『帰省』先にて
そして忍は本題に入る。
「ところでさ、神奈は僕と一卵性双生児だったことについてどう思っているの?」
「別に?一卵性双生児でも性別は違うわけだし」
「一卵性双生児でも違う点は多い。僕達は性別も違う、っていうわけだね」
そうよ、といわんばかりに神奈は持論を述べた。
「性別が違うと性差による差異がかなり影響するはずよ」
「性差がなくても、いくら似ていても好みまで同じになるなんてことは滅多にないし」
「芸能界に出ている双子がそういう面も似ているのは、タレントだからっていう面が大きいのかも」
むしろ、と忍は返す。
「似ているからこそ売りにできるっていう側面もあるんだと思うよ」
「まあ、それも実際にそういう面が似ている双子は世間を見れば稀だから売りだせるのもあるかしら」
「僕は芸能界とかにそこまで興味ないかな」
「そこは私も同意よ。でも何年か入院していたし、誘われたら行くかも」
「仕事が見つかるか不安ってことか?」
「そりゃ、周りに比べて勉強はどうしてもできてないし」
「いい高校に行けるか、っていう問題なんだな」
そんな忍に神奈は返す。
「世界を救ったからって別に褒賞を貰えるわけじゃないし、貰えると考えてもいけない」
「ノーベル平和賞くらいなら貰えそうだけどな」
「仮にそうだとしても結果論よ」
謙虚な口ぶりの神奈に、忍は返す。
「まあ、こういうのは謙虚になった方がいいかもな」
「世界を救ったからって踏ん反りかえっちゃ悪いものね」
その辺の考えは割と似ている二人だった。
一方、頌子は理香子を茶化す。
「保留ってことは、私にもチャンスはあるってこと」
「え?もしかしてあなたも忍が好きなのかしら」
「彼とは長い付き合いだし、そこは自分でしっかり整理したいと思っている」
「頌子らしいといえばらしいかしら」
「まあ、もし彼の取り合いになったとしたなら負けはしない」
「私だってあなたに負けはしないわよ」
女同士の戦いが勃発するかと思ったが、そうでもなかった。
何故なら、その話題はそこで切れたからだ。
「さて。姉さんには会ったし、ホテルに行こうかな」
「もう時間なの?」
そんな神奈に忍は返す。
「僕の気は済んだ。これからも僕は戦うさ」
「本当なら、あなたじゃなく私が戦うのが一番いいんだけどね」
「あまり気負いすぎるのも良くないさ。今は僕や理香子が居るんだから」
「その通りね。私は私の戦いをする。だから、忍も負けちゃ駄目よ」
「分かっているさ。それじゃあな、姉さん」
「いってらっしゃい、忍」
会話が終わると、忍は理香子たちに声を掛ける。
「それじゃあ、行くぞ」
「分かってるわ」
「頌子は切り替えが早いけど、まあ私もじっとしていたら置いていかれるしね」
そうして忍達はホテルに戻り、一泊してから広島へと戻る。
トランクは既に寮まで宅配で送っているのでそのまま花の祭典へと向かい、
忍はそこで目当てのアイスを食べる。
それを食べ終わるころ、忍は理香子に問われる。
「あなたのお姉さん、どんな感じだった?」
「ターナー症候群だからかは分からないけど、そんなに成長してなかったかな」
「見た目はそうかもしれない。私は彼女と共に戦っていたから」
「内面は成長したと思うけど、いまいちよく分からないかな」
そんな忍に理香子はこう返す。
「私は彼女とそんなに話さなかったから分からないけど、きっとそれなりに成長したんじゃないかしら」
「それなり、って……まあ理香子らしいかな」
こうして忍達は祭典を過ごし、寮に戻る。
寮に戻った彼らは元の部屋に戻り、そして一日が過ぎる。
彼らの寮にはゲームも持ち込めるため、自分の部屋に友達を連れ込むこともある。
まあその性質上、中保台学園には遠方から入学してくる学生が結構居るわけだし。




