俺、また馬に生まれました――雨の坂道
「俺、また馬に生まれました」の続編にあたります。
本編はこちら↓
【俺、また馬に生まれましたシリーズ】
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蒸し暑い雨の中パドックを回る。
雨の中走るのは前世のカイザーの時以来だ。
そう、俺には前世の記憶がある。
前世の俺も競走馬だったのだ。しかも伝説の無敗馬。
いまの俺もすごいのか?って、いや、1勝すらあやしい能力の馬だ。
パドック、返し馬と、俺はまわりの馬の顔を確認する。
よし、前に一緒に走った奴はいない。
ゲートに入ると、周りの奴に話しかける。話題は何でもいい。
だけど、話題は適当なことを言うと大変なことになると学習した俺は、毎回頭を悩ませていた。
ある日、ひらめいた。
メンバーが違うなら、使いまわしたっていいんじゃない?
俺、頭いいかも。
話で引きつけて、スタートダッシュを決める。
最初の直線300メートル、いきなりの上り坂、いつも坂路トレーニングをしている俺はひるまずに駆け上がる。
よし、ここでいつもの折り合いを欠いた演技をしようと口を開けた。口に雨粒が入った。ぺっ。
これじゃ口も目も開けられないじゃないか。俺の必殺技が封じられてしまった。
昨日から続いていた雨のせいで芝も重たい。だけど以前と比べるとずっと楽に感じられる。
後続を引き離す形にもっていけた。もしかして芝が重たい坂道ってみんな苦手なのかなぁ。
最初のコーナーに入る。
このコーナーは狭いから、上手くまわらないと外側に膨らんでしまう。
俺にとってはチャンスだ。狭いコーナーと上り坂。この間にどれだけ差を広げられるかがキーになる。
ここまで単独で俺は走り抜けることができた。今までは上り坂だったが3コーナーからは下り坂になる。
一気にみんなが近づいてくる気配がする。俺の余裕がなくなってきた。
最後のコーナーはゆるやかなカーブだから、みんなロスが少ない。
後ろの馬の呼吸が聞こえるような気がしてきた。
追いつかれる!!最後のコーナーをまわったときに前にかわされた。
だけど最後の直線はスタートと同じ300メートルのきつい上り坂だ。
重たい芝を蹴って俺は前に食らいつく。
いける!!スピードのない俺だけど、坂道だけは毎日走っているんだ。
しっかりと先頭の馬にすがりつくように走る。あと200メートル。前の馬までは体ひとつ分。
あと100メートル、前の馬の動きが鈍った気がした。あと体半分。
いけるいけるいけるいける!!!!ゴール板を抜けたとき、体半分俺が前に出た。
湯気がでる体に雨は冷たく優しかった。
俺、2勝目勝ったんだ。
あんちゃんは今日は泣かなかった。今日だったら濡れてるし、鼻水もましだったんだけどなぁ。




