交錯する風
アマーリアが頌子に重鎮の力を見せつけんばかりに立ちふさがろうとしていた。
しかし頌子はこういい返す。
「私がいつまでも風使いだと思っていたなら、それは大間違いよ」
「今の私は『魔法少女ウィンドネス☆しょうこ』、よ」
そんな頌子が持っていたのはアーチェリーだった。
ただし弓矢はないが。
「馬鹿にしているの?矢なんて風で流せるに決まっているよね?」
アマーリアは頌子に指摘する。
「私の矢は魔法の矢。だから風では流せないわよ」
そういいつつ、頌子は弓を構える。
「この距離で構えるなんて、血迷ったかしら」
「ウィンドネスクルセイド!」
そういって放たれた矢は、曲がる。
「矢が曲がるなんて!魔法とはいえ、随分とやってくれるじゃない」
「舐め腐っているからそうなるのよ」
「なら、ホールインウインド!」
すると下に向かう突風が頌子に吹いて来る。
「これは山から降りる突風。この状態で弓を構えよう物なら、間違えなく地面にたたきつけられるわよ」
「確かに強い風ね。でも!」
頌子はアマーリアの発した突風から逃れようとする。
「それが単に下に吹くとは思わないで。この風は穴。つまり、複雑な気流となっているのよ」
「私が風使いだというのをいったのはあなたよね。確かに昔はこれほどのスケールにできなかった」
けど、と頌子は続ける。
「風っていうのは気圧の高いところから低いところに吹き、そこに重力とかの要素が加わる」
「だから下に吹く風はいつか上に戻ろうとする。魔法でもこの性質は覆せないわ」
「そこまで分かっていながら、お前は一つ読み違えをしている」
そんなアマーリアに頌子は返す。
「風の吹く方向は把握しているっていうのよね?『風使い』を自負する以上、それくらいはあるはず」
「まさか!」
「私の狙いは風の一番安定したところに行くことよ。強烈な台風だって、目になる部分は風が吹かない」
つまり、と頌子は続ける。
「そこに行けば、あなただって風は飛ばせないはず」
「確かに、魔法で風は発生できても風同士を干渉させることは不可能」
だから、とアマーリアは続ける。
「お前が風の『目』にいってしまえば、もはや手は付けられない」
「そこは『目』の付け所が良かったんだが、私は」
頌子がアマーリアの言葉を遮る。
「風を操作できるっていうのよね。確かに、気圧配分を調整すれば発生させた風の向きは変わる」
「例えるなら台風が高気圧沿いに動くような物ね」
でも、と頌子は続ける。
「私も元は風使い。目にさえ入ってしまえば私の勝ちよ」
「いいや、それは違う。お前が目に入る前に、お前を渦に巻き込むからだ!」
そしてアマーリアは杖を構えていう。
「ボルッテックススロウス(穴の渦)!」
「風が急に強くなって、襲いかかってくる!?」
「お前が穴に入った時点で、それはお前の負けだったんだ」
「そうかしら。あなたは今、致命的なミスを犯したのよ」
すると、頌子は横方向に動いていく。
「馬鹿な、その風速で動けるはずが!」
「風を渦にしたことで、渦の一番端が相対的に弱くなったのよ」
「ちいっ、弱点を見破るとは!」
ついでに、と頌子は続ける。
「さっきからあなたは気圧を変えていたけど、魔法はあくまで局地的な気圧変化」
「だけどそれは自然の気圧配分を刺激してしまう」
「何!?」
「それによる被害は少ないわ。せいぜい雨の時間帯がずれたりするくらいね」
「だからどうしたというのだ?」
「あなたが二度も強大な風魔法を使ったから、気圧に影響があるのよ」
そして、と頌子は続ける。
「強大な風使いなら天気予報は見ておくことね」
「何のことだ?そういうお前は見なか……」
風がアマーリアに向かって吹いて来る。
「馬鹿な、渦が!ふごあっ!?」
地上に落ちていくアマーリアを見やり、頌子はいう。
「私の時代は見なきゃいけないほどスケールが大きくなかったから、必要なかったんだけどね」




