勉強会?
「なーんで、高梨先輩がいるんですか?」
「私がいたら困ることでもあるの?」
「ありまーす。邪魔でーす」
「先輩に対して失礼ね」
「ちょっと、ちょっと、2人とも落ち着いて」
創君が慌てて私たちを仲裁する。止めなかったらヒートアップしてただろう。
「私は落ち着いてるわよ。そこのお子様ははしゃいじゃってるけど」
「私のセリフですよーだ。高梨先輩って私に対して口が悪いですよね」
「あなたが生意気だからじゃない?」
「待って待って、また言い争い始めちゃったら止めた意味ないよ」
「むー」
「高梨、睨んでもダメ」
創君の言う通り、ちょっと熱くなったかもしれない。年下相手に大人気ないところ見せたら創君も引いちゃうかもしれないし、、、
「そ、れ、に、今日は勉強会だろ?喋ってないで勉強しようぜ」
「そ、それもそうね」
「そうですね」
私たちは思い出したかのように、勉強道具を広げる。
せっかく学校の図書館で勉強会をすることになったんだ。集中しないと、、、
「けど、説明してください。なんで今日の勉強会に高梨先輩がいるんですか?」
「それは、、、」
創君が私の方を見る。
「私が1番教えるのが最適だからよ」
「へぇー」
「そうだな。高梨はいつもテスト1位なんだよ」
「すごいですねー」
全くすごいとは思ってなさそうな返事だ。
「うーん」
「叶、どうした?」
「い、いやっ、なんでもないです」
「あー、この問題が解けないのか」
「…………そうです。先輩教えてください」
「うーん。俺もわからんぞ」
「確かに私がわからない問題を一ノ瀬先輩がわかるわけないか」
「し、失礼なっ、俺だって、俺だって」
創君はしばらく考えていたけど、解けそうには無かった
創君がチラッと私を見る。
「見せてみてよ」
「べ、別に、高梨先輩には頼んでませんからっ」
「いいから見せて」
不服そうに私に問題を見せる。
「あぁ、これね」
この問題は私も苦戦したことあるから解き方は覚えていた。
「これは、こうやって解くのよ」
自分なりにわかりやすく説明した。
「あっ、解けた」
「覚えてしまえば簡単よ」
「流石高梨だな」
創君が褒めてくれた!嬉しい!
「…………ありがとうござございます」
仕方なさそうに叶がお礼を言ってくれた。
「いいのよ、いいのよ」
「…………なんかムカつきます」
「まぁまぁ2人とも」
こんな調子で勉強会は進んでいき、思ったより集中できた。3人とも根が真面目なのだろう。私語はほとんど無く勉強だけに集中できた。
「はぁー、今日はそろそろ終わりかな」
「そうね」
「そうですね」
数時間経ち、今日はお開きにすることにした。
「思ったより勉強できたなぁ」
「確かに、勉強会って大体勉強に集中できなくて終わるよね」
そんな話をしながら図書室を出た。
「えーと、じゃあ今日は解散ってことで」
「そうね」
創君と一緒に帰りたいなぁ。けど、家が全然違う方向だから一緒には帰れない。
「叶は俺が送っていくよ」
えっ?なんで創君がそんなことするの?
「いやいや、悪いですよ」
「そ、そうだよ。叶ちゃんもこう言ってるんだし、別に送らなくても、、、」
「いやいや、叶ちゃんに何かあったら会長に合わせる顔ないよ」
創君は会長のこと本当にリスペクトしているんだね。
会長が憎い。あなたの本当の姿を見せたら創君は傷付くだろう。あなたのせいで私の大切な人が落ち込んでしまう。
「…………じゃあ」
叶が私のことを見る。
何か嫌な予感がする。
「なんだ?」
「高梨先輩に送ってもらうことにします」
は?何を言ってるの?私が送る?あなたを?なんで?
「な、なんで私が送ることになるの?」
「兄の彼女さんとは仲良くなりたいからです」
「ど、どういうつもりよ」
「どうもこうも純粋に仲良くなりたいだけです」
「は、創君」
私は助けを求めるように創君を見た。
しかし、創君はニヤニヤした顔で私たちを眺めている。
「そうかそうか」
「そうかじゃなくて創君が送るんでしょ?」
「まあまあ、高梨と仲良くなりたいんだろ?」
「そ、そんなわけ「はいそうです」
私が否定しようとすると食い気味に叶が喋ってくる。
「叶も素直になれなかっただけで、本当は仲良くしたかったんだろ」
そんなわけ、そんなわけないでしょ。
この子にそんな気持ちは絶対にない。私には分かる。
「そ〜なんですよ〜」
「今日は高梨が送ってやってくれないか?」
創君が頭を下げて私に頼んでくる。こんなことされたら私は弱い。絶対に断れない。
「…………わかったわよ」
こうして、私は叶を家まで送ることになった。
創君とは別れ、叶の家まで2人で並んで歩く。
「何を企んでいるの?」
「失礼ですね〜。私は高梨先輩と仲良くお話ししたいだけですから〜」
絶対に嘘。こんなに嘘と分かる嘘もなかなかない。
「信用できないわ。私に何がしたいの?」
「…………こっちのセリフですよ」
ゾクっとした。先ほどまでの明るい声とは正反対の落ち着いた低い声で叶が答えたからだ。
「せっかく一ノ瀬先輩と2人で過ごす予定だったのにあなたに邪魔された私の気持ちにもなってくださいよ」
「あなたと創君を2人きりにするのは危険だからよ」
「危険?私は何もしませんよ」
「絶対嘘」
「そんなことより、兄のことほっといて一ノ瀬先輩と一緒にいてもいいんですか?」
「今は関係ないでしょ?」
「関係はあるでしょ。あなたの兄は付き合ってるんですから」
うるさい。うるさい。会長のことなんてどうでもいい。
「あの人のことなんてどうでもいいから」
思わず発してしまった言葉
「は?」
私が焦って思わず溢れ出た言葉が叶の感情を揺らした。
「どうでもいいってどういうこと?」
狙ってないからこそ、思わぬ角度から叶の感情を揺さぶったのかもしれない。
「え?」
「あんた、お兄ちゃんのことどうでもいいって言った?」
「な、なんでそんなに怒って、、」
「調子に乗んなよこのクソ女ッッ」
私の胸ぐらを掴む叶。年下の女の子とは思えないとんでもない力だ。
「な、なにすんの……よ」
抵抗できない私はまっすぐ叶を見ることしかできなかった。




