目覚めた精霊
イグナイルに乗り、できるだけアインズと距離を離すように飛んでいく。
後ろを見るが、来る気配はない。
なんとか振り払ったと胸を撫で下ろし、安堵の吐息が出た。
「しっかし、アインズっていう奴バカだな!」
「真面目な人なんですけど…………熱くなると前が見えなくなるんです…………」
お嬢様の方が苦労してそうだぜ…………
そら逃げ出したくなる気持ちわかるわ。あんな奴がゴロゴロといる王都にいたいやつなんていないだろ。
アインズみたいな奴が周りにいっぱいいるって考えただけで吐きそう…………
(何言っておる。住む場所があるだけでも幸せだ。贅沢すぎるんだよ今の時代は)
そうだな。それもそうかもしれない。
今回、イグナイルが封印された洞窟から出て、何回か野宿をしてわかったことがある。
住む場所が欲しい!!
ふかふかのベッドで寝たい!あったかいお風呂に入りたい!!飯が食いたい!!
そんなことが野宿をしている時に素直に思ったことだ。
やっぱり、住むところって大事だな。
(我なんぞ住む場所なんてなかった。封印されてからはあの洞窟が住む場所だったがな」
なんだよ………封印されたこと満更でもない感じじゃん。
イグナイルの様子からわかる。
すると、隣から視線を感じた。
「どうした?リゼ?」
「いえ、イグナイルさんとお話をしているのかな、と」
「あ、あぁ。心の中で話してるんだよ」
「私もイグナイルさんの声、聞いてみたいです!!」
「………………………」
無謀な願望に少し困惑の顔を浮かべる俺。
目をキラキラさせて詰め寄ってくるリゼこそ熱くなって前が見えていない状態だ。
ぐっ!そんな顔で見られたら!
「顔が、近い」
「あ!すいません!つい熱くなっちゃって」
リゼもアインズと同じじゃん。
リゼは俺の言葉で初めて気付いて、頰を少し赤らめて縮まった距離を離す。
「あ、そういえば」
「何でしょうか?」
俺はさっきアインズから出てきたリゼの名前に疑問を抱いた。
「アインズが、お前のことレインって言ってたけど」
「うっ…………………」
「どうした?」
痛いところを突かれ、少し吃るリゼは言いづらそうに上目遣いでチラチラ俺の方を見てくる。
「いや、言いづらかったら言わなくていいんだけど、ちょっと気になってさ」
「偽名です。私の国って結構大規模な王国で私の名前もかなり知られています。簡単に名前を名乗ってしまえば誘拐されてしまうかもしれないと思って」
「いや、誘拐されるも何も追われているお嬢様といえば気づくと思うんだけど……………」
「はうぅぅ…………」
どうやら、図星のようだ。
あれだな多分。偽名を名乗った後で気づく意味ないやつ。
あ、これ意味ないじゃんって気付いたけどまぁいいかってやつ。
「まぁ、そんな時もあるぜ」
「…………………」
恥ずかしくれ言葉も出ないリゼを前に俺は笑いを堪え切れないでいた。
「あはははは!!!」
「あ!笑いましたね!!」
ポコポコと小さな拳で連続パンチを繰り出してくるが、俺にはダメージゼロだ。
顔を赤くして目を瞑りながら殴ってくるその姿は天使!!!
「あ!」
リゼが突然を声を上げた。
「どうした?」
「精霊さんが起きました!!」
「まじか!」
リゼの服に隠されていた精霊はゆっくりと閉じていた目を開く。
起きた瞬間、心なしか精霊の周りに光が集まってきた。




