空の表情
忍はマジカルロッドを剣に変えたが、かんなのそれは杖のままであった。
「マジカルロッドを杖のまま出した!?」
「飛ぶわよ、しのぶ!」
「分かったよ、かんな!」
二人は杖を構えて叫ぶ。
「マジカルロッド、フロートウイング!」
二人の背中に天使のような羽が生える。
そして二人は空へと飛び立った。
「何をしてくるか分からないけど!」
しのぶは剣を構える。
「『何をされるか分からない』ことほど、怖い物はない」
けど、とかんなは続ける。
「今回は模擬戦だから、一発わざと外してあげる。動かないでよ!」
「そういう余裕ぶった態度されると動きたくなる物だけど……」
といいつつ忠告に従う忍を見て、かんなは呪文を唱える。
「ミラージュシューター!」
すると黄色い光が忍の眼前で上に曲がる。
「あなたはどこのイギリス代表なのかな」
「そのネタいい過ぎると怒られるわよ?」
「ともかく、その曲がる攻撃は厄介だね」
攻撃の軌道が予測できないのは、
それを回避するすべが無いといいたげな忍。
しかしその割に、彼は妙に自信ありげだ。
「とぼけないで。あなたのスピードなら、このくらいは訳ない」
「少なくとも、表情に焦りは感じない」
そして、とかんなは続ける。
「ここが蒼空だからいうけど、あなたは男の娘よね?」
「どうしてそう思うの?」
「私は分かるの。女の子達の表情を見て来たから」
「表情を?それはどうして?」
忍は冷静に返した。内心焦っていたが、興味があったからだ。
「私は魔法少女に憧れた。2018年に、それが現実だって分かってから」
「必死に練習したわ。おかげで擦り傷も数えきれないくらい負った」
「あなたはボクが小学六年生の時、つまりクローン大戦の時居なかったけど?」
「クローン大戦の時は私は止められていた」
「止められていた?将来有望な魔法少女だから?」
その疑問にかんなは答える。
「それなら尚更戦力にはしたいはずよ」
「ならどうして……」
「私の感受性が高いから、それを制御できないと判断されたのよ」
「女の子特有の感受性って奴かな」
思わず本音を漏らした忍に対し、かんなは指摘する。
「そういうってことは、私の推論は本当だってことね」
「うっ……」
「流石に表情で性別までは分からない。けど何か隠していることは分かってた」
「クラスのみんなには内緒だよ?何いわれるか分からないし……」
「そこは心配しないで。私、口は堅いから」
そんなかんなに、忍は向き合う。
「まあ、模擬戦を続けよう。あなたの力、伊達じゃないってところを見せて!」