『この人にこんな苦しそうな顔をさせたくないのに、「行かないで」と泣いてしまう、大声で叫んでしまう、どうしても置いて行かれたくなくてみっともなく縋ってしまう』前作ヒロインを幸せにしてあげてください。
「あなたの力でハッピーエンドにしてあげてったー」
shindanmaker.com/474708 より
あなたは『この人にこんな苦しそうな顔をさせたくないのに、「行かないで」と泣いてしまう、大声で叫んでしまう、どうしても置いて行かれたくなくてみっともなく縋ってしまう』前作ヒロインを幸せにしてあげてください。
この診断結果を元に前作
「龍神に生贄として嫁がなければ日照りで村が滅びる」状況を全力でハッピーエンドにしてください。
http://ncode.syosetu.com/n6280dz/
のその後を書いてみました。
前作を読んでいただいてからでないとわからない部分も多いと思いますが、よろしくお願いします。
龍神さまとの生活が始まって、もうどのくらいの時を経たのか。
私ももう、残りいくらも生きていられないくらいに歳を重ねてしまった。
龍神さまは、今日もあの日と変わらず、私の面倒を見てくれる。
もとより自分の容姿にも性格にも自信などノミほどにもありはしなかったが、この人の変わらぬ逞しく美しい姿を見て、さらに老い衰えの隠せぬ自分が恥ずかしく、また年相応にとでもいうのか、素直に甘えることが難しくなっていた。
なんて、殊勝なことは私には無理だったようで。
「龍神さま、龍神さま。」
「どうした我が妻よ。そんなに泣いて。どこか痛むか、苦しいのか?」
「はい、龍神さま。苦しいの、とてもここが痛むの。龍神さまから離れたくない。だから行かないで?」
「心が痛むか、もちろんだとも。離れるものか、愛しい我が妻よ。」
あれから私と龍神さまは、確かな愛を重ねてきた。互いを疑う隙間すら埋めるように。
嗚呼、置いていくのはどちらなのか。
置いて行かれるのはどちらなのか。
「離れたくない、ずっといっしょがいいよ、龍神さまぁ。」
みっともなく縋って泣きつく。
龍神さまもその意味がわかったのだろう。
この人に、そんな苦しそうな顔、して欲しくはないのに。
それでも大声を上げて、もういくらも生きていられないような老いた女は「行かないで」と繰り返し、龍神さまと呼ばれた男はそれにこう繰り返す。
「何処へも行かぬ。何処へも行かせぬ。ずっと共にあろう。何も問題などはない。」
これまで生贄と呼ばれた村から下りてきた嫁たちを「我が妻」と呼んだことなどなかった。
それでも離しがたく、結局閉じ込めたままその生を見送ってきた。
じつは子を設けたことも、この愛しい我が妻とがはじめてであった。
思いがけず予想をはるかに超える子宝に恵まれ、いっときはその喧しさにさすがの龍神も目を回したものだ。
家事も育児も一切合切最愛の妻は、はじめて出会ったときのその言葉通りであったが、それでも自分と子を確かに愛してくれるその姿を見ては、不満どころか感謝の念しか浮かばなかった。
人の美醜など正直わからぬが、年相応に姿を変えて行く妻を、その移りゆくさますら愛おしいと、そして年々手がますますかかることを、どこかで確かに龍神は喜んでいた。
しかし、ついに終わりが見えてきたとき。
それを認識した龍神は、はじめて苦い思いを顔にしたのだ。
「一人では行かせぬ、共にあろう、我が妻よ。」
龍神さまのおっしゃる言葉をそのまま素直に受け止めていたが、これまで自分はボケていたのか、ハッとした女はそれまでの様子から一転して、毅然とした表情で、龍神に問いかける。
「それは、龍神さまも、私とともに、この世からなくなられようと考えられているのですか?」
しばらく見ない妻のしっかりした表情を美しくかんじながらも、龍神はそれに答えた。
「なくなりはしない。ともに離れよう、我が妻よ。我はこれでも神と名につく存在。人の生死とは別の世界で生きておる。苦い顔をして不安にさせたか?」
「はい、もう手はないものと。」
「大丈夫だ。ただ魂の器たるおまえの身体を手放すことになる。
これまで大事に面倒見てきた愛する妻の身体を手放すのはちと面白くないとつい考えてしまった。
いっそ、この腹のなかへと収めて持って行こうか。」
龍神がそう話すと、もうどのくらい見ていなかったか。愛する妻は耐えられないと笑いはじめた。
「やはり我の考えはおかしかったか?」
「いえ、はじめて龍神さまにお会いしたときに思ったことを思い出して。それがおかしくて。」
「なんだ、教えてくれ。気になる。」
「いえ、これは、まだ秘密です。」
だって、まだあなたといっしょにいられるのでしょう?
龍神の愛する妻は、とても幸せそうに笑い、そしてゆっくりと息を引き取った。
「よし捕まえたぞ我が妻よ。これからも共にあろう。あれらはどうする?我としては本当に腹に収めてしまいたいのだが。」
龍神に捕まえられたらしいその妻は、どうぞよろしくお願いしますと嬉しそうに応えたそうな。
「さて捕まえたは良いが、愛しの妻よ、おまえはどうなりたい?」
「どうなりたいとは?」
「我はやはりおまえに今一度身体を与えて構いたい。おまえはどうなりたい。」
「そのようなことが叶うのなら、ぜひまた身体が欲しいです。そして、、」
「そして?」
「今度は私も龍神さまの面倒がみれるようになりたいです。」
「我の面倒をか?」
「はい。面倒みてもらえるのはとても心地よく幸せでした。
自分の面倒を見るのはやはり面倒ではありますが、龍神さまの手入れなどには興味があります。
龍神さまにも私がしてもらったような幸せな心地よさを、私もしてあげられたら嬉しいなって。」
「ほう。それは面白そうだ。ところで、身体は人の身を望むか?他に希望があるか?」
「龍神さまと同じようなものにはなれませんか?」
「龍神にか?」
「いえ、神さまのように力が欲しいのではなく、龍神さまと並んでも見劣りしないというか、似合いの存在になりたいのです。
寿命も、共に添い遂げられたらなって。
人ではまた先に老いてしまいますし。子どもたちのことも気になりますから。」
「なるほど、ではそうしよう。我のように人の姿もとれて、龍の姿と寿命ももたせて。そうだな、姿は」
そこにははじめて出会ったときの、女の姿があった。
「やはりこの姿がおまえにしっくりくる。
今度はなかなか老いてはゆかぬ、しかし二人ならば退屈などさほど気になることもあるまい。
子どもたちの成長も共に見て行ける。」
「最高です!私も龍神さまが気に入ってくれるのならそれ以上などありません!!
わーい、なんだか気持ちも若返った心地ですよ!どれ、私も大きく」
「まて!ここでは!!」
こうして二人はいつまでもいつまでも
幸せに暮らしましたとさ!
ハッピーエンド!!