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昔は仲が良かったヤンデレ美少女幼馴染になぜかいじめられてます  作者: アレクサンダー
フッたはずの幼馴染がなぜか一緒の高校にいて、俺のことをいじめてくる件
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信頼できる存在

「はぁ。それにしても誰も教えてくれなかったわね」

「二葉叶って名前出した瞬間、みんな逃げてくもんね」

「あの子になにがあるのよ」


 私たちは、二葉叶と同じ小学校だった人で関わりがあった子を調べて、直接会いに行っている。しかし、「二葉叶」という名前を出すと、それまで普通に話していた子が急に様子がおかしくなる。誰も情報を教えてくれない。


「それにしても、同じ小学校だった子をよく調べたね」

「まあね」

「流石、お金持ち!どんな手を使ったのかは知らないけどさ」

「それは秘密ね」


 けど、私の出来ることを総動員しても叶の情報は手に入らない。箝口令でも敷かれたのかな?ってレベルだ。


「けどさ、どうする?この調子じゃ何も情報手に入らないままよ」


 大丈夫。()()()ならきっと味方になってくれる。


「もうそろそろ夏休み始まるし、夏休み明けたらすぐ会長選もあるし」

「うん、夏休みが勝負ね。夏休みに全てが決まる」

「え?どういうこと?」

「じゃあ舞だけには教えようかな。あのね…………



   ♢



 私の名前は伊藤花。13歳、中学一年生。


 至って普通の中学生。けど、人よりちょっと勉強ができることが唯一の長所かな?

 

 何気ない平凡な日常を送ってる。


 あっ、そろそろバイトの時間だ。行かなきゃ


 そう。私はバイトをしている。けど、中学生なんて雇ってくれるところなんてない。私がバイトをできている理由は親戚の知り合いの店だからだ。


 バイトをしている理由は家が貧乏だから。

 私が働かなきゃいけないくらいに家計が困窮している。


 夏休みは特にシフトを長時間入れることができる。

 稼げる時に稼がなきゃね!


「おはようございます」

「おはよう。花ちゃん」


 私の挨拶に返してくれたのは、私がバイトしているカフェの店長だ。

 いつも優しく接してくれている。


「じゃあ花ちゃんいつも通り準備して」

「はい!」


 服を着替えて、いつもの通りに開店の準備をする。

 やることは決まっているので楽だ。


「準備終わりました!」

「ありがとね。そろそろ開店するからね」

「はい!」


 私はこのカフェのバイトが好きだ。都心ではなくて郊外に店があり、静かな空間。いつも同じ常連さんが利用している点も私が好きなところだ。


 カランカランカラン


 あっ、誰か来た。いつものお客さんかな?


 扉の方を見ると、とても綺麗な女の人がいた。

 今まで見たことない人だ。


「花ちゃん、席案内してあげて」

「は、はい」


 思わず目を奪われてしまうほどの美人だった。


「お席ご案内しますね」

「ありがとう」

「こ、こちらの席どうぞ」

「ん」

「こちらメニュー表です。お決まりでしたらお呼び下さい」


 私はそう言い、カウンターへ戻る。メニュー表を見る彼女の顔をカウンターから眺める。


 あんな美人な人いるんだぁ。

 新規のお客さんって珍しいけど、あんな美人な人はもっと珍しいかも。眼福、眼福。


「すいません。注文お願いします」


 注文が決まった様子だ。急いで彼女が座っている席に向かう。


「は、はい。ご注文をお伺いします」

「えーと、このパンケーキと〜あと飲み物は〜


 彼女の言葉を聞きながら顔をじっくり見つめてしまう。

 

 こんな美人な人あんまりいないよなぁ。いや、私の学校にはいるか。生徒会のあの人は同じくらい美人だよね。

 

 うん、同じくらい美人だと思う。よく見るとこの人めちゃくちゃ似てるなぁ。まぁ美人すぎて似てるのかなぁ?


 ん?いやちょっと待って、似てるとかじゃなくてこの人があの人じゃない?


 そうだよね?


 高梨綾香さんだよね


 動悸が激しくなる。ヤバいヤバいヤバい。よりによって生徒会の人に会うなんて最悪だ。


「ん?どうしたの?大丈夫?」

「だ、大丈夫です」

「飲み物はアイスコーヒーにするわ」

「わ、わかりました」


 急いでその場から離れて、店長に注文を告げた。


「花ちゃん大丈夫?汗かいてるけど暑い?」

「い、いや大丈夫です」


 なんとか平静を装い仕事を続ける。

 早く、早く帰ってほしい。


 彼女は1時間ほど滞在して、帰って行った。

 私は安心した。そこからは普通に仕事を続けた。


「今日もお疲れ様。また来週ね」

「はい、お疲れ様です」


 気づけばあっという間にバイトの時間は終わった。

 このバイトを続ける理由の一つにやりがいもある。時間を忘れさせるほど集中できるバイトはなかなかない。


「はぁ疲れた」


 カフェからの最寄り駅に向かう途中に私は独り言をこぼす。今日はイレギュラーなことが起こったからいつもより疲れた。そんなことを思いながら歩みを進める。


「バイトお疲れ様。伊藤さん」


 後ろから声をかけられる。振り返ると高梨さんだった。


「な、なんで、ここに」

「あなたを待ってたからよ」

「え?そ、それに私の名前も」

「生徒会だからねぇ、生徒の名前を覚えるのは当然よ」

「じゃ、じゃあ私のこと分かっていたんですか?」

「うん。店に入った時から気づいていたよ」

「そ、そうなんですね」


 終わった。私の人生が今ここで終わった。


「…………申し訳ございません」

「え?何が?」

「バイトしていたことです。」

「あぁ、そのことね」


 学校に報告されれば確実に問題になる。

 問題になるだけならまだマシだ。


 けど、


 けど、


「けど、意外ね。伊藤さんほど優秀な生徒がバイトなんてしてるなんて」


 私には絶対に学校にバレたくない理由がある。


 それは、高校への推薦を狙っているから。1年生と2年生の間の成績で推薦が決まる。バイトなんてしていたら確実に推薦なんて貰えない。


 いい高校に行って、いい大学に行って、ちゃんと給料が貰える仕事に就職する。これが私の人生設計だ。


 それが今壊れちゃった。高校へ推薦なんて到底無理だ。


「安心して、学校へ報告なんてするつもりないから」


 え?


「ほ、本当ですか?」

「本当よ、事情があるんでしょ?」

「…………そ、そうなんです」


 高梨先輩が女神のように見えた。


「良かったら、事情を聞かせて貰えないかしら?」


 安心した私は高梨先輩に家が貧乏であることと、そのために高校の推薦がほしいことを説明した。


「そういうことなのね。だから、こんな見つかりにくいカフェでバイトしてたのね」

「そ、そうです。お客さんも常連さんばかりなので知り合いに見つかることなんてないと思ってました。」

「そういうことね」


 高梨先輩は優しい目で私を見る。


「また来るから」

「え?」

「夏休みの間バイトしているんでしょ?」

「は、はい」

「このカフェ気に入ったから夏休みの間私も来るわ。ここで勉強でもしたら集中できるだろうし」

「は、はい。お待ちしてます」

「ぜひ、私と仲良くしてほしいわ」

「わ、わたしなんかが良いんですか?」

「もちろんよ」


 私は嬉しかった。私の家の事情を知ってくれている人なんていなかったから。


 そこから、毎日のように高梨先輩が店にやってきた。

 

 そして、先輩と徐々に仲良くなっていった。他愛のない話をする時もあれば、私の相談に乗ってくれる時もあった。バイト終わりにご飯を食べに行ったり、バイトが無い日でもショッピングなどをしたり、とにかく仲良くなっていった。


 そして夏休みが終わる頃には、昔から仲が良かったと思えるほどに距離が縮まっていた。


「今日は私に奢らせてください!」

「ふふ。楽しみにしてるわね」


 今日は夏休み最後のバイトの日だった。夏休みの分の給料も今日受けとり、せっかくだから夏休みの間お世話になった高梨先輩に夜ご飯をご馳走しようと思っていた。


「バイトよく頑張ったわね」

「家族を支えなきゃいけないですから!」

「偉いわねぇ、本当に」


 高梨先輩に褒められるととても嬉しくなる。こんなすごい人に認められるなんて本当に嬉しいな!


「どれくらい給料貰えたの?」

「えーとですね」


 私は高梨先輩の質問に答えようとカバンの中にある給料袋を探す。


「えーと、えーと」


 カバンの中に手を入れ探すが、なかなか見つからない。


「あれ、奥に入ってるのかな」


 なかなか見つからない。あれ、ちゃんと入れたよね?


「ちょっと待ってください」


 私はちゃんとカバンの中を見て探す。


 …………無い。給料袋が無い。


 あれ?確かに入れたはずだ。けど、無い。


 無い無い無い無い無い無い。どこにも無い。


「あれ、あれ」

「どうしたの?」

「い、いや。あるはずなんですけどね」


 絶対あるはずだ。無いのはおかしい。

 けど、どんなに探しても見つからない。


「大丈夫?」


 高梨先輩に心配されても上の空だった。

 

 給料を無くしてしまった。どこかで落としたんだ。


 ヤバいヤバいヤバいヤバい。

 貧乏な私の家にとって私の給料ですら家計を左右する大事なお金だ。


 けど、見つからなかった。


「どうしたの?泣いちゃって」


 先輩が私を心配する声が聞こえる。けど、反応することさえできずに、その場で泣いてしまった。


「何があったの?」


 先輩が私を抱きしめてくる。

 安心する。その抱擁感が心地良い。

 その心地良さで私はもっと泣いてしまった。


「私に話してみなさい」


 全て話した。無くしたことと、給料が無くなることで私の家が困ること。


「大丈夫、私に任せなさい」

「え?」

「あなたの頑張りは目の前で見ていたもの。一生懸命仕事をしていたあなたが損をするべきじゃないわ」

「…………」

「それくらいのお金なら私が都合をつける」

「…………受け取れません」

「大丈夫、返せなんて言わないから」

「…………ならもっと受け取れません」

「私の可愛い後輩のピンチをほっとけないのよ」


 その言葉に私はもっと泣いてしまった。

 それから先輩は泣いている私をなだめながら、私に受け取るように説得した。


「…………本当にいいんですか?」

「いいのよ」

「…………ありがとうございます。この恩は一生かけて返していきます」

「別にいいのよ」

「いや、返させてください」

「じゃあ、返してもらおうかな」

「はい!なんでもします!」

「うん、今ね」

「い、今?」

「うん」

「今というのは?」


「教えて」

「え?」


「教えてほしいの、二葉叶のことについて全部」

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