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ぞくデビ  作者: Tetra1031
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第百三話 スペランカーなら死んでいる

俺達は脱兎のごとく逃亡した。


「やりすぎだよ。」


そう言うミカリンの顔は

言葉とは裏腹に笑顔だ。


「水を掛け返しただけだ。」


感覚的には学校のプール分位だろうか

水を掛け返した。


店自体には被害は出ていない。

店の前にガーデンを利用した

屋外ビュッフェ形式だ。

イス及びテーブルと他の客様には

多大な被害が出ているが

皆、流れてしまった。


テロ鎮圧にも放水車が使われる。

ニュースなどで、そんな映像を見て

効果があるのかと疑問だったが

やってみて分かった。


絶大だ。


怪我の危険を最小限にして

相手の行動を阻止出来る。

結構な水圧で浴びせられると

何も出来ずに無様な醜態を

晒すだけになる。

実銃と違って撃つ方も

無慈悲な悪魔になり切れるので

容赦なく狙える。

警告の必要も無い。


初めは生活にしか使い道が無いと

思っていたウォーターシュートだが

なんだかんだで一番多用しているかも知れない。


土と並んで地味なので

アニメなどでは出番の少ない技だが

土も水も実際には

使い勝手の非常に良い技だ。


火や雷は延焼や感電など

意図しない相手への被害がデカい。

絵的にはカッコイイが

使用出来るシュチュエーションは

戦場などで無いと出番が無いだろう。


「スゴイね。今の魔法

ブリッペにも教えてーっ」


「前に教えたろ」


お前の脳みそは鳥なのか。


「あんなに出ないよーっ」


やはり若いこの肉体は

液体がいっぱい出てしまうのだろうか

オリジナル俺の方は

もう粉しか出ないと言っていた。

怖い

40代になるのが真剣に怖い。


「囲まれますね」


人化を止め獣人化し

突破口をブルドーザーの様に

切り開いてくれていたアルコが

耳をヒクつかせ、そう言った。


「ああ、衛兵の警笛だな」


以前も思っていたが

ベレンの治安の良さはそのままだ。


冒険者、信者、商人を始め

様々な職種、地域、人種

これらが有象無象に集う国だ。

入り口は緩く、入りやすいが

中では厳しい、衛兵が数多く居て

一度何か起これば即捕縛されてしまう。


逃げる際に観光馬車の人に

硬貨の入った袋を渡し

「ここまでありがとう。」とだけ言ったが

うまく逃れられているといいな。


まぁ実際に犯行には関係は無いが

犯人との関連性で尋問とか

それは申し訳ない。

何とかうまく逃げてくれ。


「アルコ!こっちだ」


俺は前回の土地勘を駆使して

とある場所を目指して移動した。


大きな建物や樹木などは

14年経っても位置が変わっていない。

その事から推測して

俺はとある裏路地に逃げ込む

警笛は確実に俺達を追跡している事を

告げ聞きつけた周囲の仲間が

直ぐに包囲網も形勢してしまう。

そんな状態で狭い路地は

反って不利だ。


「アモン。これじゃ捕まっちゃうんじゃない?」


ミカリンもそう言って来た。


「地上を逃げるならな」


俺はとある地点を推測する為に

建物の位置を確認し

周囲を見回しながらそう言った。


「飛ぶの?うーんブリッペは

見捨てるとしてアルコ抱えて飛べるかなぁ」


地上の言葉から空中を推測したミカリンは

実際に飛行する事を想定し始めた。


「ヒドイ!ブリッペを見捨てないで」


ハァハァ息を切らしながらも

懇願するブリッペ

レベル1の人間で状態がバカだ。

戦闘訓練を普段から積んでいる俺達と

一緒に走って来ただけでも

褒めてイイ。


「上でも無い・・・ここだ」


とある地点を見つけ出した俺は

皆に俺の周囲に集まる様言った。


「向きはこっちね。降りた先に

横穴があるから5秒以内に飛び込めよ」


俺は方向を指さし

デスラーホールを唱える。

深さを指定する為に

高速圧縮言語で無い通常の呪文だ。

ちょい時間が掛かる。


「居たぞ!!」


路地の先に衛兵の人影が見え

そう叫んだのが聞こえた。

警笛の吹き方も種類があるようだ。

違う音程で音が響く

今のは「発見」の合図なんだろうな

本当に良く訓練されているわベレン衛兵。


こちらに走って来る衛兵が見え

俺達はデスラーホールに落ちた。


大きな通りは石畳なので出来ないが

こうした路地裏はまだ土がむき出しの

未舗装が多い、助かった。


俺はブリッペをお姫様抱っこで

抱え込んで落下した。

アルコとミカリンは馴れているので

問題ないだろうがブリッペには危険だろう

不可抗力

不可抗力でおっぱいも掴んでやった。


うお

デカい


「ギャアアアアアア」


落下すると分かって無かったのか

おっぱいを掴まれてなのか

ブリッペは、すんごい悲鳴だ。


半魔化の脚力は

この程度の落差をものともしない

抱えたブリッペにダメージが行かない様に

気を使いながら落下する。


このデスラーホールの落下の感触は独特だ。

足元の地面との距離はそのままなので

瞬間的に無重力になり、周囲の地面が

持ち上がった様な錯覚を覚える。


横穴が見えた。


良かった、これで何も無かったら

すんげぇ赤恥だ。


声を掛けるまでも無く

ミカリンとアルコは迷いなしの

連続動作で横穴に飛び込む

ブリッペを保護していた俺は

ワンテンポ遅れて後に続いた。


「4・・・3・・・」


余裕だ。

ミカリンはカウントダウンをしていた。


そしてカウントダウン終了と同時に

真の暗闇が訪れた。


「マスター。私でも見えません」


アルコは夜目が効く

星の明かり程度でも

周囲の確認が出来るのだ。

しかし、ここは地下道だ。

天然の光は一切存在しない。


逃げる事だけを考えていたので

真っ暗な事を忘れていた。

俺は悪魔化すれば

ミカリンは天使化すれば

暗闇など関係無く視力を確保できるせいも

あって、注意が抜けた。


まぁ二人同時で変化すると

ダメージでそれどころで無くなるのだが。


天使化だ。

あれ照明になるだろ


俺は人化してからミカリンに

天使化する様に言った。


「ほい。」


暗闇に浮かび上がる神々しい

天使姿のミカリン。


俺達が今居る地下道が浮かび上がる。


「ここは・・・」


皆、周囲を見回していた。


積もった埃で足跡が形成された。

長い期間誰もここを通っていないようだ。


「昔、俺が掘った。ベレンの自宅から

伸びている地下道だ。」



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