現実は甘くなかった
さっそくミミック能力を使ってみよう!イグナイルを試しに俺のミミック能力炸裂させてやるぜ!
「じゃあ!試させてもらうぜ!イグナイル!」
(うむ、さぁ来るがよい)
俺は爆炎竜をミミックする!
俺は心の中でそう唱えた。
外から見れば、なんの変化もなく、沈黙だけが、この空間に居続ける。
イグナイルの身体に手をつけたまま、俺は静止している。
「…………何も起きないけど…」
もっとこう、力とか漲ってくるんだと思ってたけど、何も起きない。
もしかして、このジジイ俺を弄んだのか!?
「おい、ジジイ!謀ったな!」
(そう焦るでない。よく感じろ。その手に感じる我の波動を。
そこから読み取れ。我の力を)
読み取れと言われましても、どう読み取ればいいのかわかりません。
こうか?はぁぁぁ!!
「………なんで?」
どうしてもできないんだけど。
やっぱりこのジジイ嘘をついてたな。
くそっ!こうなったらやるだけやってやる!
波動を読み取る。力を読み取る。波動を感じる。力を感じる。気を読み取る。気を感じる。波動。力。気。
「!?来た来た!!力がみなぎってる来たぜ!」
(よし、ミミック能力を使えたか。その漲る力が、我の波動
一度真似た能力はその頭にコピーされる。さぁ、我の技を繰り出してみよ!)
「よし!」
俺はぐっと腰を構える。
しかし、よくよく考えたらこいつの技なんて一度も見たことがない。
繰り出すにも繰り出せないんだが。
「あのー、技を出したいんだけど、そもそもイグナイルの技自体見たことないんですよねー」
(ミミック能力を使ったなら、我の技は頭の中にあるはずだ。しっかりと探し出せ)
探し出す………探し出す、か。
頭の中に……引き出し引き出しを引いて開けると、あら不思議!技が浮かんでくるではありませんか!
これか!
炎息!!カッコ良すぎるだろ!爆炎竜っぽい技だな!
「よーし!行くぜ!炎息!!!」
俺が叫んだその瞬間、俺の口から炎が吹き出して来た。
いやそっち!?確かにブレスだけど!口から出るのね!
熱っ!!いや、熱くない。そりゃそうか、俺が出してるんだもんな。
「あがっ」
顎外れそうなんだけど。いつまで出るの?この炎。
「|ほぉれふぃふふぁふぇふぇふぅふぉ?《これいつまで出るの?》」
(お主の意思次第だ)
そうか、炎息やめ!!
ピタッ
お、止まった。
これで一応、技を繰り出すことができたな。
これで、全てのドラゴンにミミック能力を使えば、俺最強になれるんじゃないのか!?
「ぐへへ。いいぞいいぞ!未来のビジョンが見えてくる!」
(ひどい顔をしとる。そんな事だから、女にキモいって言われるんじゃろ…)
ん?女の子にキモい?それ俺の中学の黒歴史だよね?
イグナイルには話した覚えはないんだけど。俺がさっき昔話をした時には、一人で心の中で話したつもりなんだけどな。
(我には心の声が聞こえるのだ。お主が今思っていた事を当ててやろう。その女の事、我に話した覚えはない、だろ?)
「…………なん、だと!」
(ちなみに、5種のドラゴンをミミック能力で得ることはできん。もう既に、使い魔になっているドラゴンがいるからだ。
使い魔になっていないドラゴンなら、その能力は使えることができるぞ)
なんだよそれ。
ドラゴンにしかミミック能力は使えず、使い魔になったドラゴンは能力が使えない。
とんだポンコツ能力じゃねぇか!
やっぱり、現実は甘くなかった。
《ミミック能力につき、炎息を習得しました》
ゲームでよく聞くような声が聞こえた気がした。