
自分の力がよく分かって無かった。
つか
その前の剣の稽古であれだけ差があった。
手加減なんて考えるハズないだろ。
「クロード・・・たしか冒険者でも
最高峰のランクでしたよねぇ
その彼を葬る事が出来る者ですか
これは確かに特例・・・危険ですねぇ」
「はい、危険です」
「そうですね。危険だと思います」
みんな
僕、悪いアモンじゃないよ。




