康太視点①
俺の名前は桜井康太。普通の男子高校生だ。人と違う点があるとすればちょっと顔が良いくらいだ。とはいっても、めちゃくちゃイケメン(平野のような)というわけでは無い。そこそこカッコいい。上の下ぐらいだ。
だから、中学の時から彼女に困ったことは無かったし、高望み(綾香のような)さえしなければどんな女の子とも付き合えた。
俺は人を本気で好きなったことは無かった。顔しか見てなかった。心から好きになることなんて無かった。
だから、高校入学してから出会った「池田愛」は俺にとって特別な存在だった。初めは近くの席の可愛い女子くらいにしか思っていなかった。けど、好きなバンドがきっかけで仲良くなってからはどんどん愛に惹かれていった。仕草一つ一つが俺の心を踊らせる。まだ出会って2ヶ月なのに、愛のことが好きになっていた。
だから、
だから、
だから、
一ノ瀬創が邪魔だった。
愛に惹かれるほど、愛を見るようになった。
だから、愛が創をよく見てることにも気が付いた。俺に対しては友達としか思ってない愛の態度が、創に対しては明らかに好きなのが見て取れた。
いつも、登校して最初に話しかけるのも創で、俺は2番目だ。俺と2人きりで遊ぶことは無くても、創とは2人で遊んでいる。
そんな日々を過ごすたびに創のことが嫌いになっていた。最初は同じバンドが好きなことがきっかけの友達だった。けど、愛のことを好きなってからは創に対して憎らしさしか感じなくなった。
なんで俺らしかクラスに友達いないような暗い奴に負けてるんだ。
なんでこんな普通の顔の奴に負けてるんだ
勉強、スポーツ何をしても俺は創には勝っている。
こいつの何がいいんだ?全然わからない。
けど、愛には嫌われたくないから嫌いな感情を表には出さない。
だが、そんな俺にも我慢ならない日が来た。
あのカラオケの日だ。思えば最初から腹が立っていた。いつも創はクラス会には来ない。だからクラス会の帰りは愛と2人きりで帰れた。週に数回あるこの帰り道こそ俺の中で至福の時間だった。カラオケの日も楽しみにしてた。だが、あいつはやって来た。あいつが、
「あ、ごめん。やっぱり俺もカラオケ行っていい?」
と言った時も、
「創本当にいいのか?俺は嬉しいけどいつも来ないお前が来ても楽しめないと思うぞ。」
と遠回りに来ないように言ったのにあいつはその意図にすら気付かない。
あいつが委員会で遅れるとわかった時にも、
「じゃあ俺と愛は先に行くよ」
と言って、1人で遅れて合流する気まずさからクラス会に来ないように仕向けようとした。だが、愛が
「私は待つよ。康太は先行ってていいよ」
そんなこと言い出すから俺も残るしか無くなった。
カラオケでもあいつを急に歌わせて恥かかせてやろうと思ったが、そこそこ上手くて失敗した。
いつものクラス会なら愛の隣は俺で、1番話してるのも俺だった。だけど愛は創のところに行って俺とは一切話していない。だから、どうしても愛を手に入れたい。そんな思いが溢れそうになっていた。
そんな俺にとってあの騒ぎは僥倖だった。
あいつが高梨と話している最中に急に叫んだ。元々あの2人は何かあったらしいが、詳しくは知らない。そして、平野があいつの噂を問いただした。どうやら最低なことをしたらしい。本人も認めてる。
やっぱりあいつはクズ野郎だ。愛には相応しくない
俺みたいに明るく清らかじゃないと愛とは結ばれない
あいつが高梨に酷いことをしたと認めた後、愛は分かりやすく、落ち込んでいた。そりゃそうだろう。好きな男がクズだったんだ。仕方ない。俺が慰めてやりたい
これで、あいつはどんどんクラスから孤立して愛からも見放される。そう思っていた。
しかし、翌日の愛の創に対する態度は何も変わっていなかった。いや、もっと愛は創に恋していた。創が登校してくるまでも、
「創大丈夫かな〜。心配だよ。学校くるかな?」
と、俺に話しかけて来たと思ったら創の話しかしてこない。
「おい愛。創を1人にすることも大事だぞ。」
そう忠告したのに、創が登校して机で寝てる時も横でずっとそばにいた。他の誰にも目もくれず創だけを見ていた
『池田さんって一ノ瀬のこと好きなの?』
クラスメイトからそう言われるほどに、創にべったりしていた。
「愛、HR終わったぞ。次体育だから行かなきゃ」
「康太は先行ってて。創起きるまで待つから」
何にもわかってない
「そこまでする必要あるのか?」
「私が創を支えなきゃ」
その感情は間違っている。そいつじゃなくて俺に向けるべきだ。
「お前おかしいぞ。こんな奴ほっとけよ」
「こんな奴って何よ。康太はどっか行って」
「おい怒るなって。お前のためを思ってだな、、」
「私のことを思うなら、さっさとどこかに行って」
完全に怒らせてしまった。ここまで言われたら行くしかない。先に行くか。
【数分後】
「やべっ忘れ物したわ」
「おい康太時間ないぞ」
「教室取りに行くわ」
忘れ物をして教室に戻ると、衝撃的な光景が飛び込んできた。愛が創に抱きついていたのだ。まるで恋人とのハグのように。
急いで教室には入らず陰からこっそりと見る
「ありがとう愛。お前がいてくれて本当に良かった」
「私だけは創の味方だからね」
付き合う直前のような、そんな光景だ。
鼓動が激しくなる。俺の愛のはずなのに。なんで?
そんな時だった。後ろから肩を叩かれる。振り向くと高梨がそこにいた?
「桜井くん、こっち来て」
ヒソヒソ声で高梨が俺に話しかける。
桜井の後を着いて行く。人気の無い階段の下のスペースで足を止めた高梨は衝撃的なことを言ってきた。
「ねぇ、愛ちゃんを桜井くんの物にしない?」
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