気が付いたら化石……?
化石だ……
いや、化石なのは見れば分かる。
ちょっと遠いけど、何故か設置されてる姿見みたいなのに写ってるから、分かる。知ってる。
……問題は、そこじゃないんだよ。
自分の手を動かす。
→目の前にある化石の手が動く。
頭を起こして俯かせる。
→肋骨と骨の足が見える。
……うわぁお。
綺麗な骨。
足踏みをする。
→骨の足が動く。
……うん。
ここまで来たら分かるでしょう?
私、石祗美加。二十歳、化石大好きな女大生。
気づいたら、身体が恐竜の化石になってました!☆
……いやいやいや。
まって。意味わかんない。
……うん。まあ、確かにね、
意識失って異世界転移とか、異世界転生とか。よく聞くけどさ。
最近、普通に記憶残っての転生系も、よく見かけるけどさ。
……これ、化石だよ?
転生じゃないよ?
既にご臨終だよ?
転生しました!
じゃなくて、
転生したら死んでました☆だよ??
…いや、うん。
化石大好きだし、そりゃ1度ぐらいは、化石に囲まれて暮らしたいとは願ったけどね?
自分の身体が化石とか予想外。
まあ、なんかここ、どうやら博物館みたいだし、
私の真正面でっかい玄関だけど、
さっき後ろ向いた時、他にも化石いっぱいあるの視線の先にチラっと見えたけどね?
ここに化石がいても、なんら不思議ではないけどね?
……そもそも、なんで視線があるの?
目というか、眼が無いじゃん
何で見てるの?この体
内臓も筋肉無いのに動くし……
あ、因みに、ポーズ的には、
片脚あげて、前かがみです。
獲物を追いかけてるようなポーズ。
……バランス悪すぎない??
片脚ってだけで、よく転ばないなー?って思うのに、
頭支えてるらしい支柱がなかったら、絶対にぶっ倒れてるよ?これ。
よくこんなボーズで展示したな……
……ってか、この体、アレじゃない?
恐竜知名度ナンバーワンの、ティラノ様じゃない?
ティラノサウルス様じゃない??
……いや、うん。好きよ。
ティラノ様、もちろん好きよ。愛してる。
実際に居たら旦那にしたい雄恐竜ナンバーワンだもの。
あくまで旦那ね!!
なんで私がティラノ様なの??!
結婚出来なi……じゃ無かったわ。
私 、 女 の 子 っ !
化石だヒャッハー☆
ってしてて、「女捨ててる」とか言われ続けてたけど、
一応!女性!!
そこまで女捨てた覚えはない!!
……ああ、もう……、なんで、こんなんなってるんだろ……?
意識を失う前を思い出してみる……?
……えっと。
そう。たしか、念願の化石掘りに行けて……
大物化石発見して、文字通りヒャッハー☆って叫びながら発掘してて……
途中で休憩ってなって、発掘中の穴から出ようとして……
……足を、滑らせたんだっけか?
うーん、そこから意識途切れてて全くわかんない……
もしかして、
よくある入れ替わり系の、
「交差点でごっつんこ☆」
を、あの時発掘してた化石とやっちゃったのかな?
……あれ、ちょっと待って。
あのね、この体、生きてない。生きてないのよ。
……入れ替わり系だった場合、私の体死んで無い??
……ファッ??
え、いや、まってまって。本当に待って。
今博物館に、あの時掘ってた化石があるってことはさ、
かなりの時間が経ってるわけでしょ??
もし入れ替わった時に私の体死んでたら……詰んでない?
私の体既に、灰になってハイさよなら
ってなってない??
嘘でしょ……私、死ぬまでこの体??
……違う、この体、死んでる。
既に、死んでる。
……えっ?もしかして、私死ねもしない?一生化石??
これぞ本物の干物女??
(干物になる身が無いけど!)
……いや、うん。化石は大好きだよ?
でも、一生化石として生きる覚悟なんて無いよ??
そもそもそんな予想しないよ??
普通の女性らしく、結婚願望ぐらいあったのよ??これでも。
……えぇぇ……ちょっとまってよぉ……
本当、私、何かした?
前世でなんか悪いことした??
人間やめるとしてもさ、
せめて肉くらいついててくれない??
骨だけって……金具で丁寧に組み合わせられた骨だけって……
しかも人間じゃないし……
動かしても、骨がバラバラにならないのすっごく不思議なんだけど……
いや、そもそもなんで動けるの??
筋肉無いじゃん。
……ってか、なんで、化石として組み合わせられて、
展示されるようになるまで、
意識戻らなかったの??
足元と台座の間に微かに埃付いてるし……
これ明らかに展示してから日数経ってるよね?
いや、目を覚ませよ!私!!
どんだけ熟睡してるんだよ!!!
冬眠かよっっ!!!!!
……はぁ……
……いや、まあ、考えても分からないよねぇ……
うーん……
元の体に戻れるかわからないし、少なくとも暫くは、この体で生活しなきゃいけないし……
とりあえず、この先どうするか考えるか……。
……となるとその前に、
この身体について、幾つか確認しておく必要があるよね。
まず、【食事が必要かどうか】。
もし必要だった場合、どうにかして食べ物を調達する必要があるもんね。
流石に、化石が動いてるのなんて見られたら、大騒ぎになっちゃうだろうから……
人に見つからないように、調達する必要がある。
……まあ……食事が必要なのだとしても、
内臓無くてどう食べるの?とは思うけど……
その時はその時で。
次に、【どの位の勢いまでなら動けるか。】
とりあえず、
骨組み支えてる支柱?みたいなのから離れて、首を動かしてみたけれど……
身体が崩れる感覚は無かったから、移動は出来るはず。
流石に、警備員の人とかも居るだろうから、
大きな音を立てるような激しい動きなんて、やる機会無いだろうけれど……
食料探しやらなんやらで、動いて移動するってなると、
この骨組みの身体がどの位の動き出来るかは、知っといた方がいいと思うんだよね。
……警備員の人に見つかったら、最悪、知らんぷりしよう。
1ヶ月ぐらい展示場所から動かなければ、多分、
警備員の人の見間違い。……って、なる筈。
あとは……【5感の確認】とか?
今の所、耳は聴こえるし、目も見える。
味覚は…
まず、お腹が空くかどうか確認してからにするかなぁ……内臓無いし。
だって、ほら……、
食べた物が、そのままあご骨通って落ちて行くのを見るのは、ちょっと、精神的に……ねぇ?
嗅覚……。
うん。あるね。
博物館の独特な香り、めっちゃ感じるもん。
はぁ…この香り好き。
この香り嗅いでいられるなら、
展示物としてここに居るのも、悪くない気がするから不思議だなぁ…
……スゥー……ハァー……
……うん。化石の深呼吸って、めっちゃシュール。
あとは……触感かな。
……うん。気温はあまり分からないけれど、隙間風みたいなのが当たってる感覚はするね。
寒さ暑さを感じないのは、助かるなぁ……
こんな身体じゃあ防寒とか防熱とか出来無いもん……
あとは、博物館内のMAPを把握することだけど……
すぐには動き回れないし、見える範囲だと、
真正面に玄関。
真後ろに、受付があって、その左右館内の展示ゾーンへの入口的なのがあるっぽい
……で、右手にトイレがあって、その入口の左右に、待ち合い席的な空間がある。
ソファーいっぱいあって、めっちゃフカフカしてそう。
……あっ、さっき見た姿見は、トイレ入口にある姿見だったみたいだね。
ちょうど、私(化石)の頭が見える位置に、意図的に置いたように感じる配置だ。
……トイレから出てすぐに博物館気分を味わってもらう的なコンセプトなのかな?
好み別れない?
……まあ、私は好きだけど。
……っというか、特に気にしてなかったけど、今何時?
いや……暗いから、夜なのは分かるんだけど。
……アレじゃないの?
ここが博物館なら、見回りの警備員とか居るんじゃないの??
マップ把握とかのために、もし、ここから動き回るんだとしたら、
警備員の見回り時間とか、把握しておく必要あるよね……?
居ない間に警備員さんが来て、
「ティラノが居ない!盗まれた!」なんてなる可能性もあるだろうし……
よし。そうと決まったら数日間は、
動作確認
三大欲求及び5感の確認
見回り時間の確認
に費やす事にしよう。
これさえ確認しておけば、しばらくこの身体で過ごさなきゃいけない、ってなっても、早々には困らないはず!
全ては、快適な化石生活のために!!
不本意だけど!!!
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……はい。えっと、結論から言います!
現在、私、土下座中!
土下座中でございます!
見た目伏せだけど土下座です!!
何故か、警備員やってた、後輩に、見つかり!
速攻でバレました!やっちまったぜ☆!
……いや、だって、
あんな無表情の塊みたいな後輩が、こんな所で警備員やってるなんて思わないじゃない!
警備員として回って来た後輩君見て、めっちゃ動揺したわけだけど
私は!悪くない!
唐突に私のそばに来て、なんか手元見ながら悲しそうに「先輩……」とか呟かれて、身体ビクゥッてなったけど!
その後、「……先輩??」って疑うように言われた時は、きちんと固まってた!!
ここは私ナイス!!ファインプレー!!
「……化石なら、定期的にジャンプする筈……」
「!?(何その新発見!ちょ!詳しく!!)」
(ピョンピョンッ!)
「死んだ骨が勝手にジャンプするかっ!!」
「(ですよねーー!?)」
……なんでジャンプした……私……。
「……もしかして、……本当に、先輩なんですか?
もし、先輩だったら、足踏みしてください」
「……」
……ここは、どうすべき?
生きてる(魂だけ)のは、バレてしまってるわけだから、素直に言った方がいい気もするけれど……
そのせいで、この後輩くんに、迷惑かけることにならない?
だって、私こんなに図体デカいし……
彼のことだから、一緒に隠してくれるとは思うけれど、
あまり、迷惑は……
「……もし先輩だった場合、今正直に名乗り出なかったら、
先輩のマル秘ファイル学校の皆に晒し「ズドドドドドンッ!!!」……足音激しい……」
くっそう!せっかくこの私が!
基本化石にしか関心のないこの私が!後輩くんの事を思って、思考してたのに!
この後輩くんめ!!
私泣くよ!?
涙腺ないけど泣きそう!!
「……本当に、先輩なのか……
よし、先輩。そこに伏せ。」
「……は??」
あっ、普通に喋れる。新発見。
……声帯どこ??喉元の肉も一切無「 伏 せ ♪ 」
「ハハーーーッ!!」
……足を折り曲げて、上半身を勢いよく倒す!!
これが!!
化石の!!
スライディング?土下座(伏せ)だっ!!!
「化石だヒャッハーって叫んでてすみませんでしたーーー!!」
「謝るところそこじゃない!!ってかそんなこと叫んでたのかよ!?」
……え?違うの??
首を傾げたら、ため息吐かれた。
解せぬ……
「俺が怒ってるのは、皆に心配させたことだよ。
今あんたがどんな状態か、分かってるの?」
どんな状態……って、
化石?
見た通り化石だよね……??
「先輩、あんた今、行方不明者として捜索届け出されてるんだよ。」
「ふぁっ?!!」
「穴に落ちた先輩を助け出そうと、周りの人がすぐに穴をのぞき込んだらしいんだけど。
穴の中にも、穴の土を掘っても、誰も見つけられなかった。
どこにも居なかったんだ。」
「ふぇっ??!!」
「……まあ、だからといって、
今の状態の先輩を、
みんなに見せるわけにもいかないけれど…」
「ですよねーーー!!」
ガシッ……
……そのままのテンションで同意したら、
鼻っ面(骨っ面?)を鷲掴みされた……
いたたたたたた!!やめて!!徐々に力入れないで!!!
「……ねぇ?
俺今、心配してるって言ったよね??
なんでそんなに楽しそうなわけ??
なんでそんなに脳天気な反応できるわけ??
真っ先に言うことあんだろうがゴラァ!!!」
「ひぃっ??!!」
後輩!!ヤーさんみたいになってるよ!?
せっかく可愛い顔「あ゛?」してるのに!!
勿体ない!!
「 言 う こ と あ ん だ ろ う が ? ? 」
「心配かけてすみませんでしたーー!!!」
後輩怖すぎる!
かなり涙目!!
この体涙でないけど!!!
心の中の私がギャン泣きです許してください!!!
うわーーーん!!
「…はぁ……
まあ、狙って今の状態になったって感じでは無さそうだから、
許してあげる。」
おお、流石後輩!
昔っから私の心情読み取るの得意なだけはあるね!!
……うん??
あれ、私、望んでなったわけじゃないとか、
言ったっけ…?あれ??
「今後、動かないように…
…なんて、先輩には出来なそうだよなぁ…??
仕方ない、バレそうになったらフォロー入れてやるよ。
数ヶ月は警備員としてここに居るし」
なんだと!?それはすごい助かるぞ!!
頼もしいぞ、後輩!!
流石、成績優秀でモッテモテなだけはあるな!!後輩!!
その整った顔で優しい気遣いされたら、惚れそうだよ!!後輩!!
………だから、そろそろ鼻っ面離してもらってもいいですか??!!後輩!!!
「だめ。
暫くはこの体制で反省。」
「ううう…」
酷い!鬼!悪魔ー!!
女の子にする行動じゃないぞ後輩ーっ!!
そんなんだから恋人出来ないんだぞ童貞!!!
「…先輩が女??ハッ(笑)」
鼻で笑うなよ?!
女っぽくない自覚ぐらいあるわぁぁぁ!!
うわーーん!!!
もういいもん!
どうせ今化石だし、
もう、化石としての幸せ全うしてやるもん!!
鼻で笑われて傷ついてなんかないもーーーんっっ!!!
うわーーーんって鳴き真似する度に、笑う後輩くんが本っ当に楽しそうで、
ちょっとイラッとした
「まあ、でも。先輩が生きてて、本当によかった」
……化石の体だけど……?
生きてるって言える……のかなぁ??
心の底からって感じの、後輩くんの安堵の声に思わず首を傾げちゃったけど…
後輩くん、本当に嬉しそうだし、まぁいっか。
「じゃあ、先輩。
今から、昼間の開館時間中の対策考えるよ。」
「はえ?」
「はえ?じゃないよ。
フォローするとは言っても、四六時中側になんて居れないんだから、
何があっても動かないでいられるようにするのと、
バレそうになった場合の対策方法。
これは決めとかないとダメでしょ。」
「あっ、なるほど…」
「なるほど…じゃないよ…。はぁ…」
呆れたような声でため息をつくと、
対策を練る為に床に腰をかける後輩。
「…って待って待って。後輩Stand Up!」
「え?…何??」
「床座らないの。お腹壊すでしょ。
せめて、そっちにあるお客様用のソファー持ってきて座って。」
「ああ、なるほどね。
むしろ体熱くて冷やしたいから大丈夫。
寒くなったらそっち移動するよ。」
「そう…?」
なんだろ、モヤモヤする…?
話長くなったりしたら体痛くなるだろうし、出来れば、ソファーに座って欲しかったけど…後輩くんたまに頑固な所あるからなぁ…
…あっ!そうだ!!
「ふふふ、後輩くんや。いいこと思いついたよ!!」
「…せ…先輩…??
まって。嫌な予感しかしない。」
突然笑いだした私を見て後輩くんが引き気味になる。
嫌な予感って酷いな…妙案だぞ。
これは…反論が出る前に、行動するしかないか。
私は、口を大きく開け………
パクリ、と後輩くんを咥えた
「……は?」
そしてそのまま、勢いをつけて……
「えっ、ちょ、まさか……」
ソファーに向かって、ポーーーイ!!☆
「やっぱりかぁああああああああぁぁぁ!!!!!」
ボスン、ガタン。
と音がして、
後輩くんがぶつかったソファーが、反動で少しだけ傾いて、戻った。
よしっ!強制ソファー行き、成功!!
「……せぇーんーぱぁーいぃいいいーーーー???」
「後輩くん丈夫だから!大丈夫!!」
「何がだ!!!何も大丈夫じゃないだろうが!!!」
えええ……ちゃんと、優しく投げたのに……
─かくして、いつの間にやら化石になってしまっていた私は、
この後、小一時間ほど説教を喰うことになるのだった。
……あれ?何も進展してなくない?
書き出し祭りの第二回に投稿していた作品を、
修正&加筆して投稿です
書くの遅い自覚があったので、書き溜めてから……と思ってたけど、
全然書けないので投稿する事にしました_(:3 」∠)_