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神の家に居候する男

「お主、いつになったら出で行ってくれるのかのぅ?」


一年の最後の日、大みそかの晩。

話しかけらた本人である彼、山本楓は呆れ顔の頭がツルンツルンのじいさんが恨めしそうに言うのをまるで自分が無関係であるように興味なさげに視線を向けた。

そしてすぐに元の場所に視線を変えた。


「はぁ…そんなにそれがいいか」


はぁ~とお爺さんがため息をついた。

しかし嫌味を言われている楓はそれすら無視して『テレビ』から意識を離さない。

現在放映している『絶対に萌える!ジャンル別人気声優大集合』という毎年恒例の人気番組に夢中になっている今、じいさんの小言なんて楓はどうでもいいのだ。

好きなキャラの声優がこの番組で初顔出しすると知ってからはずっと楽しみにして待ち続けてきた楓からすると今、一番優先すべきことは明白だった。


「ちょっとじいさん黙ってて、今から出てくるから。少しでも妨害してみろ、俺の右手が火を吹くからな」

テレビを見続けている楓からのどう聞いても相手にしていない言葉にお爺さんは肩を落とす。


「どんな人だろう?あの声からネットじゃブサイク疑惑が浮上してアンチ共が騒いでいたけどそれでもいいんだよなぁ。それにしても楽しみだな、早く登場して欲しい」

ドキドキしながら独り言を呟いていると、遂にその時が来た。






と思った。

しかし、現実は思うようにいかない。

その人が登場する直前でCMに切り替わってしまった。



この暇な時間が嫌いな楓は暇つぶしにテレビから視線を変えてお爺さんを見ながら、

「じいさん、出ていくのは最低でも来年またこの番組見るまでは無理かな」

とさらりというと近くにある新作のカントリーマ〇ム焼肉味を開け、口に頬張った。口の中に入れすぎて顔ができる限り食べ物を頬張っているリスのようになっている。


「やっと聞く気になったと思ったら聞いておらんようだの。しっかり聞かんか!」


今しかないとばかりにお爺さんは語気を荒げる。

それを見た楓は、

「よし、じゃあ後から聞くわ。めんどくさそうだし?」


お爺さんの話を聞こうと思ったがとにかく愚痴愚痴うるさくなりそうなので、楓はCMの間、違う番組を見て暇を潰そうとテレビに向き直り、チャンネルを変えた。


「まてまて、お主下界で死んでからここに来てもう五年じゃ。普通の者ならすぐにすべてリセットされて転生する。はやくお主も覚悟を決めねばならん。」


そういって駄々っ子のようにじいさんが話をしようと背中をペシペシ叩きながら言ってくる。

外見の割に子供っぽいので構わないほど面倒になることを楓は知っている。

仕方なく呆れ声で反応した。


「でも死んだ理由、爺さんたち神様のせいだろ?」


山本楓は死後5年経過している。

死因は交通事故。

十字路を青信号で渡ろうとしたとき、信号無視の軽四に轢かれてぶっ飛ばされ打ちどころが悪かったのか即死した。

ちょっとしたニュースになったらしい

それから死んだ俺は死後の世界、天界へと強制的に連れていかれ(気がついたら天界だった)自分の死を確認したのだ。


土下座している神に謝られながら。



そして俺は、

マジで引いた。

そりゃお爺さんが突然土下座して謝り倒してきたら誰だってこんなリアクションだと思う。

それに服装や後ろに控えている天使みたいな部下を引き連れていたことで明らかに偉い人だと分かったし、結果的に話を聞いて神様だと知ったとき逆に俺が罰当たりなんじゃないかと思っていた。


実は俺を殺した加害者がその世界に就いた新任の神だったらしく、今居候している家のじいさん、本来の名前であれば《原初の四神》の1柱であるサラスの部下だったみたいで死んで天界に来た時、土下座されて説明してもらった。


どうやら各世界ごとにルールが存在するようで、その神はその世界のルールをあまり学んでいなかったのに車やテレビ、ゲームのような機械に驚き、興奮していきなり降臨して車を超能力的な力で盗み運転した結果こうなったらしい。

俺を轢いた神はもっと文明が発展していない世界から移動してきたが、前の世界では中々のベテランらしかった。そこそこの力を持つ神だったため中途半端にしか説明を受けておらず、何かあっても自分がどうにか出来ると思ったのだそうだ。

しかし、関係の無い人を殺してどうにかなるわけが無かった。


というか普通に害悪だよね、その神。

人間社会だとまるで話を聞かず、いびるだけの老害みたいな存在だったようだ。

ざまぁみやがれ!





話を進めよう。

それでじいさん、サラスを含む《原初の四神》と呼ばれる最高位の神々が話し合い、問題を起こした神を解任してその世界により詳しい者が就くことになった。前の神の部下に当たる人らしい。

問題を起こした神は解任に反対するどころか全く反省の意を示さずにいたようで、命を粗末にするものに神は務まらないと告げ、罰として記憶を持ったまま地獄のような世界に転生させて反省させるようだ。


ここまで聞いたとき、その神に対して殺意に満ちていた。

じいさん曰く、般若のような顔になっていたみたいで後から怖かったと何故か楓は怒られた。余程やばい顔だったようだ。


そしてこの事件の被害者である俺は神々からの償いとして今までの記憶の引き継ぎと神からの恩恵と言う形で異能と呼ばれる力をもって転生させてもらいもう一回人生をやり直すというテンプレなことをする。





……………………………………はずだった。


「確かにワシらが全面的に非がある。しかし、それ相応の償いとして新しい命と卓越した力をつけて転生するということで合意したじゃろうが」


「合意したさ。でもな」


一旦言葉を切った楓はワナワナと体を震わせながら叫んだ。


「誰が前世の知識持って転生する世界が縄文時代並の文明しかない世界だと思うんだよ!!言葉すら無いところなのにこれだけサブカルチャーが発展している世界出身の俺が生きていけるわけねぇだろぉがぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!」


そう転生先の世界が問題だった。


ーーーーーーーーーーーーー





神々は世界を大きく3つに分けている。


様々な種族が生活している多くの世界を下界。

下位の神や死神などが死者の管理、転生をさせる世界を天界、または上界。

高位の神やイレギュラーが住んでいる世界をエデン、《原初の楽園》と呼ばれている。


補足をしておくとエデンに住むイレギュラーと呼ばれる存在は下界で多大なる功績を上げ、なおかつ善良な英雄と呼ばれる者、また神々が起こした問題に巻き込まれた者であり、前者の場合神の位を与えられ神としてエデンで過ごすことになり、後者の場合は説得の後、転生させるためにエデンで一時的に過ごすことになる。


死んでしまった楓は神に殺された後者のイレギュラーとしてエデンに迎えられた。

そして土下座した神からの説明を受け、転生を促されたのだ。

本来、英雄でもない人程度の生命が神々の住むエデンに招かれることは無きに等しい。

今回楓に起こったことは余程なことであり、それがイレギュラーの所以である。


そんな死者の世界である天界や神々の世界のエデンにもルールが存在する。法律のようなものと考えてもらえればいい。


その中に転生に関するルールも多く存在する。

その一つにこういうモノがある。

〈転生先は例外なくランダムで決まった世界に転生しなければならない〉


要するにどこの世界に決まろうが後から変更できないよ、ていうか世界は自分で選べないから我慢してねということだ。


そんなルールがある中、馬鹿な神の不注意で殺された本来ならまだ生きているはずのイレギュラーな楓も例外ではない。

そして決まった先が太古の世界。

国すらない無く、言葉や文字もない。

本能で生活している生き物たちの世界。

やっと火を扱うことに慣れた人々が自然とともに生きる場所。


そんなところに転生させられると知った五年前の楓はブチギレて自分を殺したやつの上司、サラスの家に転がり込んだ。


そして今の今まで自堕落生活を送ってきた。


ーーーーーーーーーーーーーー


「確かにのぅ、ならばどうすればいい?」


サラスは楓の言葉を聞き、ヒゲを弄りながら答えを求める。

これまで何度も聞いてきた問だ。

それに楓はいつも答えている答えをいつも通りサラスに突きつける。


「せめて前の世界並みの文化をもつ世界に転生させてくれればなんでもいいよ」


楓は前の世界のような楽しい暮らしをしたいと考えている。

それは神に殺された楓の唯一の願いだった。

だからこれまで転生に関する話が進まなくてズルズルと居候をしてきたのだ。


だが今日は違った。


楓がいつもどおりの返事を言い切った瞬間、楓の目の前でサラスが待っていましたと言わんばかりに意味深な笑みを浮かべ、


「分かった。ならば決定じゃな」

といつもより数段高いトーンで告げてきた。


「……………………………は?どういうことだ」


突然、意味のわからないことを言い出した。

何も知らない楓はその笑みを見て一気に不機嫌になり、喧嘩腰でサラスを問い詰める。


「お主の条件は前の世界並みに文明が発達していることじゃったな。そしていつも言っているように決まった世界以外への転生は認めることが出来ぬ」


「……ああ。だからこの五年、ずっと話が進まなくてイレギュラーとして居候していたんだろうが」


当たり前だと頷き、続きの言葉を待った。

それを察したサラスはすぐに話を続ける。

そして爆弾発言をした。


「そうじゃ………だが今回、双方が納得する形を持ってきたのじゃよ」


…………………………………今なんて言った?



「じいさん、あんたなんて言った?」


「だーから、お主も了承できる話を持ってきたのじゃ」


サラスはカラカラと嬉しそうに笑う。

そして、

「楓、神になってみないか?」

サラスは本題を楓に告げた。





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