名古屋への『帰省』
駅弁を食べ終えた忍達が名古屋に着くと、そこから在来線に乗り替える。
「これから神奈に会いに行くのね」
そんな頌子に忍は返す。
「正直少し心配なんだよな。ちゃんと話ができるのか、とか」
「一卵性双生児の男女なんて珍しすぎるしね」
理香子がそう応じると忍はそれに頷く。
「結構イレギュラーなんだそうだ。医者からも『生まれてきたことが奇跡』といわれた」
忍はそれを揶揄したかのような発言をした。
「それならそれで支援とかしてくれればよさそうなんだけどな」
「まあ遺伝的に珍しいってだけだしね」
「いってみただけさ、理香子。それより、そろそろ着くぞ」
「次の駅に着いたらしばらく歩いてから病院なんだっけ」
頌子は忍に問いかけた。そして忍は答えた。
「といっても徒歩五分くらいかな」
そして歩くと病院があり、神奈の病室。
「神奈さん、面会ですよ」
看護師がそういって室内に語りかける。
すると開口一番、神奈はいった。
「ふう。私としては、もう退院したいんだけどね。ここの病院食味は悪くないんだけどね」
「そうもいかないんだよ。まだリハビリが終わったわけじゃないんだよね?」
「そうね。でも二学期が終わるころには退院できそうよ」
そこに看護師の突っ込みが入る。
「もう入院というよりは、リハビリのためにここに居る状態ですからね」
「じゃあ何で病室に入っているのかな?」
忍の突っ込みに看護師は切り返す。
「一応足の検査とかがありますから」
「要するに検査入院ってことか?」
「ゴールデンウイークだからね。あなたが来るのに合わせたわけじゃないけど、休みの日の方がいいし」
そんな神奈に忍は率直な疑問をぶつける。
「学校には行けているの?」
「ええ。一年もすれば学校へは通えるようになったわ。体育の授業は見学だったけど……」
「それまではさすがに病院で勉強していたのか」
そんな忍に神奈は返す。
「クラスメイトが教科書とかは持ってきてくれたから、内容は理解できているわ」
「ふうん」
ちなみに神奈のいる場所は個室だ。
これは単に神奈が有名人だからで、容体が悪いわけではない。
まあ、個室なので看護師を含めた話もできるわけだが。
「で、忍はどうなの?」
「まあ一応性別は隠せているかな。バレている人も居るけど」
「そっちなのね。授業に追いつけていないとかじゃなく」
「ボクも要領はそんな悪くないしさ」
「悪くないってだけでいいわけじゃないんだから」
「気を付けるって」
そんな会話をしていると、理香子は頌子にいう。
「さすがに仲のいい姉弟ね」
「まあ、姉弟の仲がいいことは悪いことじゃないから」
平然としている頌子に理香子は突っ込む。
「でもさすがに普通の姉弟って感じはしないわ」
「そりゃお互い性別が違うとはいえ片割れだし」
「それだけじゃないと思うんだけどな……」
その会話は忍に聞かれていたらしく、忍は突っ込んだ。
「僕がシスコンだっていいたいの?」
「そういうわけじゃないけど」
理香子は普通に否定した。
「ならいいけど」
「でもあなたってちょっと疎いところあるからさ」
「それってどういう?」
「この際だからはっきりいうわ。私は、あなたのことが好きなの」
「それは分かっている。幼馴染だからだろ?」
中学生だからこのくらいトロイのはまあ許容範囲だろう。
なので理香子はすかさず次の手を打つ。
「私は幼馴染だからとかじゃなく、一人の女としてあなたの好きだと思っている」
「つまり『Iloveyou』ってこと?」
さすがにこれで気づかなければ正真正銘の朴念仁だが、
忍はそこまで鈍くないので普通に気づいた。
「そうよ」
「ごめん。そういうのは簡単に決めない方がいいと思うんだ。だから、考えさせて貰えるか?」
「別にいいわよ。一時の気の迷いで恋人同士になったっていいことはないんだから」
理香子の告白を受けても忍はあまり動じなかった。
まあ今はそれどころじゃあないからだろうか。




