二人で野宿Ⅲ
寝るとするか!って言ったけどここで恐れていたまずいことが起こる。
リゼが持ってきていた布団は一枚。
その大きさは丁度二人が入れるくらいの大きさ。寒さを凌ぐにはとてもいい、とてもいいんだが、この状況で俺はリゼと一つの布団に入ることになってしまう。
こんな事をしてしまうと、社会的に抹殺されてもおかしくない。
「どうしよ……」
俺はリゼには聞こえないくらいの小さな声で囁く。ここに来て再び俺の童貞心が擽られる。
一般の女の子と一夜を過ごす(あまり深い意味ではないよ?)事はあまり問題視されない。
しかし、一国のお嬢様と一夜を共に過ごすとなればあまりよろしくない事である。
「そろそろ寝ましょう。明日も剣探し頑張りましょう」
「あ、おう。そうだな」
そうだ。何も問題はなかったじゃないか!俺が布団を被らずに寝れば何の問題にもならない。まぁ多少風邪は引いてしまうかもしれないけど。
「じゃあ、寝るか!あまり風邪引くなよ!焚き火の火は付けとくからしっかりと布団被って寝ろよ」
「え?一緒に寝ないんですか?」
「ふぁ?」
「いや、ちょっと待って。そんなことしたら俺が消されちゃう」
「何かまずい事でもあるんですか?」
邪気のない眼差しでそんなセリフを言われれば、俺も反論しようにもできない。
そんなキョトンとした可愛い顔でこっち見ないで!
渋々、承諾するとリゼは笑顔になる。
「じゃ、失礼します」
「どうぞ」
満足気なリゼの元に近づいて、大きな布団の中に入る。
布団の中はリゼが元々入っていたためか、少し暖かさがある。
隣に心臓の音が聞こえてないか心配になる程、今の俺はかなり緊張していた。
女の子と一緒の布団で寝るなんて経験した事なんてない俺にとってとても落ち着ける状態ではなかった。
「暖かいですね」
「お、おうそうだな」
会話続かねー!
さっきまではあんなに話してたのに、距離が近づいた瞬間会話が続かなくなる。
気を紛らわそうと空に視線を送った。
そこで、俺は前世の死ぬ前に見た最後の夜空を思い出した。ここまで星は綺麗じゃなかったけど、最後に見たあの空は今でも覚えてる。
あ、まだこの世界に来て四日くらいしか経ってなかったわ。
「あ!アリウス座です!」
隣で同じように空を見上げていたリゼは、アリウス座と言う星座を指差す。
指差した先に目を向けると、前世でよく似た星座だった。
「オリオン座じゃないの?」
「アリウス座ですよ?オリオン座なんて聞いたことありませんけど」
「嘘………」
いや、あれ完璧オリオン座じゃん!
星座までも違うのか。
布団の中で俺の手とリゼの手が触れ合った。リゼの手から感じられた温度がひどく低く、冷たかった。
「手、大丈夫か?」
「え?大丈夫ですよ」
笑って誤魔化していたリゼだが、少し震えているのがわかる。俺は勇気を振り絞って、冷たいリゼの手を握った。
「ふぇ?ど、どうしたんですか!急に!」
握られた手にビックリしたリゼが思わず声を上げた。センチメートルの距離にいた俺の耳に響く。
「どうしたって、寒いんだろ?さっきから震えてるのがわかるよ」
「………………はい、寒いです」
顔を赤く染めて恥ずかし気に言うリゼを見た俺は天使を見ているのかと錯覚してしまう。
可愛すぎだろ!
「寒いので、もう少しくっ付いてもいいですか?」
さっきまで寒さを我慢していたのか、急に積極的になったリゼは俺の返事を待たずに布団の中で少し離れた距離を縮める。
微妙に感じられる胸の感触…………女の子特有の匂いと柔らかさ。
俺は必死に理性を保とうとひたすら考えていた。もし、俺じゃなくてもこんな事をしていたのか?
そんな事を思ってしまうと一気に冷めてしまって俺は寄り添うリゼを覗き込む。
「っ!?」
何でそんな顔して寝れるんだよ………
リゼの顔は安心した顔で俺に寄り添いながら眠っていたのだ。
俺はなんて事を考えていたんだ。女の子がこんな簡単に男に寄り添って寝るはずがないよな。
「ありがとな。リゼ」
静かに囁くと、リゼの顔は笑顔になり満足した様子で寝息を立てる。
俺の意識は徐々に薄くなり、夢の中へと旅立った。




