二葉 叶視点
うざい。うざい。うざい。うざい。うざい。
あの女のこと考えるだけで気持ち悪くなる。
私のお兄ちゃん、私だけのお兄ちゃんだったのに、、、
あの女が現れてから全てが変わった。
あの女―高梨綾香―がお兄ちゃんの前に現れてから、お兄ちゃんと私の関係も変わった。
お兄ちゃんは妹の贔屓目抜きにしてもカッコよかった。顔もイケメンだし、頭も良い。運動神経抜群。なんでも出来る完璧超人だった。
そんなお兄ちゃんのことを私は小さい頃から大好きだった。当たり前だ。こんなカッコいい人が身近にいて、好きにならない方がおかしい。
自分の周りにいた同い年の男子なんてみんな幼く見えた。お兄ちゃんのせいで私の男性に対するハードルは上がってしまった。
初めは家族として好きだったと思う。けど、成長にするにつれ、異性として好きになっていった。LIKEがLOVEに変わっていく気持ちを私は抑えることは出来なかった。
けど、そんな私をお兄ちゃんは受け入れてくれた。愛が重い私のことをお兄ちゃんは受け止めてくれた。私が嫉妬するから、他の女の子と仲良くするのも辞めてくれた。
だから、いつかお兄ちゃんも私に対してのLIKEがLOVEに変わる日が来る。私達は結ばれる運命なんだ。そう信じてた。
けど、けど、あの女がお兄ちゃんと出会ってそんな願いは打ち砕かれた。今でもあの時のことを覚えている。
【1年前】
「…………ただいま」
「おかえり〜」
「はぁー」
「どしたの?お兄ちゃん」
「んー、ちょっとな」
「私にはなんでも言ってね」
「…………やっぱ言わなきゃな」
「え?」
「お前には言わないとダメだから言うよ」
「な、なに?」
「俺、好きな人できた」
「…………は?」
「………………」
「ど、どういうこと?」
「言葉の通りだ。好きな人ができたんだ」
「な、なんで?今までそんな素振りなかったじゃん」
「今日、一目惚れしたんだ」
「意味わかんない、どういうことなの?」
「今日、入学してきた新入生に運命の相手を見つけたんだ。俺はあの子と結婚する運命だと思う」
「お、お兄ちゃんおかしいよ。一目惚れなんてあり得ないよ。新学期で浮かれてるだけだよね?」
「いや、そんなことない。あの子を見た瞬間心が動いたんだ。今まではそんなこと無かったんだ」
「ちょっと、お兄ちゃん落ち着いてよ。絶対勘違いだって。どこの誰かもわからない人をいきなり好きになるなんておかしいよ」
「いやあの子は絶対俺の運命の相手だ」
「か、彼女が欲しいだけでしょ?」
「………………」
「だ、だったら、私が彼女になってあげる。お兄ちゃんのこと1番好きだし、お兄ちゃんも私のこと好きでしょ?」
「…………お前のことは好きだけど彼女にはできない」
「な、なんで?私ほどお兄ちゃん好きな子いないよ!」
「…………それはそうかもな」
「好きなら付き合ってよ。お兄ちゃんは私と結婚する運命でしょ!」
「お前のことは妹として好きなんだ。彼女にすることも結婚することもできない」
「い、いやだ、、、お兄ちゃんは私のことが好きだから彼女作らなかったんじゃないの?」
「確かに、お前の気持ちを踏みにじってまで他の女子と付き合う気持ちは起きなかった。けど、俺に決心させるくらいあの子のことを好きになったんだ。」
「意味わかんない、意味わかんない、意味わかんないよ」
「…………ごめん」
お兄ちゃんから、好きな人ができたと言われてから私は本当に落ち込んだ。泣いて泣いて泣きまくった。
お兄ちゃんと結ばれない世界なんて生きる価値ない。そんな風にさえ思った。
けど、けど、私は私は気づいた。
私にとっての幸せって何?
考えたらすぐ答えは出た。
それはお兄ちゃんだ。お兄ちゃんの幸せが私の幸せ。
だったら、どうすればいいの?
そんなの答えは一つ。お兄ちゃんの幸せを全力で応援する。それしかない。
だから、手伝ってあげる。お兄ちゃんがあの女と付き合えるように、、、
けどねお兄ちゃん。お兄ちゃんの選択は間違ってると思うよ。お兄ちゃんが選ぶ選択なら私は文句は言う気は無いよ。けど、私と一緒になった方が何倍もお兄ちゃんは幸せになれると思うよ。今は気づいていないだろうから、お兄ちゃんが気づくまで私は待つ。
何年も何年も待つよ。
絶対お兄ちゃんは私のところに帰ってくる。
これは絶対。絶対絶対絶対絶対絶対にね
♢
「なんで、うまくいかないんだろう」
「お兄ちゃん、どうしたの?」
「高梨が全然俺に振り向いてくれる気がしなくてさ」
「ふーん」
私には考えられないんだけど、お兄ちゃんが好きな女はお兄ちゃんのこと全然好きになってくれないらしい。
毎日毎日、相談される私の身にもなってくれ。
会ったことも無い、その女のことをどんどん嫌いになる。
「けど、まだ出会って1ヶ月くらいでしょ?」
「うん」
「告白とかはしたの?」
「出来るわけないだろ。なんとか生徒会には誘ったんだが、、、」
初めは普通だったお兄ちゃんだけど、日が経つにつれ、お兄ちゃんの様子がおかしくなっていった。
「どうしよう。どうしよう。どうしよう」
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「叶、ダメかもしれない」
「どうしたの?」
「高梨が他の男子のこと見つめてたんだ。絶対あの目はそいつのこと好きだよ」
「考えすぎじゃない?」
「いや、絶対あの目は好きだ。どうしよう。どうしよう」
「お兄ちゃん、落ち着いてよ。会長選挙もあるんでしょ?」
「…………こんな俺が当選するわけない」
全部あの女のせいだ。あの女がお兄ちゃんのこと好きにならないからお兄ちゃんがおかしくなってるんだ。
会長になることもお兄ちゃんの夢の一つだった。そんな夢をその女のせいで壊されちゃうの?
絶対に嫌だ。
「お兄ちゃん、その人と本当に付き合いたいの?」
「う、うん」
「だったら私に考えあるんだけど」
「え?」
「覚悟はできてる?」
「つ、付き合えるなら、どんなことでもするよ」
「じゃあ、私の言う通りに行動して。選挙についても私に任せて」
「か、叶。…………ありがとう」
「だいじょーぶ。ぜーんぶ、私に任せてくれたら上手くいくから」




