第百四話 地下道にて
「何ソレぇ自宅から伸びる地下道って
何してんの?バッカみたーい」
やたらとウケるブリッペ。
そのバカみたいな地下設備で
前回葬られた人が、お前なんだが。
うーん、説明が面倒くさい放置しよう。
「自宅に続いているだけ?
武器とか隠してないの」
「無いな。」
巨大なバッテリーがあるが
14年も経過している
もう機能しないだろう
それに電気があっても
それを必要とする機器が無い。
スマホをバッグに入れたつもりが
似たサイズのモバイルバッテリーだった
やっだー
そんな状態に近い。
更に今回は雷撃を習得しているので
もっと不要だ。
あの家に長期滞在するなら
家電を再現して便利な生活が
出来たかもだ。
前回、俺はそんな気持ちで
作っていた気がする。
最終決戦までのヨハンとストレガとの
日常が思い出された。
「モビルスーツが隠してある
ぐらいの事言って下さいよ!」
そんな俺の回想を打ち消す様に
ミカリンが大声を出した。
「カツかお前は」
記憶力が良いんだな
俺のボケを覚えて
随所で再現してくるミカリン。
「でモビルスーツって何」
ミカリンはモビルスーツが
何なのか当然知らない。
「ロマンだ。今度作ってみるか」
「何でも作ってしまうのですね
マスターは」
基本、有る物で何とかしてしまう文化の
ベアーマンにしてみれば
人の技は神秘らしい。
アルコはそう感心した。
「さて、出口はどっち?」
ミカリンがキョロキョロしながら
そう言った。
そうだ逃亡中だったな。
「それがだな。無い」
前回の俺は最強カンスト固定レベル
何でもあり番長だった。
四大天使相手にする以外
逃亡なんて頭の片隅にも
想像していない。
返り討ちでイイだろ
この思考で
この地下通路も前出の
四大天使・愛と水のブリ対策用の
バッテリー罠、その為だけに掘った。
穴掘り作業が面白かったついでに
ベレン市内のあちこちまで
伸びてはいるのだが
逆にそこから侵入されるのを警戒して
出入口は作るのを止めたのだ。
実際、作業しようものなら
地上の人に見つかる。
「おさわがせしてすいません。
地下道勝手に作ってます。」などと
愛想笑いで誤魔化せるとも思えなかった。
いざとなれば悪魔光線一発で
穴は開くしな。
そんなワケで出入口は自宅のみだ。
俺はそう説明した。
取り合えず追っ手を躱して一息つける。
後は考えていない。
今、ゆっくり考える事が出来る。
それでいいと思ったのだ。
考え無しと責められるかと思ったが
想定外の反応になった。
「ベレンの御屋敷に行きたいですマスター」
「僕も見てみたいよ」
「ブリッペ横になりたーい。フカフカの
ソファとかあるぅ?」
内壁内一等地の家だ。
今日見て回った家屋と比べ
御屋敷と表現してイイ立派さだ。
ちょっと自慢したい気持ちもあって
連れて行きたい。
「14年も経ってるから人手に
渡っているかも知れない。
誰か居たら、こっそりと外に出るからな」
それでイイと皆喜んで賛成した。
どうせ出入口はそこだけだ
途中でぶち抜くにしても
上に何があるのか分からない。
家までいけば庭など
ぶち抜いてもイイ場所が分かる。
外にはこれで出られるだろう。
問題は内壁から出るにも
検閲があるのだが
うーん、荷馬車の下にでも
潜り込むか。
「やっぱり僕が先頭?」
唯一の光源であるミカリンが
そう言った。
「落とし穴とか無いよね
まぁ落とし穴なら今の僕
落ちないけど」
天使状態のミカリンは
常に滞空している。
歩かないのだ。
「罠は一切作っていない
自分しか通らないつもりで
いたからな」
基本、ストレガか俺しか
通行しないつもりで作った。
他に入り口が無い事も含め
他者を貶める罠は作っていない。
逆に問題もあった。
ストレガも俺も暗視スキルがあり
呼吸も不要だったため
灯りも通風孔も無い
これだけの長さなので
そうそう酸欠にはならないが
灯りの為に火を焚くと
マズいかも知れなかった。
なのでミカリンの天使の後光照明は
ありがたい
・・・。
酸素消費してないよね。
「基本一本道だ。」
歩き出す俺達。
ミカリン以外は歩きなので
足音がこだまする。
それが珍しく
楽しいのか
暗さも相まって
女子連中のテンションが上がっていく。
そういえば女の子って
お化け屋敷好きだよね。
しかし、そのテンションも最初だけで
どんどん下がっていった。
地下通路というのは
当たり前だが
風景が変化しない
いくら歩いても進んだ気にならないのだ。
「つまんなーい」
ブリッペがボヤキ始めた。
横になりたいと訴えていた位だ。
疲れもあるのだろう。
もしかしたらアルコの名付の
恩恵はこの体力かもしれない。
鍛えているとはいえ
このチンチクリンな体だ。
もっと疲労した方が自然な気がするが
比較対象になるような人間が
身の回りにいない。
そう言う意味でも
早く学園に入学して
どれだけ自分が普通か確認したい。
俺達は小休止を挟み
ストレージから菓子だの茶だの出すと
ブリッペは狂喜し
一気に俺に対する好感度が上昇したようだ。
そういえば、女がグズる時は
甘い物で黙らせろと
自称プレイボーイのじいちゃんが
言っていたなぁ。
小休止を終え
再び歩き出すと直ぐに
家の真下付近まで来た。
実は大した距離では無いのだが
歩くペースも遅くなるせいで
長く感じるものだ。
地上の道と違い建造物を迂回する
必要がないので目的地まで
一直線の放射状に地下道は出来ているのだ。
「何コレ?この丸い柱
あったかーい」
ブリッペがそう言ったので
俺はすかさず制した。
「火傷するから触るなよ」
地下に設置したボイラーの一部だ。
「何なんですか。このパイプ」
アルコが目御丸くして
ボイラー設備を凝視していった。
家でいつでもお湯が出る仕組みと
ボイラーの簡単な説明をした。
「ほ本当に、何でも作れるのですね」
驚くアルコ。
うん、これが本来の反応だよな。
ん?
ボイラーが稼働している だと?!