単純だろうと
忍はいわれたことを思い出しつつ『拓夢』を探していた。
(単純、か……そうかもしれないな)
(だが同じような奴が危ない目に合っていると聞くと他人事に思えない)
そこが単純なのかもしれない、と思っていると忍は拓夢に出会う。
「服が濡れてるね」
「心配はいらない、一応上着は羽織った」
「ボクが向かわされたのはトラブルを避けるためみたいだね」
「ああ、できるだけ人目に着きたくないしな」
「ボクなんかはそうでなくてもあれだったし」
拓夢を装う美夢は苦笑いした。
「まさか向こうからバラすとはな」
「とはいえどこから漏れていたの?」
「一応、特定秘密保護法における保護対象のはずだといいたいのか?」
「まあ、内容が内容だけにアクシデントが起きるのは仕方ないってなってるけど」
「その答えはあの船だ。あの船『だった』が正しいけどな」
そんな『彼』に忍は首をかしげた。
「船に行ったの?」
「あの船は諜報部員の引き揚げ用だった。つまり今回の襲来自体囮だったのさ」
「フェイクであれだけのことをやるなんて……」
「世界が混乱しているとはいえ、ネオナチスの規模が大きいとはいえない」
「だから賭けに出たというの?」
「賭けってほどじゃないだろう。あくまで引き揚げが目的なんだからな」