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僕は不死王じゃない!!  作者: ラノベゾンビ
第2章
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妖精喰いのカスティーリャ

 

 死霊は大きく分けて2種類に分類することができる。

 1つは下位死霊。これは動物霊や生霊、精霊、地縛霊、浮遊霊、悪霊等が例として挙げられる。

 彼らは自我が薄く、自分達で考える力が低いため、召喚主に依存する傾向が強い。

 対して上位死霊。これらは自我が強く、行動もかなり複雑だ。召喚主が指示を与えずとも、自立して行動することができるが、召喚主の能力が低いと制御不能に陥り、最悪の場合、召喚主自体が殺される場合もあり得る。

 そして、最も異なる点、上位死霊は固有名詞を所持している。


 それは、ある日、自我が芽生えた。その自我とは

 ――もっと食べたい。

 同族である死霊を食い漁った。浮遊霊、地縛霊、動物霊……

 味に飽きはじめ、食うことが段々と億劫になり始めていた時、ある者を食べた。

 「……おいしい」。それは思った。今まで食べてきた霊とは違う濃厚な味。

 「これをもっと食べたい……もっと……」それは飽くことなく求めるのであった。


 ――


 黒い雫が一滴、漆黒のローブから滴り落ちた。

 ヒタ……黒い雫は石床へとぶつかり、聞き耳を立てていなければ、聞き逃してしまう小さな小さな音を出す。

 誰も気にはしないだろう、ただの雫だ。それが、波紋の様に広がらなければ。

 石床へと落ちた黒い雫は、池に小石を投げ込んだ時に広がる波紋の様に広がっていく。


 その黒い雫が水たまり程度の大きさになると、そこから小さな可愛らしい生き物が飛び出してきた。

 2枚の可愛らしい小さな羽に、女神を彷彿させる小さな小さな少女。

 ――妖精だった。


 妖精は、黒い水たまりから飛び出した次の瞬間、青白い手に掴まれた。

 『ピイィ、ピイィ』と泣き声をあげ、その整った顔を恐怖にゆがめる妖精。


 妖精を追うようにして、黒い水たまりから這い出てきたのは、少女だった。

 黒い長髪が、少女の顔を覆うように垂れ下がっている。

 少女の爪は何かを引っ掻いたのだろうか……爪が剥がれ、生々しい指先となっていた。

 白いワンピースは薄汚れており、不潔という印象を抱かせる。

 

 ――不気味な少女。しかし見た目は人のそれだ。取り立てて騒ぐほどの異形ではない。

 しかし、少女が普通の少女と決定的に違う部分があった。

 少女の体の半分程はある透明なビンを大事そうに抱えていたことだ。


 『――! ――!』


 ビンの中にはたくさんの妖精たちが入っていた。

 どの妖精も恐怖に顔を歪め、ビンをドンドンと内側から叩いているが、余程分厚い素材でできているのか、全く音が聞こえない。


 「気味の悪い少女であるな」


 目の前に現れた少女の不気味さに顔を歪めるアギール。

 妖精を捕えていることから、人ではないと悟ったのだろう。

 そばに控えているアラクネに指示を出す。


 「アラクネよ。少女を殺すのであーる!」


 アラクネの下腹部の位置にある口が大きく開くと、唾液が滴り落ちる。

 その唾液はジュウウーと石床を溶かす。


 『ヴェアアアアッ』


 気味の悪い唸り声をあげると、アラクネの口から強酸の唾液が放射された。

 少女へと迫る強酸の唾液。

 少女は手に持っている妖精に顔を向けると、妖精の上半身を食いちぎった。

 上半身がない妖精の死骸を水路へ投げ捨てると、少女の前に赤色の魔法文字が浮かび上がる。


 『捕食妖精(フェアリープレデター)――「風」 ”風壁(ビエントパレ)”』


 少女の眼前に緑色の風が下から上へと吹き上げ、迫り来る強酸の唾液を打ち上げた。


 「唾液攻撃が通じないであるか。アラクネ! 接近戦で殺るのであーる!」


 アギールが叫び終えると同時にアラクネは全速力で少女へと飛び掛かった。

 8本の脚先は、太い針の様に鋭く尖っており、少女を串刺しにしようと踏みつける。

 少女はビンを脇に抱え込み、アラクネの踏みつぶしをピョンピョンと躱す。

 アラクネが踏みつけた先の石床は、激しい衝撃音を響かせながら抉れていく。


 少女はピョンっと軽くアラクネから距離を取り、素早くビンへと手を伸ばす。

 少女の青白い手は木でできたビンの蓋をすり抜け、2匹の妖精を瓶から取り出す。

 そして、2匹とも食いちぎった。

 妖精の死骸をアギールへと投げ捨てる。

 すると、再び少女の前に紅い魔法文字が浮かび上がった。


 『捕食妖精(フェアリープレデター)――「火」「水」 ”炎熱霧(カリエンテニエブラ)”』


 ゴウッと音を立てながら、アラクネの周りに白い霧が発生する。


 『ヴェアアアアッ』

 

 痛ましい悲鳴が上がる。

 アラクネの周りに発生した霧は超高温の霧であった。

 アラクネの美しい女性であった上半身が、水膨れや火傷で見るも無残な姿になり果てた。

 余りの痛みに暴れまわるアラクネだが、上半身の目にも、下半身の目にも超高温の霧が入ったため視界がおぼつかず、全く攻撃が当たらない。


 「大丈夫であるか!? アラクネたん!」


 ピンチに追い込まれたことで、素が出てしまうアギール。

 あいつ自分の作ったカラクリ人形に「たん」付けしてるのかよ……という哀れみの視線がタナカ達一行から向けられる。

 アラクネの元へ走り出すアギール。

 「熱いであーるッ!」と言いながら、必死にアラクネを霧の外へと誘導しようとしている。


 少女はそんなアラクネとアギールを見つめながら、脇に抱えるビンへと手を伸ばした。

 大盤振る舞いと言わんばかりに3匹の妖精を一気に掴む。

 妖精たちが少女の手の中で戦慄する。

 ――そして


 『ピイィー! ピイィー! ピイギャッ……』


 食いちぎられた。

 ゴリゴリと不気味な音を立てながら、少女の前に魔法文字が浮かび上がっていく。


 『捕食妖精(フェアリープレデター) ――「虫」「爆」「鉄」 ”捕爆百足(ホバクムカデ)”』


 銀色の体躯を持つ巨大なムカデが魔法文字から現れ、ザザザとアギールたちへと向かっていく。

 そして、アギールごとアラクネにグルグルと巻き付いた。


 「な、なんであるか!? こいつは!」


 アギールが慌てた声で叫ぶと同時に、巨大ムカデの体から光が溢れだす。

 そして、霧を一気に吹き飛ばす程の爆発が起きた。


 爆炎が収まると、そこには、粉々に吹き飛んだアギールとアラクネの破片が散乱していた。


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