朝食の
三題噺もどき―はっぴゃくごじゅうよん。
机に座っていると、目の前に皿が出された。
上には、出来立ての目玉焼きが湯気を立てて鎮座している。
添え物として、申し訳程度の野菜が少々。ブロッコリーと、トマト。
「……」
鼻が詰まっているのか、匂いがよく分からない。
そのせいであまり食欲も起こらず、ぼうっとしている。
手は寒くて太ももの間に埋もれている。
「……」
机の前に設置されているテレビからは、何かを話しているような声が聞こえる。
視線だけをそちらにやれば、光っていることは分かるが何が映っているのかはよく分からず、ぼやけている。
声を聞く限り、何かのニュースを伝えているようだけど、詳しいことは分からない。
「……」
何故かふわふわと風船が飛んでいる所だけは、はっきりと見えた。
それがどこを飛んでいるのか、どういう状況でそうなったのか。
風船が浮かんでいるはずの回りの映像は、ぼやけている。モザイクがかかったように。
「……」
気付けば、目の前の皿が1つ増えていた。
目玉焼きの乗った皿の横に。
しっかり目に焼かれた食パンが1枚。
「……」
端の方が少し焦げてしまったのか、黒くなっている。
目玉焼きが出てきた時点で察しはついていたが、今日は食パンが主食のようだ。
我が家はそうだと決まっている。
「……」
しかし食パンだとあまり腹が膨れないと言うか、学校につくころには少々お腹がすくと言うか……私があまりパンを好きではないこともあって、朝にパンを食べるのは好きではない。
「……」
少し離れたところに、バターの入ったケースと、赤いイチゴジャムが置かれている。
それと、目玉焼きにかけるように、ケチャップとマヨネーズ。
塩コショウがかかっているからいらないと思うんだけど、いつも用意されている。
「……」
しかし今日はなんというか……あまりはっきりとしない感じだ。
ずっとぼんやりとしていると言うか、何かがおかしいような気がするというか。
そもそも、今が何時で、食べようとしているのが朝食なのかどうかも怪しくなってきた。
「……」
皿を差し出してくる手が、母の物だと言うことは分かるのだけど。
顔を見ようとすると、その顔がぼやけてしまう。
母だと言うことは分かるんだけど、顔だけが上手く見えない。
「……」
隣に妹……と思われる人が座っていることは分かるのだけど。
顔がどうにもはっきりしない。そもそも私と同じ時間に朝食を食べることがあっただろうか……朝練とかなかったのかな今日。
「……」
しかし、何だろうとそろそろ食べなくてはいけない。
あまりぼうっとしていると、学校に行く時間に遅れてしまう。
最近、あの子は少し早く登校しているみたいだから、運が良ければ会える。
「……」
そういえば、時間を確認していなかったけど。
今何時なんだろう。
机の端に置いてあったスマホに手を伸ばし。
伏せていた画面をパッと見る。
ブーーーブーーー
「……」
枕元で、スマホが震えている。
「起きなさいよ~」
リビングから、母の呼ぶ声が聞こえた。
「……」
なんかよく分からない夢を見たようだ。
そんなに空腹だったんだろうか……それを証明するように小さく腹が鳴る。
……それなら素直に胃に入れてくれればいいのに。どうして拒否するような真似をするのだろう。自分の事ながら、意味の分からない体だ。
「……」
とりあえず、起きて、動くとしよう。
お題:目玉焼き・太もも・風船




