イジョウナオンナノコ
「な、なにすんの……よ」
「撤回しろ」
「は?な、なに?どういうこと?」
「お兄ちゃんのことどうでもいいって言ったことを撤回しろ。早く」
「な、なんでそんなに怒ってるの、、、」
叶が私を掴む力は中学1年生の女子とは思えないほど強いものだった。
怖い怖い怖い。本当になんなのこの子。
そんなに怒る発言かな?
「は、はなしてっ」
「はぁ……はぁ……」
叶は興奮して息が荒くなってる。
この子を止めなきゃ。私が危ない。
何かこの子を止める方法あるかな、、、
力では私は勝てない。何かこの子に気を引くようなことあるかな?…………あっ、そうだ、、、
「お兄ちゃんが悲しむよ」
私がそう言うと、私を掴んでいる手の力が緩んだ。
「お、お兄ちゃんが、、、」
「そう、こんな可愛くない姿見たらあなたのお兄ちゃんはどう思うでしょうね」
「ど、どう思うって、、、」
「…………嫌いになっちゃうかもね」
「い、い、嫌ぁーーー」
叶は叫びながらその場に座り込んだ。
やっぱり、彼女の弱点は「会長」だ。普通の兄妹以上の特別な感情があるように見える。
「だから落ち着いて、今日は帰りましょう」
「…………そしたらお兄ちゃんは私のこと嫌いにならない?」
「そうだね。お兄ちゃんは良い子が好きだから」
「じゃあ、かなえ、いい子にする!」
叶の喋り方や態度が幼稚園児みたいに幼くなった。
これはショックを受けたことによるものなのだろうか?
わからない、わからないけどこの場はなんとか切り抜けた。
叶をなんとか家まで帰し、私は帰路についた。
「ってことがあったのよ」
私は帰宅してすぐに舞に電話をかけ、状況を説明した。
「…………明らかに様子がおかしいわね」
「うん。いつも私に対しては余裕ありそうな態度なのに今日は会長のことを言うと情緒がおかしくなってた」
「うーん。叶ちゃんが会長に普通の兄妹以上の思いを抱いているのはわかるけど、、、」
そう。会長と叶の関係がおかしいことは分かるけど、その理由などは全く分からない。どうやって調べたらいいのかさえ分からない。
「会長は表向きは評判良いから探っても分からないと思うなぁ」
「じゃあ、叶ちゃんじゃない?あの子は絶対何かあるよ」
確かに、あの子に関してはつかみどころが無い何かを感じる。本心を喋っていないような、そんな感じだ。
「じゃあ私が1人で調べるわ」
私は舞にそう言った。今日の出来事を踏まえると叶を調べると危ないことが起きる可能性がある。そんなことに舞を巻き込むことはできない。私はそう思った。
「どういうこと?」
「叶ちゃんのことに関しては私に任せて!1人で調べるからさ」
舞に心配させないように明るく返した。
「バカ」
「え?」
「あんた、また1人で突っ走ろうとしてるでしょ?」
「そ、そんなことないよ」
「綾香見てるとわかるよ。また私に隠し事するつもり?」
やっぱり舞には隠せない。私の魂胆なんてお見通しなんだろう。
「どうせ私を危ないことに巻き込みたく無いからそんなこと言い出したんだろうけど、舐めてもらっちゃ困るよ」
「…………」
「私はあんたに止められようが一緒に行動する。絶対1人で抱え込ませたりしないんだから!」
「…………舞」
涙が出てきた。また、私は1人で抱え込もうとしてた。舞に頼るって言ったばかりなのに、また1人で勝手な行動するところだった。
「…………ごめん…………舞、ありがとう」
「任せなさいよ。綾香1人だと逆に心配だしね」
「けど、安全第一でね」
「それはそう」
舞と話すことでやる気が出てきた。
創君のためにも、舞のためにも、そして私のためにも頑張らなきゃ!
♢
今日、学校帰りにとっても美人なお姉さん2人に呼び止められた。
確か名前は、高梨綾香さんと、その友達の舞さんだったかな?聞けば隣町の中学の人だった。私より歳は1つ上。芸能人レベルの見た目だったから話しかけられてドキドキしちゃった。
いきなり話しかけられたけど、美人すぎて全然不審だとは思わなかった。
けど、話を聞くと私は一刻も早くその場から離れたくなった。
だって
だって
あの子のことを聞かれたから、、、
最近は思い出すことも無くなったのに、、、
美人なお姉さんたちは、あの子のことを聞きたがっていた。私は何にも答えずにその場から走って逃げちゃった。
怖い怖い怖い怖い。あの時の記憶を思い出すだけで体が震える。
どうしよう。どうしよう。どうしよう。
あの子に報告しないとダメかな?しなくてもバレないかな?私からわざわざ連絡することでもないよね、、、
寝て忘れよう。そして、明日は裏門から帰ろう。
ピコン
ん?メールが来た。こんな時間に誰だろう。
メールの送り主はあの子だった。
はぁはぁはぁ。呼吸が荒くなる。
メールを見ると
【最近元気かな?】
とだけ来ていた。
なんでなんでなんでなんで
もしかして、今日のことがバレてるの?
ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
私は何も言ってません。あなたのことは何も言ってません。何も言わなかったので許してください。
ピコン
またメールが来た。
【返信遅いけど、どうかした?】
私は涙が止まらなかった。
プルルルル
携帯が鳴った。あの子からの着信だ。
「…………うぅぅぅ」
「なーに泣いてるのよ」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「怖っ、いきなり何よ」
「返信遅くてごめんなさい」
「いいから、なんで返信遅くなったの?」
「…………」
「は、や、く、話しなさいよ」
私は今日、高梨綾香さんに話しかけられたことを話した
「あー、やっぱり、あなたのところに行ったかぁ」
「やっぱり?」
「大体予想はついてたからねー」
全部わかっていたの、、、
「わ、わ、私は何も話していないです」
「わかってるよー、あなたにそんな度胸無いもんねー」
「そ、そうです」
「…………けど」
「すぐ、私に報告しなかったことはダメだねぇ」
「……ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「アハハ、壊れたロボットみたいだねー。まぁ、今回はちゃんと言ってくれたから見逃してあげる」
「あ、ありがとうございます」
「じゃあねー」
電話が切れたあとも、震えが止まらなかった。
私は一生この子には逆らえない。いや、逆らっちゃダメなんだ。
お姉さんたちごめんなさい。なにも情報は言えません。
二葉叶のことについてはなにも、、、




