彼女達の事情
「まあ、私の弟がそのへんをどう思っているかは関係ないわよね?」
そんな神奈に、頌子は何もいえなかった。
「弟の思想は関係ない、のかもね」
ちひろがかろうじてそういえるくらいだったことから、
あまり深く突っ込めないのが分かる。
いずれにしろこんなことで不仲になっていてもいけないし、
この手の会話は皆無だったわけでない。
「まあ、このランチが美味しいことには変わらないしね」
なので頌子がそういうことにより、軽く流すことにしたようだ。
彼女たちはそれからランチを食べ終わると、
近くのゲーセンへと向かう。
といってもプリクラは取らない。
アイドルを着せ替えるアーケードゲームがあるため、
それをプレイするのだった。
「さあ、行くよ!」
媒体の前に神奈が座っていた。
ネオナチスが襲来した2025年時点で彼女はリハビリ中だが、
くじいたのが足だったこともありゲームは『今』の時点でもやっている。
彼女は現時点でも中学生だし、
そういうゲームをやっていたとして何ら不自然ではない。
というか大人になってもドラゴンをクエストしたりするし、
配管工を捜査してお姫様を助けたりする。
そんなことを考えれば中学生になってお気に入りのゲームをやめる方が、
むしろ不自然なことだとすらいえる。
まあそんなことは置いといて彼女の腕前は決していいとはいえなかったが、
子供でも普通に楽しめるゲームなので合格点は出していた。
太鼓を叩くゲームだとかんたん以外では不合格なので、
彼女はその手のゲームが不得手らしい。
足を骨折してない当時ならダンスは普通に踊れた、
とは忍の談だが確かに不思議だ。
ともかく彼女はアーケードゲームも終えて、
キャッチャーでぬいぐるみを狙っていた。
といってもワンコインだけであり、
取れるか取れないかを楽しむのが目的だ。
魔法があれば取れそうだが、バレたら出禁なので止めていたようであった。
過去形なのは、
彼女がリハビリ中でキャッチャーまでやる元気がないからである。
それはそれとして神奈の動かしたキャッチャーはぬいぐるみにかかっていた。
「そのまま景品取り出し口まで行って!」
神奈が祈るようにそういうと、
キャッチャーは無事景品取り出し口の真上に到達する。
そしてそのままキャッチャーのアームが外れ、ぬいぐるみが出口に出る。
「やったあ!ぬいぐるみをゲットしたわ!」
そのぬいぐるみは病室にも置かれることとなったほどのお気に入りだが、
神奈が初めてそれを手に入れたのは些細なきっかけだったのだ。




