加護
よろしくお願いします
俺の名前は五十嵐優希!
俺は今、二度目の人生で初の空を飛んでいます。ドラゴンに乗って。
「やべー!!!空飛んでる!!すげぇ!!」
(はしゃぐでない。落ちてしまっても知らんぞ?しっかり掴まっておくがよい)
ふっ、お前のそのでかい図体じゃ、簡単には落ちないよ。
初めて垣間見る、空からの景色はまさに絶景。
前世ではこんな綺麗な景色は見たことがない。
「あ」
俺は言ったそばから、足を滑らせてしまう。
あー!!ヤバイー!!助けてー!!
(まったく………言ったそばから落ちよって)
「助かったぜ………」
もうふざけたことはしないでおこう………
イグナイルに助けられてなかったら、今頃下の木々に落ちて、あの世行きだ………
俺にも空を飛べることが出来たら、こうやってイグナイルを召喚せずに済むんだが、そうすれば イグナイルの存在意義を失ってしまう感じがするんだよな。
使い魔として、他に何ができるって言っても、空飛んで移動するしか思い浮かばん。
(お主ってやつは………。安心しろ、我の存在意義は消えん。
人は決して空を飛ぶことはできぬからな)
ですよねー。
それと、勝手に人の心を読むのやめてほしいんですが。急に話しかけられるとびっくりするからさ。
(わかった。なるべく聞き流しておこう)
「言ったそばから、心を読むな!」
(で、優希。お主は今どこに向かおうとしておる?)
「アランの聖剣エルドランが突き刺ささっている争いの地に行くんだよ」
その聖剣を抜ければ、いいんだけど………まだ、抜けるかわからんしな。
アランの意思が俺の中にあるとすれば、その聖剣エルドランも抜くことができるかもしれないし。
とにかく行ってみる他ないな。
「そこに向かえるか?場所とかわかる?」
(任せておけ、我にはわかる。その聖剣にはアランの波動と魔力が込められているからな。
あの洞窟の中でも、ずっと感じていた。
と言っても、ここからかなり距離はあるが)
「わかるんならそこに向かってくれ!よろしく!」
(了解した。しっかり掴まっておくがよい。次は助けられんぞ?)
いや、助けてよ?今のはちょっとしたジョークだよね?
イグナイルは承諾を得て、飛行スピードをさっきよりも一段階上げた。
下に見える木々達が、コマ送りで見えてる………
あと風が強い!!吹き飛ばされるー!!
俺は必死に イグナイルの背中に捕まり、飛ばされないように耐える。
「ぐおー!!あばばばばばは!!」
口が強風でうまく塞がらないまま、変な声を出してしまう。
扇風機の風に声を出した時に出るあの声。
そうあれよりも強烈な変な声が出ている。
このスピードなら、すぐに着きそうだ。
(そうだな。あと1時間くらいはかかるだろうな)
「はぁ!?1時間この状態であばばば!!」
ダメだ!風でうまく喋れない!
1時間もこんな状態なんてごめんだぜ!口が乾燥しすぎて死ぬ!
このスピードで1時間て、どんだけ距離あるんだよ…………
少しでも気を抜いてしまうと、本当に吹き飛ばされる。
「もっと風を止ませて飛ぶことはできないのか!?ポンコツドラゴン!」
(なぬ!?お主さっきからポンコツポンコツと………。いいだろう、風の加護を受けた我に不可能はない!)
風の加護。
この世には加護という何らかの祝福を受けることがある。その加護はどの生物にも必ずついてくるものだ。
自分にも加護はついているが、目立たないまま死んでいくものの方が多い。
と、これはイグナイルから聞いたこの世界のことの一つの知識だ。
「おい、それがあるなら最初から使えよ!」
イグナイルの風の加護によって、俺に振りかかる風はなくなった。
逆に急に風が止んだせいで、変な感じもする。
(これで満足か?)
「おう!これならあと1時間、なんとか耐えられそうだ」
まったく、こいつはほんとにポンコツだよ……。
まぁ、イグナイルらしいけどね。




