第十話 ベアーマンパトロール
「取り合えず風呂から上がるので
家の中で待っていて欲しかったが
うーん・・・人数が多すぎだな」
俺がそう言うとベアーマンは
代表者と2名程が残り
他はパトロールへと戻って行った。
体を拭いて服を着ている最中
ミカリンは小さい声で聞いて来た。
「知り合いなの?」
「個別は知らんが、部族としてな
前回、エルフ族との交渉の
架け橋をだな」
「栄光の高橋か」
架け橋な
着替え終わり
丸太小屋に戻るが
ベアーマンの姿は無い
表から声がした。
うっかりだ
彼等の体躯では丸太小屋は
小さすぎて入れない。
適当に飲み物と食い物を
見繕って庭に出ると
3人は適当な大きさの岩に
腰掛けて待っていた。
すげぇな
その辺の岩なんだろうが
アレを運べる腕力って
今の俺には1mmも動かせないだろう
話を聞いて見ると
事の始まりは
ラハの行ったエルフの里襲撃からだった。
あの後、エルフの生き残りは
別の場所へ移動したが
大幅に戦力を失い
里は事実上壊滅で
ナワバリを維持できない状態だった。
これを知ったベアーマンの部族は
意見が分かれた。
縄張りを奪う好機と見る者と
エルフの替わりに縄張りを防衛する者だ。
後者の「森の妖精の怒りに触れるぞ」と言う
意見が採用され
前者は岩山の本来の里に残り
後者が森に出てきて
エルフの森を守っているそうだ。
今日の様に不定期で森の様子を
パトロールしているとの事だ。
縄張りを守る報酬は
森の採取で頂いているそうだ。
偉いな。
あの交渉の時もそんな提案も
したのだが、あの時はエルフ側に
十分な戦力があったから
不可侵になったんだっけ
まぁ
その時の交渉の下地が
今回に生きている様なので
あの時の努力も無駄じゃ無かったって事だ。
「プラプリのやつは元気にしてるのか?」
俺はエルフの生き残りで
懇意にしていた人物について
聞いた。
ベアーマンのリーダーは
驚いた表情
多分、そう言う表情だと思う
今一彼等の表情は良く分からない。
に、なって答えた。
「里長ともお知り合いなのですね」
里長
ラハの襲撃で生き残れなかった。
プラプリが引き継いだのか
まぁ適任だよな
つか
他に居ないか
「そうか里長になったのか」
新エルフの里にも行きたいな
プリプラはどんな状態になっているやら
カルエルはまだ居るのかな。
「・・・ご存じなかったという事は
古いお知り合いですか
それにしてはお若いようだが・・・」
ん
ベアーマンリーダーが混乱している。
ここで嫌な予感がした。
彼等の装備
ベアーマンの装備はもっと下等だった。
しかし、今彼等が身に着けている装備は
人間のと差の無いレベルにまで
加工がされていた。
紐を結んで固定では無く
三本の爪でも脱着が出来る様に
加工化された留め金などで連結されているのだ。
体格の差から言って人間用のは
流用出来ない。
奪った装備では無く
最初からベアーマン成人用サイズで
作られているのだ。
それを作れる職人と設備を用意しなければ
出来ない事だ。
短期間ではあり得ない事だ。
死に戻りの際の今まで
感じた事の無い感覚
単純な転移では無かった事は
間違い無い。
そして今の肉体年齢。
俺は確認をしてみる事にした。
「なぁリーダー」
「はい」
「あの歌はいつ覚えたんだ」
俺がそう聞くと
ベアーマンリーダーは喜びの表情・・・
だよな
を、浮かべ答えた。
「よくぞ、聞いてくださいました。
私は何と直に森の妖精様から
伝授された数少ない者の一人です」
え
こんな奴居なかったぞ。
大人は族長に任せて
俺が直接教えたのは
殆どが子供相手だったはずだ。
横から他のベアーマンが
口を出してきた。
「うらやましいです。私は
その頃産まれていませんでしたので」




