捨て駒の理屈
「さすがにその理屈は可笑しいよ」
「でも魔力を使いきったあなた達には無理よ」
「なら、どうすることもできないっていうの?」
「いずれにしろ、帰りを待つしかないわね」
そんなかすみに忍は突っかかる。
「なら、せめてあなたが一緒にいってあげたらどうなの?」
「私には授業がある……といいたいけど、さすがにそれは頭が固いわね」
「いいの?」
「危なくなったら引かせて貰うわ」
「おい、私のことを忘れているだろ」
「手足が封じられてたら魔法のための構えができないわよね?」
マルギットは縛られていたので、この場合かすみが正論だった。
「ちいっ、焦らせるつもりだったが失敗したか」
というわけで、忍達は昼食時間に給食を食べていた。
彼らが通う中保台学園は政府のおひざ元で作られた私立中学なのだ。
ややこしいが公立中学校は受験制度を採用できないため、
魔法研究所に業務委託をするという形で運営されている。
要は半公営企業という物である。
この手の物は天下りの温床になりがちだが、
今の日本はそれどころじゃないのだ。
魔法少女養成校自体はクローン大戦を受けて短期で作られた物だが、
政府の元育てられた魔法少女も少なからず存在する。
監視が付くためモルモットのような形になるが、
衣食住が保証されマジカルロッドを支給されるので割には合っている。
マジカルロッドの支給も試作型のテストという意味合いがあるものの、
最新鋭の兵器を使えるというのはかなり魅力的だ。
もっともマジカルロッドはクローン大戦に間に合わなかったので、
忍の姉である神奈は骨折してしまったのだが。
「ふうん、忍にそういうことがあったのね」
「こいつは全然話そうとしないからさ」
「理香子には悪いけど、仮にもボクは『親戚』ってことになってるからね」
「どこのアイドルよ、それ」
理香子と話していた生徒は永木頌子であった。
「そのアイドルは『いとこ』で『親戚』じゃないけどね」
「また危ないネタを振って……」
彼女たちが食べているのは食堂の料理だ。
忍は支給されたお金を使い日替わり定食を食べていた。
この日の料理はきな粉パンにミネストローネスープだった。
「日替わり定食にきな粉パンって、どうもミスマッチだよね」
「というか今の話、聞こえたんじゃないの?」
「忍は心配症なんだから。私達は実戦したから先に授業抜けたのよ?」
ちなみに頌子も忍の幼馴染だが別のクラスに居るし、
理香子と違い彼を追ったわけでもない。
なので忍は彼女に釘を刺した。
「ボクのことは秘密にしといて。じゃないと、きっとみんな混乱するから」