第百一話 フレンドは石で買えません
「いや、ゲーム自体はちゃんと作ってあったんだ
テストを隠れ蓑に利用された格好だ。」
だよな。
ゲーム会社だもんな
粒子加速器なんて開発で使わないよな。
「まぁ国が関わってる事は間違いないだろうが
インターフェイスや適合者探しに
丁度良かったんじゃないのかな。」
怖いのでオリジナル俺も太郎も
あんまりその辺は探りを入れていないそうだ。
「何しろ殆ど機密だ。俺とカミさん以外に
適合者がいたのかすら分からない。」
「それにしても、危なく無いのか
前回だって一か月も寝たきりって」
よくやるわ。
「俺が断れば、カミさんと娘に
白羽の矢が立ってしまう。」
大事なモノを守りたい。
そう言う事か。
「14年もありながらLV1なのは」
「INが出来たのがここ数か月に
なってからなんだ。それまでは
何度やっても再現出来なかった。」
「数か月はあったワケだよな」
何していたのか聞いて
鳥肌が立った。
いきなり海の上にINして溺れたり
氷点下の雪山で凍死したり
火山の火口の上だったり
何時間歩いてもペンペン草
一本も生えていない荒野だったり
「出現場所を固定しようにも
どの座標がベレンなのか
分からないからな
何度死に戻ったか」
おいおい
地獄の責め苦と大差ないぞ
そんな酷い目に遭っていたのか。
可哀想だなオリジナル俺。
「前回ようやくベレン近くの
知っている場所にIN出来てな」
「そうかレベル上げどころじゃ
なかったんだな」
何度も頷くオリジナル俺。
「そんなんで今は6時間で
強制的に戻る仕様になってる」
「無事なら自分で戻るタイミングを
操作出来た方が色々と有利じゃないのか」
「知っているだろう
メニューが開かないんだ」
あ、それは端折ったな。
「あ、今回は開くぞ。
半人化状態ならレベルも名前も
頭上に出る。」
「なんだって」
やたらと驚くオリジナル俺。
どうもオリジナル俺は前回での
俺が感じた感触、
リアルな現実世界
これを確信したままだ。
だからゲートとか鵜呑みにしているのだろう。
俺はその辺を説明した。
「なので今回はかなりゲームっぽいぞ」
「うーーん」
腕を組んで考え込んでしまう
オリジナル俺。
「もうひとつ。ゲームっぽさでな」
俺はバングの説明をした
モザイク状の外縁や垂直同期のズレなどだ。
「それは・・・確かにゲームっぽいな」
「つか、そっちで派遣してる
修正パッチだと予想していたんだが」
修正パッチ
ゲームのバグ、不具合を修正する
後発のプログラム。
それがゲーム内ではあのような姿に
具現化していると俺は思っていたのだ。
「いや、そんなモノは送り込んでいない。
まぁスイスのゲートから何をしてるのかは
こっちでも把握していないんだが
多分、スイスでも同じ人の意識以外成功例が無い」
これ以上は意味が無いか
これがゲームであれ別世界であれ
コピーの俺にはこの世界が全てだ。
どっちだろうが、やる事に変わりは無い。
「と、そろそろ時間切れが怖いな」
「今後も情報交換を希望する」
「願っても無い。だが、どうやって会う
次にいつ来れるかも未確定だ。」
「フレンドになればINの情報が
ってああメニュー開かないから
承認出来ないか」
「ダメ元だ。取り合えず送ってくれ
向こうで承認が出来るかも知れない」
俺はオリジナル俺をパーティに入れ
フレンド申請を送っておいた。
「自分が自分にフレンド申請か
なぁこれ複垢扱いでBAN判定とか
そんなオチは無いだろうな。」
「・・・・大丈夫だ」
なぜ間が空いた。
「ああ、そうだコピー俺。実はな」
オリジナル俺はそう言って
光の粒子になって消えた。
「実は何だーーー!」
多分、何でもない
俺の良くやるイタズラだ。
「支払い、大丈夫だよな」
俺はそーっと
冒険者協会を後にした。