駆け引き
「お前は俺を殺す気か!!」
(いやーすまん。跳ね返したらお主の方にも行ってしまって)
いや、跳ね返したら大体行くってわかるだろ………バカなの?ねぇドラゴンのくせにバカなの?
あ、ドラゴンだから考える脳はないか!
(焼き殺すぞお主)
そうだった……心の中簡単に読まれるんだったわ。
ったく、一心同体ってのは辛いぜ。考えてることが全て読まれるからな。
ちっ、と俺は下にあった石ころを持ち、イグナイルに向かって届かぬ距離を思いっきり投げる。
高さ50メートル以上で飛んでいるイグナイルにはもちろん当たらない。
石ころを持ち上げ何個も投げまくる俺は、一人の男の存在を忘れていた。
「ふっ、まさか跳ね返してくるとはドラゴンを少し舐めてたよ」
砂埃が上がるその中から、髪をさらっと手で払い、気取った顔で何か言っているアインズ。
てか、いたんだった。そうだ、俺は今戦ってる途中だったわ。
「まずは、あのドラゴンを始末するしかないようだ。お前は弱そうだからな後でじっくりいたぶってやる」
「あ?なんだって?」
今ちょっといけない事が聞こえたような気がするんですけど、気のせいですかね?
返答次第では殺しかねない。
殺したい衝動を抑えつつ、もう一度聞く。
「おいお前今なんつった?」
「お前は弱いって言ったんだ。聞こえなかったか?」
死刑。
「その言葉そっくり返してやるよ」
「ほう、ミルバーナ王国第一級勇者のアインズ「それはもう聞き飽きたよ」最後まで聞け!!」
俺が耳をほじりながら、適当に返すと相手の癇に障ったのか叫ぶアインズ。
「俺は今すこぶる機嫌が悪いんでな。手加減がきかないかもしれないけど、ごめんな?先謝っとくわ」
「その必要はない。何故なら私がお前に負ける要素が一つもないからな」
やっぱりこいつ殺そう………………
取り敢えずイグナイルには遠くに行ってもらって、この荒野の広さなら十分暴れる事ができるはず。
できれば、早く速やかに終わらせたいというのが本音だが、そうはいかないだろう。
一級勇者も伊達じゃなさそうだし。
じりじりと荒野の地面から感じる蒸し暑さが、俺の身体を火照らす。
頭から垂れてくる汗が、頬を伝い、顎の先端で落ちるか落ちないか揺れている。
少し動いただけでこの汗はちょっとシャレにならねぇけど、今顎にある汗が地面についたら戦闘開始って事にしようかな。
じっと待つ。
俺の顎の先端で揺れている汗が垂れるのを待つ。
「……………………」
「……………………」
早く落ちろよ!!
お前が落ちないと始まらないんだよ!!
等々、汗に話しかける俺。ずっと見つめ合った形で動かないこの状態は少しまずい。
目の前にいるアインズも何をしている?という顔をしているが、攻めてこないから逆になんで攻めてこないんだって感じだな。
お!そんなこと考えてるうちに落ちそうだ!!
落ちろ!落ちるんだ!いけーーー!!!
俺の心の声が届いたのか、顎の先端で揺れていた汗がとうとう地面に落ちた。
その瞬間俺は、一気にアインズと距離を取った。
「やっと動き出したかと思えば、逃げるか………全く笑わせる」
鼻で嘲笑うアインズは戦う気が無くなったのか、手に持っていた御自慢の剣をしまい、スクワットするかのようにしゃがみ込んだ。
何やってんだ?こいつ?
「ふん!!!」
俺がそんなことを思った時、アインズは溜めていた足の力を思い切り使って、空に上がるように地面を蹴った。
いや、空に上がっていったのだ。
「ふぁ!?」
呆気に取られた俺は、ただその光景を口を大きく開けて、間抜けな顔で見つめていた。
そして、すぐに気がつく。
アインズはイグナイルの方向へ向かっていっているということに。
こりゃ、一本取られた……………




